溜まってた録画映像のなかで、衝撃を受けたのがこの「嵐が丘」。
ヒースクリフの山本耕史は、漆黒の底知れぬ孤独、心にたぎる情熱と激しい憎悪による鬼のようだ。哀れな鬼。
堀北のキャサリンは無邪気に人を傷つけていく。直情的で短絡的。ヒースクリフへの愛だけはほんとだった。
ヒースクリフが死の直前に回想するシーン。錯乱し病の床につくキャサリンの部屋に無理やり訪れるヒースクリフ。激しいやりとりはラブシーンのよう。このときキャサリンは狂っていない。あくまでも気の強いいい方ではあるけれど謝罪し許しを求め、ヒースクリフの腕に抱かれて死ぬ。
それから18年、ヒースクリフはキャサリンとともにありたいとその日を待つ、が、18年。ヒースクリフは生きて地獄を、キャサリンの魂は彷徨い続ける。ヒースクリフは、キャサリンの妄嫉に支配されながら、キャサリンを求め続ける。死ぬために生きているかのよう。悲しみと憎しみが靴を履いて歩いているようなヒースクリフ。そんななかでキャサリンの甥ヘアトンと娘キャシーの間に小さな愛が育くまれていた。この2人の若い役者さんも心に残った。
そして、ネリー役の戸田恵子さんが語り手として、ネリーとして、このお芝居を運んでいく。どんな状況も冷静に受け止め、よけいなことは言わないけれど、言うべきことはばしっと言う。キャサリンにとってもヒースクリフにとっても、お母さんみたいな存在だったのかなぁとも思う。戸田さんとにかく、素晴らしかった。
嵐が丘、読みたくなり早速電子版を購入した。嵐が丘といえば、そうそう、ケイト・ブッシュ!ちょっと見たかったイメージと違うけど、YOUTUBEにあったのを懐かしく聴いてみた。不思議な魅力があったなぁ。
ヒースクリフが失踪し三年後に嵐が丘に戻ってきてからの冷徹な紳士ぶりが、たまらなく素敵!イメージが海老蔵に重なるの!目かしら?ヒースクリフの憑かれたような冷徹さの中にも冷静な離見の見の境地が無意識に働いているかのよう。神様からの贈り物のひとりなのだろうなと思った。
松竹創業120周年『嵐が丘』
2015年5月6日(水・祝)~26日(火)@日生劇場
<スタッフ>
原作:エミリー・ブロンテ
脚本・演出:G2
美術:伊藤雅子
照明:高見和義
音楽:和田俊輔
衣裳:前田文子
<キャスト>
堀北真希(キャサリン)
山本耕史(ヒースクリフ)
高橋和也(ヒンドリー)、伊礼彼方(エドガー)、矢崎広(ヘアトン)
小林勝也(ジョウゼフ)、ソニン(イザベラ)
戸田恵子(ネリー)
陰山 泰(ケネス医師)、小林大介(ロックウッド)、近野成美(キャシー)