Mad Hatter’s Café

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Guitar Rock Coffee

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陽炎稲妻水の月とでも言おうか、さすがに狐たちの祝い酒も抜けた
頃であろう。 

しかし、その夜の東の空にぽっかりと浮かんだ佳月
は、もはや美しいなどを通り越して、妖しく不気味ですらあったこ
とよ。

東にある時は、朱く大きく見られ、見上げる頃になると、
 光を凝縮したような青月となっていた。

人の到底至りえぬ極地
もあって然るべきと思っている。

感情は原因が無いと生まれない、といつも意見の合わなかった誰か
が言っていたのを思い出した。
帰路の電車が、ある駅でその車両に乗っていた自分以外の全ての人
間が降車し、完全に貸し切り状態になってしまった。 見渡してみ
たが、何の感情も生まれなかった。
顔面フィードバック効果とは、自分が楽しいと感じている時になっ
ている顔の表情、すなわち笑った表情が、脳に楽しい気分とペアで
記憶されており、顔面を笑顔にすると、脳が楽しい状態だと勘違い
し何となく楽しい気分になるというものである。 
ふとそのようなことを思い出し、笑顔になってみた。 誰もいない
列車の中で虚空を見つめにっこりとしている人間が自分であること
に気付き、途方も無いような虚無感に襲われた。 
なるほど、と思った。
元来、本という物が好きである。 物が好きなのである。 すなわ
ち、電子書籍などはあまり好まないのであり、不便を承知で紙の本
を持ち歩く人間である。
ごくたまに、どの本がおすすめか、と聞かれることがある。 (小
生に聞いている限り、大抵読まない傾向にある。) 現在までに歩
んできた人生は決して誇れるほどに熟したものでは無
いが、本好きという質はまた現在まで変わっていない。 その中で
最も素晴らしいと思える本は何かと聞かれると、すぐには出てこな
い。 
ふと手にした本が、それはある老人が「この本は、墓場まで持って
行く」と言った本であった。 ある人間の、人生で最も感銘を受け
、その本を手にして以降、その人間の、人間の本質にあるいは少な
からず影響を及ぼし続けたであろうそんな本が、自分の手の中にあ
ることに、壮大な時と意識の流れを感じずにはいられない。
未だ、脳幹から、延髄から、興奮が、痺れが、爆発する
ような、「これはもはや知の戯弄ではあるまいか!」と憤死しかけ
るような、目を通した瞬間にその秀逸さに瞠目してしまうような、
そのような本には出逢えていない。 「この本は、墓場まで持って
行く。」と胸を張って言える日を眼が黒いうちに迎えたいものであ
る。