厄介な事に巻き込まれたなぁ…。
他の若者たち同様、見よう見まねで私も巨大な部品に手をかけると、
「いっせーのせッ!で持ち上げるから」
オッサンの突然のデカい声に、私は本格的に号令がかけられたものだと思い、部品を握る腕に力を込めた。
フェイントかよ…。
「なぁ、いっせーのせ!の「せ」で持ち上げんのか、一拍置いて持ち上げんのか決めろよ」
若者に指摘されたオッサン。
「一拍置くバカいないでしょう普通。ねぇ」
私に同意を求めるオッサン。
「じゃあ「せ」で持ち上げっからね?頼むよ」若者がオッサンに確認して指揮を任せた。
このオッサンに任せていいの?
私は胸騒ぎがしていた。
「じゃあ皆持って、ズルはダメだから」
オッサンが言う。
何だよその確認。
ズルって何だよ…。
「いい?イクよ?イキますよ?イクよ?」
とオッサン。
イクイク言うなよ。力が抜ける。
「ほら、せーの!!」
てめぇ号令ちがうだろうがぁぁあ!!
私が心の中で怒号したときだ。
「イギャッヒッヒッ!!」
私の横でオッサンが倒れた。
変な奇声を発して、
突然ペチャ~ンと床にぶっ倒れた。
「あ~あ~あ~」
「これ腰イったべ」
若者たちが部品を取り囲んでいた時のように、今度はオッサンの周りに集まり、大の字で横たわるオッサンを囲んだ。
「ほら見ろ…」
私は喉元まで出かけた言葉をのんだ。
「君逃げた方がいいよ」
若者のひとりが私に言った。
「ちょっと。この人が打ち合わせと違うわけわかんねぇ号令かけて自爆したんでしょ」
「そうじゃなくて。君が何者で勝手に何してたってなって騒ぎデカくなると俺らが怒られっから」
若者がそういうと、
地べたから声がした。
「全部ウチが悪いの。どうせウチでしょ?ちょっとパトカー呼んでくれる」
オッサンが言うと、
「救急車じゃねぇの?なんでパトカー呼ぶんだよバカか」
若者が言うと、
「それどころじゃないから」
と投げやりなオッサン。
「じゃあそういう事だから、帰っていいよ」
そう若者に言われた私は、気まずくて仕方ないが、その場を去った。
玄関近くの廊下の貼り紙を囲む、工場見学の団体を見つけた。私はなに食わね顔で団体に紛れ説明を聞く。
10分後くらいだろうか。
工場見学をしていた私たち団体を追い抜き、担架を持った救急隊員が駆け抜けて行った。
この会社がいかに素晴らしいか自慢気な説明は続けられた。