農業で儲けるにはどうすればいいのか。

東京大学大学院の鈴木宣弘教授は「和歌山県で1億円以上の売り上げを稼ぐ農家が増えている。

彼らが利用しているのが、中間流通を通さずに作物を広域で販売する『野田モデル』という仕組みだ」という――。

 

「1億円プレーヤー」の生産者が現れはじめた

そんな悪循環に陥ってきた日本の農業の現状を変えることはできるのか――。

処方箋を発見した。

和歌山県で「1億円プレーヤー」の生産者が現れはじめたのをご存じだろうか。

画期的な農産物流通の仕組み「野田モデル」

既存の農産物流通では農家は農協を通じて作物を出荷するのが一般的だが、

いま中山さんはそれ以外のルートで7割の売り上げを稼ぐ。

このルートは売り上げだけでなく、経費などを引いた利益も格段に大きいという特色もある。

そのおかげもあって、家族経営で細々と、というイメージとは無縁の「成長産業としての農業」を謳歌おうかしている。

この農産物流通の仕組みを私は「野田モデル」と名付けた。

直売所を和歌山、奈良、大阪に30店舗展開

それを実践するのが「産直市場よってって」という農産物直売所を多店舗展開する仕組みである。

これはいわゆる「チェーン店」とまったく違う、それぞれの直売所が個店の特徴を追求するスタイルで、

その第1号店が生まれたのが田辺市だ。

「よってって」は、生産者が農産物を直接出品する直売所だ。1号店となるいなり本館は2002年5月にオープンした。

なんと、野田氏66歳のときである。

以来、着々と出店を重ね、現在、和歌山を中心に奈良県、大阪府に30店舗を展開する。

新鮮で品質の良い農産物の直売所が話題になるケースは増えたが、ここまで多店舗展開した事例はほとんどない。

あえて「非効率的」な売り場をつくる

店内に一歩足を踏み入れれば、すぐに従来のスーパーマーケットとはまったく違う空間が広がっていることを実感する。
まず、「旬」の作物の圧倒的な豊富さだ。私が訪れた春先には、いなり本館の壁際はオレンジ色に染まっていた。
「不知火」「あすみ」「せとか」――ずらりと並んでいるのは柑橘類だ。
和歌山といえば、ミカンの生産量が全国1位だということは義務教育で習う。
だから品揃えが豊富なのはわかるが、よく見ると1列ごとに生産者が違う。
袋に張ってある値札には、すべて生産者の名前が書いてあり、値段やサイズがそれぞれ異なるのだ。

地元産で揃えて、大手の商品はいっさい置かない

加工食品はもっと“異様”だ。

なにしろ一般のスーパーに並んでいる大手食品メーカーの商品がほとんどないのだ。

しょうゆや酢のような調味料も地元産のものばかり。

キッコーマンやミツカンなど、全国に名の知られた大手の商品はいっさい並んでいない。

「小遣い稼ぎ」止まりだった既存直売所とどこが違うか

それに対して、「よってって」は一人の生産者がつくった作物や商品を広域に販売できるのだ。
和歌山を中心に奈良、大阪まで30店舗があるが、農家がある店舗に持っていくと、
それを別の店舗に配送できるシステムが構築されているのである。

つまり、農家は生産量さえ確保できれば、
「よってって」の店舗ネットワークの広がりに合わせて販売数量を増やすことができるのだ。

このように、直売所の限界を打破し、農家が中間流通を通さずとも自分が生産した作物を広域で販売できるようにしたのが、「産直市場よってって」。そのシステムこそが「野田モデル」なのである。