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宗理

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一番最近の母の日の出来事。

その日、私は友人と
お互いのヒマをつぶすべく
なんとなく待ち合わせて
それとなくショッピングを始める。

男同士でショッピングをする場合
入りにくい店というのがいくつか存在して

例えば1位の女性下着売り場。
入りにくいというか入れない。
デパートではそのフロアを通り抜けるのも
気が引けるお年頃ではあるし
店員は男の私が自分のブラを買いに来たのかと
期待の眼差しで見ているかもしれない。


「あ、そっか。わりぃ、ちっと付き合って」
街中をともに歩いていた友人が
私を導くようにして入ろうとした店は

「花屋?なんで花屋さん?」
私が言うと彼は不思議そうな顔をして
「今日って母の日だ。すっかり忘れてたわ」
言いながらツカツカ入店する。
男同士で花屋も入りにくい店のひとつ。

「ん?お前 今買うつもりなの?」
私が彼の背中に問いかけると、彼は突如
待ってましたと言わんばかりに振り返り

「ならいつ買うの?今でしょ!」
まぁ店内に響き渡る声で言うわけです。
いい年こいて動作もつけながら。
いらっしゃいませと笑顔で近づいてきた店員が
無表情に。

「あとにしろ。まだ昼だぞ?
おまえ花買ってもう帰るつもりか」

「はぁ?何で花を買うと帰るんだよ」

「はぁ?は俺だろ。花もって歩き回るのかよ」

「なに、ダメなの?」

前から思っていたが、空気読めねぇわ
買う順番とか効率的じゃねぇし
極めつけは根っから面白くない。

「いや、お前がいいなら買えばいいよ。
ちょっと持っててとか一度でも俺に言ってみろ。
それが最後に買った物になるぞ」

「え?なんて?どういうこと?」
真顔で聞き返してくるわけです。
この理解力のなさ!

「いいよ。買え!」

「何だよ偉そうに・・・」
もう一日が台無しになったみたいな顔で
言うわけです彼は。

で、案の定、店員にカモられて
どんどん高い花を追加され
とんでもなくデカい花束の出来上がり。

「お前・・・、それ宝塚の最終公演でもらう
花束かって・・・」

「え?なんて?どういうこと?」
耳悪いんか!

「恥ずかしくないのか?」
「は?なんで?全然」
「俺は恥ずかしいよ」
「え、なんで?」

不毛な会話しかしたことないなぁ。

店を出て早々に注目のマト。
関係ない俺までついでに見られて笑われる。

「なぁ、喫茶店入ろうぜ!
なんか喉かわかない?」

「ふざけんな。そんなバカみてぇな花束持って
お前と向かい合ってコーヒー飲めるかって。
3名様ですか?って聞かれるぞ」

「は?コーヒー?コーヒー限定?」
最低なツッコミだな。

しばらく注目を浴びる程
ド派手な花束を持った彼と歩いていたら

「あ!ファミマがあった!」
彼が突然 大声で言う。
「ファミマなんて珍しくねぇよ」
「ちげぇよ!ドリンクタイムだよ」

次の瞬間、私の一番警戒していた一言を
彼はいともたやすく言ってのけた。

「″ちょっと花もってて″
ちょっくら買い出しに行ってくるわ」

「ふざけんな!」
「お前の分も買ってくるに決まってるべ。
今日お前イラついてるみたいだからさぁ、
マックスコーヒーおごってやるよ」

「何でマックスコーヒーなんだよ
甘ったるい」

「冗談だよ」

こんなヤツに誘導されて
してやられた。

結局、私はコンビニ前で
花束を持って彼の帰りを待たされている。
店内に入る客、出ていく客に
上から下までナメるように見られる。
何もそんな目で見ることないでしょうが。
花束を持ってる人がそんなに珍しいですか?

何だかイライラしてきた。
イライラしてきたら腸内の働きが活発になり
便意をもよおしてきた。
「遅い!何してんだ」
思わず声に出た。

外から店内の奥を覗くと
私は驚くべきものを目撃する。

店のガラス越し一番手前
雑誌を立ち読みしている彼の姿!!!
まさかそんなはずはないから、
手前なんて最初から見てはいなかった。

「なめてんなぁ・・・」

リオのカーニバルを連想させるような
派手にデカい花束を持っている私は
店内に入る事がこばまれる。
宝塚引退の花束だ。

便意もあり、冷静な判断ができず
頭にきていたのも手伝い、
私は花束を道端に捨て置き
店内に入る。

彼は私が入ってきた事にも気づかず
ルーズに雑誌に夢中。
小指を立ててページをめくる彼の動作を
ふと見てしまいイラッとして、
私は知らぬ振りをして彼の背後を通り抜けて
トイレに直行した。

たぶん5、6分はトイレにいただろうか
(ゆっくりしてやったのさ)
トイレから出ると店内に彼の姿がない。
(どこ行きやがったあの野郎は・・・)
外に出ると とんでもない情景が
私の視界に飛び込んできた。

私が歩道に捨て置いた花束の前に
女性がしゃがみ込んでいる。
そのしゃがみ込んだ女性の3歩ほど後ろに
力なく立ち尽くす友人の後ろ姿が。

私は友人に駆け寄った。
「おい!どうした!?」

彼は私の目を見ずに
しゃがみ込む女性を見すえたまま
「手を合わせて、泣いてんだわ」
小さな声でそう言った。

花の前でしゃがむ女性は
嗚咽を漏らして泣いていた。

「え、なんで・・・?」
私の慌てた声に、彼は落ち着いた口調で

「お供えの花と間違えてるんじゃないかな。
もしかしたら、ここで事故があったんじゃないか?その家族とか、友人の人なんじゃないかな」

「聞いてみろ。お前の花だろ」

「聞けるわけないだろう。誰かが供えてくれたと思ってんだよ。だから泣いてんじゃないか?」

「じゃあ。待つか・・・」
私が言うと、
彼は自分にだけ買った缶コーヒーを一口飲み、
「行こう」と言った。

「花どうすんだよ」

彼は私に言った。
「また買うよ。あれはもうお供え物でしょ。
あの人の母親の供養かも知れないしさ。
母の日だよ今日は」


「さっきの花屋はやめとけ」
私が言うと彼は「なんで?」と
いつも通り聞き返してくる。

だから俺はコイツといるんだろう。