教師の仕事は楽しみだった。本当にやりたい仕事だったし、実際やりがいもあった。若い頃は、年長の教師の私欲のない公正な生徒を思う発言に感動したこともあった。あんなふうに考えられるなんて、素晴らしいなと思ったりした。一生懸命に教師をしているその姿は、ロールモデルといえるものだった。何より、自分の考えを表明できる空気があった。しかし、その牧歌的な学校風土はいつの間にか消え去った。自分が当時の先輩教師たちの年齢に近づくにつれ、周囲には口と心を閉ざした教師しかいなくなった。教え込むことが仕事になり、学びをともに楽しむ余裕はなくなった。以前自分が憧れた教師たちのように、自分が意見を表明すると周囲から浮くようになった。何も言わなくなった。よいもわるいもない。揉めないことが最大の価値。遠くを見つめて育むことではない。日々こなしていくことが最大の価値。見渡すと周囲にはロールモデルはいなくなった。心が通い合うことはなくなった。荒凉とした砂漠。砂漠では生きていけないよね。