眠る街
夜露の降りた路面は 青く濡れて
白猫が首をのばして見あげる満月を
まだ柔らかな肉球の匂いがつつむ
素足にまとわりつく 薄衣を
月あかりの窓辺に残し
猫族のしたたかな足どり真似て
あなたへと月の道を漕ぎいでよう
世界は闇に沈み
凛と 冬桜の花影は静夜思をうたい
わたしはただ あなたを胸に想い抱く
明日には欠けゆく満月の知ってか知らずか
同じ月齢がめぐりきても同じ月は二度とあらずと
☆
静夜想
問うならば 白き花に
この想い映して 香り静けく
惑いし夢の残り香さえ
いつしか 時の技に洗われむ
切なき調べ 小夜曲の
流るる先に居る人の影青く
波ひとつ立たぬ 夜の海に似て
秘して月映す 水鏡のたまゆら
PHOTO 山本てつや