10月10日昨夜は、歌舞伎座夜の部に行ってきました。

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以下敬称を略させて頂きます。玉三郎がお目当。7代目芝翫が最晩年に演じた沓水鳥孤城落月の淀の方を玉三郎が、そのとき玉三郎が演じた常磐木を児太郎が演じています。

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10月10日は7代目芝翫のお命日だったと帰宅してから知りました。7代目は1933年に坪内逍遥の桐一葉の女童が初舞台。沓手鳥狐城落月は桐一葉の続編で、2011年9月1日新橋演舞場での沓手鳥孤城落月の口上と淀君へのご出演が最後の舞台で翌月10月10日にお亡くなりに。享年83歳。

2006年歌舞伎座六世中村歌右衛門五年祭四月大歌舞伎、2002年六世中村歌右衛門一年祭四月大歌舞伎でも淀の方をなさっています。筋書の公演記録をみてみたくなります。歌右衛門が得意となさったお役で繰り返し上演されてきたお芝居なのですね。たぶん。(公演データを最後までみないでごめんなさい)

2日目以降の代役は福助さん。(俳優協会のデータには淀の方・芝翫としか書かれていませんが複数の当時の観劇記録で代役を福助さんがなさったことがわかりました。)児太郎もいつか。

芝翫、歌右衛門家のこと、興味が湧き、家系をみなおしてみてます。

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沓手鳥孤城落月
ほととぎすこじょうのらくげつ
坪内逍遥作
石川耕士演出

大阪城内奥殿
 大阪夏の陣、大阪城は落城寸前。徳川方と通じる小車の局は婢女実は常磐木(児太郎)らと、家康の孫で秀頼に嫁いだ千姫(米吉)を城の奥殿から連れ出そうとしますが、秀頼の母淀の方(玉三郎)に見とがめられ、小車は淀の方に斬り倒され、常磐木は舌を噛み切って自害します。淀の方は真実仕えている饗庭の局(梅枝)らにも疑いをもち、逃げ出そうとした千姫を激しく罵るのでした。

二の丸内乱戦
千姫を助けようと包丁頭大住与左衛門(坂東亀蔵)が大台所に火をつけ、城内は炎に包まれ、徳川方の猛攻も始まり城内は両軍入り乱れての乱戦の最中、逃げ出してきた千姫を与左衛門は城外へと落ち延びさせます。

城内山里糒庫階上
糒庫(ほしいぐら)へと避難した淀の方は、千姫が城から逃げ出したことを知り、怒りのあまり錯乱。正気を失った母の姿に、母を殺して自害しようとする秀頼を周囲の者が止めます。豊臣家のために降伏するよう勧められた秀頼は、涙ながらに開城することを決意します。7代目芝翫は淀の方の狂乱はグロテスクでおぞましくもあったとも耳に入っておりましたし、淀の方の狂乱がこの場の見せ場、玉三郎の淀の方はいかに!…凄まじい狂気!でも美しい!淀の方の品格、唐突にむき出しになる気品ある色気!淀の方はきっとこうであったであろうと思えました。

配役がよかったこともあるでしょうが、私はこの演目またみたいと思いました。悲劇による狂気のカタルシス。

千姫を逃そうとする奥殿の様子は緊張に包まれた切迫している場でしょうが、私の気持ちが追いつかず、最初は話に聞き耳をたてるので精一杯。逃走をみやぶった淀の方はまだ正気で、小車を斬り、常磐木が舌を噛んで死んだあと、千姫への打擲からが怒りに身を任せ、のちの狂乱へと繋がるように感じました。台詞もすごいし、3階でしたから観劇グラス越しでしたが、玉三郎さんの表情の変化から目が離せませんでした。

乱戦は激しい立廻りが見どころと殺陣好きなので楽しみにしていましたが、そこまで激しくなかったです。

千姫は、淀の方に打擲されてるときもうなだれているときも、悲壮感があまり感じられなかったのですが、当時15歳の少女と思うとこれでよいのかしらと思ってみたり。

糒庫に、ついに秀頼登場。七之助の甲冑姿の若武者ぶり、錯乱する母、自分の代でこのような事態になってしまった無念を語る名台詞も聞かせてくれました。玉三郎さんの淀の方は、あ〜〜これをやってくださってみられてよかった、感謝と感激でした。七之助と玉三郎親子が寄添った姿はわすれられないし、忘れたくないです、舞台写真欲しいです。

