会社に勤めてまもない頃の話。
とある企業の現場を見る機会があった。工場見学というやつです。
私は団体行動が苦手で、学生時代も「アホじゃないの?」と先生に確認されるほど列からはみ出しどこかに消えてしまうクセがありました。
その日も私は10分も経たぬうちに、団体から離れ、独自の工場見学をおっぱじめたわけです。
一人減ったくらいで気づきやしねぇだろという軽い気持ちでした。
さっそく迷子になり、絶対に客には見せないであろう、汚ねぇ倉庫らしき所に辿り着きました。
「ちょっと、オタク、学生服のひと!」
背後でそういった声がしていたのですが、
ふと振り返ると
「ああ。やっと気づいた」
私を見てそう言ったのは、作業服を着た小太りなオッサンでした。
「はい?私ですか?」
「そうでしょう。他に誰いるの」
そう言ったオッサンの周りには結構な人数がいました。
「これ学生服じゃないです。スーツですよ」
私がそう言うと、
「アンタもつまらない事につっかかるねぇ」
とオッサンは言った。
いったい誰と比べてんだよ。
「ちょ~と手伝ってもらえる。こっち」
手招きされて、特に断る理由もなく、私はついて行きました。
たどり着いた先には、何やら巨大な鉄の固まり(何かの部品)が床に置かれ、その周りをとり囲む5人の作業服を着た若者たちがいた。
彼らがオッサンを見るや、
「おい、誰を連れてきてんだよ!」
かなり年下であろう若者に怒鳴られたオッサン。
「暇そうな人って彼くらいしかいないでしょ!」
と怒鳴り返したオッサン。
「おめぇ普通よ、応援つったら社内の誰か呼んでくるだろうよ!どこの人だよ!スーツの人じゃんか!」
「別に誰だっていいでしょ!ねぇ」
と照れたような笑みを浮かべて私に同意を求めるオッサン。
「この大きな部品が見えるでしょ。これ外に出すから。600kgあるから」
いきなり説明をし出すオッサン。
「そうですか」
「オタク合わせて、え~、1、2、3、4、5、6人になったでしょ。人力で運ぶから。いつも」
オッサンは指差しながら人数を数えて説明するのはいいが、
「あなたは運ばないんですか?」
「はぁ?運ぶでしょ」
「だったら7人じゃないですか」
「オタクもいちいち細かいねぇ。チッ」
舌打ちをしたオッサン。
若者たちも止めることなく私を戦力としてすんなり受け入れた。
何なんだコイツら。
【つづく…】