ディオティーマへ | 思い草へ              

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揮発する本質が囁く 

アロマの言葉に魅了されて 
時が立ち止まる

葉脈を流れる水の音
混沌の始まりからの連鎖の点が
眩い光に融けて 今ここに息づき

命そのものに内在する 美と歓喜 
その青く透る流れが 
私たちの底にも 確かにある

どこからか あの人の名を呼ぶ声が内に湧きあがり 
私は その少し哀しい温みにからだを浸す
ディオティーマ あなたのことを思いながら


PHOTO HIDE

  
聖五月・・・・・。
深まりゆく緑が眩い日々、あなたはいかがお過ごしですか。

ご心配いただきました母の病状は、目を見張るような快復を見せ、
周囲の方々に支えられ、母は元通りの生活を取り戻そうとしております。
そして、私も東京での生活に戻ることができました。
皆さまからいただきましたご厚情に心からの感謝を申し上げます。
ありがとうございました!    スノウより


 さて。この詩の題名にした女性の名、「ディオティーマ」。
プラトンの『饗宴』で、ソクラテスに愛を説いた巫女の名として
ご記憶の方が多いかと想像いたしますが・・・。
今回のディオティーマは別人なのです。

このディオティーマは、ドイツの詩人哲学者ヘンダーリンの
唯一にして最後の散文的小説 『 ヒュペーリオン 』の登場人物です。
『ヒュぺーリオン』は、ひとりの青年がメンタ―や友人や恋人を通して成長してゆく物語(ビルドゥングロマンス)で、彼が崇拝する若き恋人の名が「ディオティーマ」です。

彼女は…それはそれは完璧な美を体現した女性で。
知性、品性、優しさ、信仰、そして美貌までもが与えられています。
この小説は書簡体で書かれているのですが、悲恋の末に迎えた死の際のディオティーマが語る生命論の美しさに魂が揺さぶられます。   
                                         スノウ