これを読む前にパート01、02、03、04、05、06、07をお読み下さい。
「大阪府能勢町か。じゃあ行って来る。」
「気を付けて下さいね。」
サチに言って家を出た。俺が家を出た理由それは俺は戦地の友人、今は亡き伊波勇の家を訪ねるためだ。あいつの血のついた最後の手紙を渡すためだ。
大阪自体行った事が無いため、汽車で大阪に着いてからはほとんど手探りだった。大阪まで行って能勢町まで行くまでは良かったがそこからが大変だった。『伊波』を探して約2日。近くの宿に泊まり探してた時にやっと良い情報が手に入った。
「伊波さん?あぁうちの近くですけど。」
「そうですか!!案内して貰えませんか!?」
「えっええけどもあんたどこの人ですか。ここら辺の人やなさそうやけども…。」
「あぁすいません。私埼玉から来たんです。ここに戦争で一緒だったやつの家族がいると聞きまして。」
「じゃぁもしかしてあんた硫黄島の人かいな!!はよおいで。連れて行ってあげるさかい。」
「ありがとうございます!!」
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「伊波さぁんお客さんやでぇ~」
俺は伊波さんを知っているという初老のおばさんに家に連れてこられた。
「はいはい今行きます。ちょっと待ってて下さいねぇ」
奥からは女性の声が聞こえる。まるで俺が帰ってきたときの家みたいだ。
「はいはいお待たせしました。山崎さんどうしはったんですか?」
「あんたの旦那さんの知り合いや言うてる人連れてきたんや。」
「どうも。」
俺はおばさんもとい山崎さんが言った後に軽く挨拶をする。」
「どうも。」
「伊波さんですよね。私、伊波勇さんと一緒に硫黄島に居ました。鈴木新一郎と申します。」
「鈴木さんですか…。あなたが。こんなとこもなんですしどうぞ。」
「じゃあ伊波さん、私は帰りますわ。」
「ありがとうございました。」
「お世話になりました。ありがとうございます。」
「いえいえそんなん私何もしてへんよ。じゃあね。」
「では。」
「ありがとうございました。」
一応もう一回お礼を言う。
「ではどうぞ。」
「あぁ、ではお邪魔します。」
伊波の家にはいらして貰った。
「どうぞ」
伊波の嫁さん、恵子さんから茶を出される。
「あっすいません。」
「で、今日はどんな用事で…。」
「あっはい、伊波っ伊波さんから預かり物を持ってきまして。あいつじゃなくて彼が亡くなる前に私、彼の手紙を渡されまして、ご家族に渡そうと思いまして。」
そういうと懐から紙が所々破れ、伊波の血で赤く染まった手紙を机に置いた。
「これはあいつ―彼が亡くなる直前に私に渡してきた手紙です。この血も彼のです。」
「もうあいつで良いですよ。これがあの人の最後の…。
私、あの人が死んだってのは手紙だけでしか知らないんです。いろいろ教えて貰えませんか?」
こんな事言われるとは思ってなかった。だんなの死に様は普通知りたくないと考えていたからだ。俺はあいつと出会った経緯と硫黄島での事を全て話した。
「―あいつは死に際に空が見たいって言ってました。」
「そうですか。あの人らしいですね。休憩してる時とかしょっちゅう空見てみましたわ。」
恵子さんは泣きながらそう言った。
「あの、鈴木さん、あの人の最後の手紙、聞いてやってくれませんか?」
「…恵子さんが良いのでしたら。」
「健太~ちょっとおいで。」
そう呼ぶと奥から10歳位の少年が出て来た。
「息子の健太です。この子も聞かせます。」
「いえいえ。」
「では。」
『拝啓、恵子へ
元気か?俺はまずまずやな。この手紙は届く事が無いのは分かってる。でもな、お前に知られんでもええから俺は書きたい事を書く。
俺はお前と夫婦に成れた事を心から喜んでる。夫婦に成って1年も経たん内にこんな島につれて来られたけどお前を守れるんやと思えるから戦ってる。俺は今日までに何人もアメリカ人を殺して来た。でも実際アメリカは鬼畜や悪魔やゆうてたけど捕虜にしたアメリカ兵は俺らとなんも変らんかった。息して歩いて笑って苦しんで泣いて帰りを待つ家族がおった。俺は後何人そんな同じ人間殺さなあかんのやろうな。そう思うと泣けてくるんや。
いっつも言ってる鈴木も同じ様な顔しとる。ほんまはみんなそうかも知れんな。戦争が早く終って欲しいわ。もう一度お前らに会いたい。俺の空ってのはお前と家からの空、両方の意味や。
短いけどこれで終ります。体にだけは気をつけてな。俺は帰れるか分からんけどお前と生まれてるかも知れん子供が元気やったらそれで良い。
伊波勇』
「―以上です。」
「…。」
「なんか、嬉しいような悲しいような気がしますね。」
「そうですね。聞かして貰いましたし私はそろそろ失礼さして貰います。」
「お見送りします。」
「あっいえいえお気遣いなく。」
「いいですって送らして下さい。」
「そうですか、なら、御願します。」
玄関まで行き靴を履くと恵子さんの方に向く。
「ほんとありがとうございました。これで届けましたよ。では。」
「はい、受け取りました。ありがとうございます。」
その後宿でもう一泊してから家に帰り、俺は戦争が始まる前の平和な日々を過ごした。