結晶する水 霜華 | 思い草へ              

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大気のうちに 抱かれていた水が 
透ったまま結晶となって 
誰もいない山麓の薄暮に咲く 

凍りながら ひととき 姿を現す 
不可視なはずの うつくしいもの 
それは いつかのあなたの何かに似て  

人の匂いのしない静けさが 地表を覆い  
深まりゆく暮れの群青が
霜華の白群を染めてゆく 

息を殺して  そのプロセスを見つめる 
内に抱く 不可視なはずの水が
私の影に 結晶しはじめる 


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