そして、特筆しておきたいのが、饗庭の局の梅枝さんと大野修理亮の松也。

松也は次の唐人話の奴光平も、でてきてくれると目が醒めわくわくしました、スターだわ。

梅枝の熱演がこのお芝居への感情移入の大いなる手助けとなりました。最後の舞踊「秋の色種」も、児太郎よりちょっとお姉さんな感じで東雲色の着物が素晴らしく似合い、玉三郎さんと同じ香りを放って児太郎とともに見事に琴も弾き、美しく舞ってくれました。

淀の方 = 坂東玉三郎(5代目)

豊臣秀頼 = 中村七之助(2代目)

大野修理亮 = 尾上松也(2代目)

饗庭の局 = 中村梅枝(4代目)

千姫 = 中村米吉(5代目)

婢女お松実は常磐木 = 中村児太郎(6代目)

包丁頭大住与左衛門 = 坂東亀蔵(3代目)

氏家内膳 = 坂東彦三郎(9代目)

正栄尼 = 市村萬次郎(2代目)


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漢人韓文手管始

かんじんかんもんてくだのはじまり

唐人話


役者さんでいえば、やはり傾城高尾の七之助、奴松也、なよなよしたお殿様和泉之助・高麗蔵、福之助が印象に残っています。米吉はまた可愛くてきれい。芝翫は勝手に嫉妬して怒って勝手な仕返しをし、最後まで同情する余地もないにくにくしい立敵。お気のどくなお役。鴈治郎はんは主役の十木伝七、上方和事の辛抱立役、ぴんとこな。七之助の傾城高尾が惚れてる主役。まるっこいから人はよさそう。


お殿様も家来も傾城狂い、傾城狂いゆえのお金の難儀、さらにお家の重宝まで紛失していて、やれやれないいとこなし。あんなに立派な芝翫さんも、高尾太夫との仲をとりもってほしいと口にもだせないくせに、下心からの親切尽くし。上方らしく笑えるところもありましたが、なんだかなぁでした。


上方和事の世界観が私には馴染まないようです。でも上方和事も古典としてこれからも後世に観客を楽しませながら遺していかなくてはならないもの。私にはこのお芝居を観て楽しい、よかったと思える力がありませんでしたが、みなさんはどうでしたかしら?


十木伝七 = 中村鴈治郎(4代目)

傾城高尾 = 中村七之助(2代目)

奴光平 = 尾上松也(2代目)

傾城名山 = 中村米吉(5代目)

太鼓持長八 = 市村竹松(6代目)

太鼓持善六 = 大谷廣太郎(3代目)

須藤丹平 = 中村福之助(3代目)

珍花慶 = 市村橘太郎

呉才官 = 片岡亀蔵(4代目)

相良和泉之助 = 市川高麗蔵(11代目)

千歳屋女房お才 = 大谷友右衛門(8代目)

幸才典蔵 = 中村芝翫(8代目)


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秋の色種

あきのいろくさ


長唄秋の色種、素晴らしい曲。

松虫の音色を模した虫の合方、

児太郎、梅枝が加わっての、

変態繽紛たり は大薩摩。

児太郎、梅枝の箏曲演奏、

玉三郎の衣装ががらりと代わり

手踊りからのフィナーレ。

最後はお能風の格調高さ。

目に耳に、秋の野の精が舞い遊ぶ夢のような世界に酔いしれました。歌舞伎は美しい。いつも思うことだけれど、玉三郎は奇跡。感動。


 = 坂東玉三郎(5代目)

 = 中村梅枝(4代目)

 = 中村児太郎(6代目)


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昼の部は来週みます。その前に半蔵門へ二度、一度はライブ、二度目は仁左衛門さん。やっぱりまた雨かなぁ☂️🍭。