「神戸ニニンガ日誌」(第3,519号)
○吉田修一の『国宝』を読んだ。私は朝日新聞の連載当初読んでいたが、比較的早い時点で挫折した。小説らしからぬ「です/ます」「ございます」という文体についていけなかった。
○今、読み返してみるとその「○○でございます」が、見事に狂言回しというか、物語そのものを舞台化して進めていく役割をしており、読者が座内の一観客となる喜びも感じた。
○吉田修一は中村鴈治郎の許可を得て「黒衣」として歌舞伎座に出入りした。初対面で「黒衣を着ていたら、舞台裏にいても目立たないから、黒衣をつくってやるよ」と言われたという。
○そのように歌舞伎の「中の人」となって取材も重ねなければこの作品は出来上がらなかった。映画だけでは分からない魅力がこの原作にはある。
○あまつさえ、書籍は電子版や愛蔵版を入れて200万部を超えた。10万部で「ベストセラー」と呼ぶ業界では驚異の数字である。
○しかし映画の動員数は1,000万人を超えている。映画を見た人が全員原作を買えば1,000万部超えの大ベストセラーになる。
ⓜⓐⓓⓐⓘⓜⓐⓓⓐ まだいまだ。