感想: 「ツナグ」もし一晩だけまた会えたら | 夫はフランス人、膵臓癌になりました (ワイン畑の中の3人家族)

夫はフランス人、膵臓癌になりました (ワイン畑の中の3人家族)

フランスで出会い、嫁ぎ、娘が生まれて7か月、夫が膵臓癌になり、2020年4月に旅立ちました。闘病の記録として始めましたが、その後の日々の生活や想いも綴っていこうと思います。



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本の感想です。

 

日本に居てフランスで難しい事、それは本を買う事。

(勿論、不可能ではないけど、、、)

 

そして読む事。

今まで本を落ち着いて読めませんでした。

家族といる間に読めたので

これらもブログに残していこうと思いました。


本屋やbookoffでは、今の自分のヒントになる本を探します。

棚を眺めながら、

前だったらとりあえず読んでみよう!と何でも手に取ってみるのですが、

今はそのエネルギーすらない。

興味を持つというのもエネルギーが要る事なんだな、と思いました。

 

あれでもない、これでもない、

何にもない!

 

結局、

「夫が生き返る方法」なんて本を探している自分に気付く。

・・・

でも、ない。

 

そんな中、手に取ったのが、、

ツナグ 辻村深月

新潮社 https://www.shinchosha.co.jp/book/138881/

 

 

ツナグ(使者と書く)は

一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれる。

それも一晩だけ。

気になる。

サスペンスでもなく、ディープ過ぎなさそうな雰囲気だったので購入。

実際、読みやすい本でした。

 

ネタバレにならないようにします。

死者との再会が出来る。

一晩だけ。

一生に一回だけ。(相手に拒否権アリ)

また死者側も会えるのは一人だけ。

会う時に死者は死んだ直後の記憶からの再会。

 

ストーリーの中ではいくつかの人々がこのサービス(?)を利用する。

 

テレビでドラマ化ができそうな、やさしいタッチの物語。

 

私は、自分がこのサービスを利用したらどうかを想像してみました。

そうしたら、

夫の死を少し受け入れるヒントになりました。

 


一晩だけ。

私が会いたいと申請すれば

夫は間違いなくOKするでしょう。

 

私たちの一晩、どうなるんだろう?

 

会いたい、声が聴きたい、触れたい、思いっきり抱きしめて、抱きしめられたい。


お互いに「愛してる」って言うだろう。

Mも可能なら一緒に居させたい。


「大きくなったな、歩けるんだな、パパって言えるんだな、俺に似てるな・・・」

 

そして 、どう展開するのか?


彼を目の前にしたら、

自分の中で繰り返した質問は、、、

訊けない。

「苦しかった?痛かったよね?私の声、聞こえてた?何を考えてた?」

 

心の中で叫び続けた事は、、、

言えない。

「寂しいよ、一人は辛いよ、もっとずっと一緒に居たかったよ、不安だよ、色も味も何にもないよ、義理の弟がひどいよ、もうやだよ、疲れたよ」

 

彼が、「俺、どうなったの?」

って聞かれたら、本当の事は言いたくない。

「抗がん剤、効いてなかったの。」なんて・・・

 

きっと、

まず彼は私との再会を喜ぶだろう。

いつもの、笑顔で。

 

自分が死んだと知ったら、

何も訊かずに、何も言わないだろうな。

 

癌と解った時も、

どんと構えて、ジタバタしない人だった。

 

少なくとも顔に出さない人だった。

家族も皆言う、彼はどんなにしんどくても決してそれを言わない。

 

痛みや辛さから解放されて、

彼らしい彼に戻っているなら、

私を静かに抱きしめてくれる。

 

私が泣くのはいつだって嫌いだった。

すごく、強くて、強面で、寡黙な人。

でも本当は繊細で子供っぽいところもある人。

 

私はきっと、

「いつも、ありがとう。

色々、あなたが私たちの為に残してくれたから、大丈夫。

愛してる、

いつも一緒。

Mと一緒にいつも3人で一緒。

本当に、沢山頑張ったね、

私たちの為に戦ってくれたね、知ってる。

je suis fier de toi

私はあなたの妻で、あなたの子の母で、幸せ。

ありがとう。

Mon amour

 

と、繰り返し言うと思う。

 

あの世に行くのなら、

笑って行って欲しい。

寂しい気持ちで行って欲しくない。




私が悲しいとか、寂しいとか、

当然変わらない。

泣くと思う。

 でも

彼は限界以上に頑張った。

 

私たちは愛し合ってて、

お互いに幸せでいてほしい、

そう想い合ってる。

 

と、

 

自分のストーリーをツナグの設定で展開したら涙が止まらなかった

ただの妄想なのに

リアルな対話をシュミレーションしてしまいました。

 

そして、ぐちゃぐちゃで苦しくて痛くて辛かった行き場のない感情が

すこし、

整理出来たんだと思います。


いいきっかけになった本でした。

 


夫は私たちと一緒にいる。

私が、忘れ物したり、時間に遅れそうになる事、いつも注意してる気がする。

電気の消し忘れや、「キッチンで歯を磨くのは変だ」とかも。

Ma chérie

って、言ってくれてるはず。

もう一度だけ、一晩だけじゃなくて、ずっと聞いていたい。


だから、聞いていよう。

感じていよう。

写真は研修中の時に夫がいる気がした時に撮ったものです。



今年もありがとうございました。

来年もよろしくお願いします。