東京大学で行われた研究により、因果律の壁を打ち破る新たな手法によって、

従来の量子電池の性能限界を超えることに成功しました。

 

しかし新たな充電法では、2つの因果関係を量子的に重ね合わせる方法が用いられており、

「AがBを起こす」と「BがAを起こす」という2つの因果の経路から同時に充電することに成功しました。

 

  • 物理学では因果の破壊が進行している
  • 量子電池とは何か?
  • 量子電池に不確定因果順序の仕組みを組み込む
東京大学によって「因果を打ち破って充電」する量子電池が発表
 
東京大学によって「因果を打ち破って充電」する量子電池が発表
 

普通の電池は、充電エネルギーが内部の粒子を順番に高エネルギー化することで電力を蓄えていきます。

もし内部に5個の粒子しか存在しないミニマム電池に対して、少しずつ充電エネルギーを注入していくとすると、

5個の粒子が1個ずつ順番に高エネルギー化(励起)していく様子が見られるでしょう。

 

量子もつれは、2つ以上の量子ビット(qubit)がそれぞれ相関した状態にあり、

一方の量子ビットの状態が他方の量子ビットに即座に影響を及ぼすことが知られています。

この現象は、アルベルト・アインシュタインが「不気味な遠隔作用」と表現したほど、古典物理学の常識を超えたものです。

 

量子電池では、この量子もつれの特性を利用します。

量子ビットの数が多ければ多いほど、もつれのネットワークが大きくなり、瞬時に相関する粒子数が増えていきます。

この状態で粒子に対して充電を行うと、エネルギーがネットワーク内のすべての量子ビットに素早く分配されるため、

充電プロセスが加速されます。

 

実験ではまず量子電池の仕組みが構築され、異なる方法で「充電」が試みられました。

 

1つ目は量子電池に対して充電器Aと充電器Bが交互に接続する方法。

 

もう1つは少し特殊で、量子電池に対する充電器Aと充電器Bの接続をある種のブラックボックスの中に隠して、

外部からはどちらが接続しているかわからないほど重ね合わせ状態にして充電します。

 

古典物理学の世界では2つの充電器(AとB)があるときには、どちらかが先行し、

その後にもう一方が続くという因果順序でしか考えられません。

 

そのため直感的には、観察できる状態で充電しようが、ブラックボックスの中で充電されようが、

充電効率に差はないように思われます。

 

しかし実際には2つ目の充電方法では「先に充電器A、後に充電器B」と「先に充電器B、後に充電器A」

という2つの充電方法の因果順序の「重なり合い」が発生し、より効率的に充電が行われることが示されました。

 

観ていないと量子がどちらが充電されているかかわからないから両方充電しちゃうってこと?

東京大学によって「因果を打ち破って充電」する量子電池が発表