満月の夜には | 思い草へ              

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眠る街 

夜露の降りた路面は 青く濡れて

白猫が首をのばして見あげる満月を

まだ柔らかな肉球の匂いがつつむ 

 

素足にまとわりつく 薄衣を 
月あかりの窓辺に残し 

猫族のしたたかな足どり真似て

あなたへと月の道を漕ぎいでよう 

 

世界は闇に沈み  

凛と 冬桜の花影は静夜思をうたい 

わたしはただ あなたを胸に想い抱く 

 

明日には欠けゆく満月の知ってか知らずか 
同じ月齢がめぐりきても同じ月は二度とあらずと  

 

 

              

静夜想

問うならば 白き花に
この想い映して 香り静けく
惑いし夢の残り香さえ
いつしか 時の技に洗われむ

 

切なき調べ 小夜曲の

流るる先に居る人の影青く
波ひとつ立たぬ 夜の海に似て

秘して月映す 水鏡のたまゆら
 

 

 

PHOTO 山本てつや