(「ヒーロー映画なのにR指定」ということでも話題に・・・でも、よ~く考えるとヒーロー映画じゃないし。)
◆マーベル映画新作◆
現在公開中のマーベルのアメコミ実写映画。
元特殊部隊員のウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)は、ひょんなことからマッド・サイエンティスト(フランシス。 演:エド・スクライン)の人体実験に協力し、不死身の肉体を手に入れることになりますが、それと引き換えにハンサムだった顔はボコボコのアボガド状態に。
元の顔になって恋人のヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)のもとに戻るべく、ヒーロー張りのボディスーツ(自作)に身を包み、フランシスを追うウェイド=デッドプール。
そんなデッドプールの戦闘能力に目を付けたX-men(※1)メンバーたちが、彼をX-menに勧誘しようとするのですが―――とまあこんな感じのストーリー。
今年2月の公開以来現在までに世界興行収入7.6億ドル(Box Office MOJOによる)だそうですから、堂々の大ヒット。
監督のティム・ミラーは、本作が長編デビューとのこと。一躍注目の的ですね。
仕事が急遽予定より早く終わり、とりあえず今から観られる映画を・・・ということで観たのがコレ。
私のイメージでは、仕事の後にビールを飲みながら楽しめる映画?という感じだったので、売店でビールを買って入ったんですが・・・ん~、ビール飲みながら観るには向かなかったかも。
R指定だけあって、グロも(エロも)あり。流血もかなりあって、食欲は進みません。
ただ、ウワサに違わず面白かった! ビールが進まなかった以外は大満足でした。
アメコミ実写版としてはスケールは小粒とは言え、やっぱり大スクリーンで観るほうが絶対楽しい映画です。
◆日本人にウケそうな脱力ヒーロー◆
さてこの俺ちゃんことデッドプール、全身ボディスーツに身を包んでる段階で自動的に「ヒーロー」に分類してしまうわけなんですが、「ヒーロー」=正義の味方と定義するなら、厳密にはヒーローとはちょっと違うんですよね。
彼の戦いは、彼を痛めつけて楽しんだマッド・サイエンティストのフランシスへの個人的な復讐(と恋人のため)に終始しています。
ただ、彼のスーパー・スペックに目を付けたX-menから「X-menに入ってヒーローにならないかと誘われている」という設定が面白い。
彼はヒーローになりえる能力を持ちながら、敢えてヒーローの道を選ばない、脱力系ヒーローなんです。
彼のアメコミ初登場は'91年だとか。随分昔からいたんですね。
でも、こういうタイプ、ジャパニーズ・アクションドラマ=時代劇にも、昔からいたような気が。
例えば「必殺仕事人(仕置人)」の中村主水なんて、まさにそう。
本気出せばメチャメチャ強いのに、何故か表の顔は昼行燈で、裏の顔も決して正義の味方じゃない。
そういう作品がウケてきた日本で、デッドプールがウケないわけがないと思うんです。
すでに世界的に大ヒットしてるらしいですが、日本でもブレイク必至かと。
そう言えば、デッドプール略してデップーが背中にしょってる刀は二刀使いの忍者みたいだし、頭の後ろにぽちっと出っ張ったスーツの隙間(?)は、チョンマゲを思わせます。
デップーは日本通という設定らしいし(キティちゃんグッズを愛用)、彼のキャラクターデザイン自体が、日本のアニメや日本文化に影響を受けたものであることは確かな気がします。(彼のマスクも変態仮面にも似てるな・・・と思ったんですが、変態仮面の方が後発だったんですね。)
◆ちょっとナルシスティックなのが楽しい「俺ちゃん」の自分語り◆
全体的にすごくテンポが良く、理解しにくい箇所も殆どありません。
何といっても、デップー本人の自分語りが楽しい!
彼はおしゃべり好きというだけでなく、しばしば観客に向かって自分語りや実況もやるのがポイント。(スクリーンを超えて観客に話しかけることを作品の中では「第四の壁を超える」と表現しています。)
しかも、それがすごくテンポがいい。
滔々とした自分語りには、ちょっとナルシスティックな雰囲気も加わって、敢えて言えばそこがヒロイック。
英語版では彼は普通に自分を”I”としか言ってないのに、日本語版では「俺ちゃん」と訳されているのも頷けます。
作中で多用されているラップも、自分語り好き、それでいて適度に力が抜けてるデップーの雰囲気にぴったりハマっていますね。
◆「らしくなさ」が人気の秘密?◆
(右がX-menのコロッサス。)
X-menからはコロッサスとティーンエージ・ウォーヘッドが登場。
でも、「X-men」 を知らなくても全く問題なく作品世界に入れます。(実際私もX-menは観てないですし~)
コロッサスはラスプーチンの子孫だとか(なのでロシア訛り)、設定を知ってるとより楽しめる部分も多いんでしょうけどね。
しかし、アメコミ・ヒーローもどんどん新しいタイプが登場してるんですね。
アントマンにしても、ごくごく普通の男が、大きくなるどころか小さくなる・・・という一見ヒーローものとは逆行する流れが斬新でしたが、今回のデップーにしても、不死身の体を手に入れたら、顔はヒーロー顔どころかアボガド級に崩壊しちゃったり・・・ていうか、ヒーローが白目って・・・?!
ヒーローにあるまじき下ネタもバシバシ!!
ヒーローらしからぬお茶目なポーズもご愛嬌!
とにかく、らしくなさが最大の魅力といっても過言じゃない・・・単なるおふざけキャラのようでいて、結構ヒーローの既成概念に対するアンチテーゼを盛り込んだ、考え抜かれたキャラだと思います。
ヒーローものの善悪二元論的世界が苦手な人――まさに私――には待望の、ニュータイプのヒーロー(もどき)物と言えるかもしれません。
実はちょっと前にDC系の「バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生」も観たんですが、個人的には、脱王道ヒーロー路線を正面から打ち出した本作のほうが圧倒的にインパクトがありました。
これ、すでに続編製作も決定してるようですね。
グッズが欲しいので、ぜひ日本でも流行ってほしい!
※1 マーベル・コミックに登場するヒーローチーム。
(画像は公式facebook・公式twitterに掲載されているものです。)