2回表(自転車部の攻撃)
自転車部 3
サッカー部2
1アウト
ランナー無し

 

 

 

次は8番、東堂だ。

 

「フハハハハハ!時は来た!ついにあの無粋なマスクからこの美貌が解放されたのだ!マスクはいわば養成ギプスのようなもの!解き放たれた今「キミ、早く打席に入りなさい」

 

「ぬおっ!これから盛り上が「退場になりたいのかね」

 

審判の心証悪くしてンじゃねーよ全く……。

 

 

 

「なんだありゃあ。よく喋るカチューシャだな」

 

ほら、サッカー部主将まで呆れてるじゃねーか……。

 

 

 

「このオレにはチャーシューメンなど不要!必殺スリーピーーーング……」

 

東堂は限界までバットを引き……。

 

 

「ビューティーーッ!」

 

カキーン!

 

 

レフト前ヒット!

 

「マジかよ!やるじゃナァイ!」

「ワハハ!見たかオレの真の「よォし、続け黒田ァ!」

「はい!」

 

カキーン!

 

 

センター前ヒット!

 

「伝説になれっぞ黒田ァ!」

「マジっスか!」

 

 

いい流れだ!

 

 

 

1アウト
ランナー2塁(バカチューシャ)
ランナー1塁(伝説の黒田)

 

 

これで打席は一巡した。

 

「真波ィ!」

「はーい!」

 

真波の出番だ。

 

 

「イチローみてェになりてェか!」

「イチローみたいになりたいです!」

 

「よォし。大好きなバントをさせてやる」

「わーい!」

 

「ギリギリまでバットを引いて勢いを殺せ。落とす場所はホームとマウンドの真ん中だ。1塁の2m手前から滑り込め。いつもオレに飛び付いてるのと同じ要領だ」

「はーい!」

 

 

まァ、口で言うのは簡単だが、バントした本人も生きるなんて本当にイチローぐれェじゃなきゃ……。

 

コツン!

 

 

うめェ!

真波の奴、ホントにバントのセンスあんぞ!

 

ピッチャーとキャッチャーが見合ってモタモタしている間に、真波は見事1塁に滑り込んだ。

 

 

「荒北さーん!出来ましたー!」

「あァ、イチローみてェだったぜ!」

「わーい!」

 

 

 

 

1アウト
ランナー3塁(東堂)
ランナー2塁(黒田)
ランナー1塁(イチロー真波)

 

 

オレの打順。

1アウト満塁か……。

 

オレはホームランバッターじゃねェ。

オレの役目はチームを勝たせること。

ここはダブルプレイのリスクのあるヒット狙いじゃなく……。

 

「犠牲フライだァ!!」

 

カキーン!

 

 

いい具合にセンターへ伸びる!

うまくいきゃア、2人は帰って来れるぜ!

 

 

ボトッ!

 

 

なにィ!落としたァ!?

 

 

「みんな走れェ!全力だァ!」

 

狼狽えたサッカー部の守備が乱れ、更に送球ミスも起きた!

 

 

東堂ホームイン!

黒田ホームイン!

 

 

「真波ィ!止まるな行けェェ!」

 

サッカー部がモタついている!

 

真波ホームイン!

 

 

「荒北!」

「荒北さん!」

「荒北さーん!」

 

ホームに返球される!

 

 

「どけどけェェ!玉蹴り部ゥ!コリジョンルール知らねェのかァァ!」

 

返球を受けたキャッチャーのタッチをジャンプでかわし、オレは転がりながらホームベースに手をついた。

 

 

キャッチャーミットにはボールが入っておらず、足元に落ちていた。

 

 

 

「セーーーフ!!」

 

「「「うおおーーー!!」」」

 

 

 

チャリ部のみんなが抱き付きに来て、オレは下敷きになって潰れかける。

 

「靖友ー!」

「荒北!」

「荒北先輩!」

 

 

 

オレが……ランニングホームランとはね……。

 

へ……へへへ……。

気持ちいいじゃナァイ。

  

野球って──。





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【主な登場人物】
新開······箱学3年生。7番ニ イケメン。天然。
荒北······箱学3年生。2番中 元ヤン。ツンデレ。
東堂······箱学3年生。8番捕 高飛車。ナルシスト。
福富······箱学3年生。3番一 チャリ部主将。堅物。
黒田······箱学2年生。9番投 荒北の舎弟。
泉田······箱学2年生。5番遊 新開を敬愛。
葦木場······箱学2年生。6番左
銅橋······箱学1年生。4番三
真波······箱学1年生。1番右 不思議ちゃん。
サッカー部主将······箱学3年生。荒北を狙っている。