モチベーション、ってのは考えてみるとなかなか不思議なものだ。「motivation:動機付け、やる気を起こさせる内的な心の動き」とある。仕事やなんやかんやに対して、よーしやるぞとか意気込む様子をモチベーションが上がってきたなどと表現するのだが、実にこれが不思議でならない。
さすがの僕も、さあやるぞ!と意気込んでモチベーションを上げて仕事をすることもあるし、全然モチベーションが上がってこず、昼間っから快楽天を、それも読者のお便りコーナーみたいな場所を熟読してしまって全然仕事をしないことも多々ある。じゃあ、そのモチベーションってのは何に起因するのか考えると、それがなんとも不思議なのだ。
上司が自分の仕事を評価してくれた、妻と子のために仕事をせねばならないと思った、給料が上がったのでやる気が出てきた、何かをやり遂げた達成感が欲しく仕事をやり遂げた、世の中のモチベーションマスターたちはこんな理由でモチベーションを上げて仕事を頑張ってる。けれども僕はこれらのどれもが全く理解できない。
上に挙げた理由はいわゆる外的要因ではないだろうか。誰かの評価、それが欲しくて仕事を頑張る。けれども僕はそれをあまり理解できない人間なので、一貫して仕事を頑張らない。本当に言い切ってしまうけど、いかに怠けられるか、そればかりにモチベーションを上げている始末だ。
けれども、そんな僕でも内面的な問題、つまり自分の中での心の問題で、例えば今日は家に帰ったらすごいエロ動画を5本はダウンロードしてやるぜ!覚悟してろ!と誰に向けた宣言なのか分からないことを決意し、だったら仕事は早く終わらせないとな!とモチベーションがあがることがある。
このように、珍しくモチベーションが上がることはあるのだけど、それも一瞬のこと、とある要因によってそれは破れた風船の如くすぐに萎んでしまう。どうにもここ最近のことなのだけど、僕は小さな間違いが多い。この間も、未亡人が喪服姿でエロいことをするエロDVDがあって、それのクライマックスが「亡き夫の位牌を入れる」ってやつなんだけど、そのDVDのありえなさを人に伝える時に、言い間違えてしまって「亡き夫の遺影を入れる」と言ってしまった。遺影が挿入されたらえらいことだ。額縁ごといっとるってことだからな。
とにかく、こんな情けない間違いじゃなくても仕事上のことでも些細な間違いが多く、その度にテンションがだだ下がりしてしまう。それでも一応朝からテンションを上げて仕事に赴いてはいるのだけど、よーしやるぞってテンション上げてると、朝っぱらから大切な書類をシュレッダーにかけてしまうという凡ミス、もうそこでその日一日は終わりです。
明らかに自業自得で、自分のミスでテンション下がって仕事しないって社会人としてというか、人間としてどうなのかって思うし、クズにも程があるだろって思うんですけど、仕方ないんですよね、そういう性分なんですから。
そんな内面的なところから来る要因で毎日そのチンカスみたいなチンケなモチベーションを上げたり下げたりしている僕ですが、さすがに僕も人の子ですよ、ちょっとは外面的要因、つまり人の評価によってモチベーションを上げたりすることがあるんです。
いくら外面的要因っていっても上司に褒められてモチベーションが上がるってことはなくて、まあ、褒められもしませんけど、こう、なんていうんですかね、下っ端というか後輩というか、まだそれにすら達してない赤子というか、とにかくフレッシュな後輩たちに接したとき、モチベーションが上がってちょっと仕事頑張っちゃおうかなって思うことがあるんですよ。
あれは一昨年のことでした。うちの職場は新たに入ってくる新人に内定が出たあとに結構早い段階でその入社予定の子達に見学みたいなことをさせるんですね。それで、フレッシュマンが職場を色々と見学したり、先輩とお話して不安な点を解消したり、そういった手厚い体制が取られているんですよ。
で、僕はその新人に相対する先輩社員ってやつをずっとやりたくてですね、ほら、女の子のリクルートスーツって世界で三番目くらいに興奮するじゃないですか。それもパンツスーツでプリップリのケツとかだったら惑星が粉々になるレベルで興奮するじゃないですか。
それを間近で味わいたく、かぶりつきの特等席で味わいたく、いい匂いとかもお願いしたい感じで、先輩役をやらせてくれって人事の偉い人に直訴とかしてたんですが、常に答えはNo。とりつくしまもなくNo。バッドコミュニケーション。多分フレッシュな子達と接触させたくないんでしょうね、穢れるとかそういう古来の思想なのかもしれません。
それでもめげずにモチベーション上げてその新人教育係をやらせてくださいって直訴し続けてたら、根負けしたのか、諦めたのか、ついにやらせてもらえることになったんです。まあ、僕の勝利ですよ。
もう緊張でドキドキしながらですね、パッツンパッツンのパンツスーツとか興奮しながら、新人だから強く拒否とかできなさそうだからちょっとくらい触ってもいいのでは?とか妄想しながら、いよいよ未来の新人たちと接見する時がやってきましてね、少し緊張しつつ、それでも先輩の威厳を保ちながら悠然と部屋に入ったんです。
そしたらアンタ、男しかいないんです。本気で男しかいない。男っぽいだけで女の子も混じってるのかなって思ってマジマジと見てみたら、みんなどう見ても男だろうっていう立派なたくましい顔してました。なんでも今年から男女別になったらしく、女性はちゃんと更年期の女性の先輩が担当することになったみたいなんです。もう、テンションだだ下がりですよ。
ただね、ここでテンションが下がったからといって、明らかにテンション下がった感じで対応したらこの子達が可哀想じゃないですか。自分の裁量で自分の責任で自分の仕事のテンションを下げるのは自由ですが、そこに他社が関わるならいくらテンションが下がっていても最低限のことはするのが義務だと思います。
この子達は希望に燃えてるし、この子達から見たら僕は先輩であり、全てであるんです。そんな先輩がテンション下がってて投げやりってのはあまりにもかわいそうですから、やはりテンションが下がっててもそれなりにやる必要があるんです。
でまあ、頑張りましたよ。色々と彼らの話を聞いて、疑問点や不安な点を解決すべく誠心誠意対応しました。時には小粋なジョークも挟みつつ、彼女いるのかい?みたいな下世話な話も織り交ぜてリラックスさせ、彼自身がどう感じたかは分かりませんが、非常に有意義な研修の時間になったんじゃないかっていうレベルで手応えがあったんです。
するとね、最初は緊張してたのか何なのか知りませんが、僕と彼らの間に見えない隔壁みたいなものが確実に感じられたのですが、それもいつの間にか感じられなくなり非常に風通しが良い感じになってくるんですね。すると、新人たちも「先輩、先輩」ってすげえなついてきて、そうなると僕も悪い気がしてこないんですよ。
そりゃあ、こいつら全員、出かける直前までオナニーしてただろって感じの風貌で、こんなのに比べたら女子大生の集団の方が何ステージも上で、そっちのほうが良いに決まってるんですけど、この、なんていうか、このオナニーたちに慕われるのもそんなに悪くないんじゃないかって気持ちになってくるんです。
別に僕は男が好きとかホモセクシャルとかそういった嗜好は一切ないのですが、やはり慕われると嬉しいもので、次第にこのオナニズム文化発祥の地、みたいな新人ボーイのことが可愛く愛おしい存在に思えてくるんですね。「先輩、先輩」そう慕ってくる彼らを何とか守ってあげたい、そう思えてくるんです。
そうするとね、実に不思議な感情なのですが、なんていうかこんな感情が僕の中に存在することすら考えていなくて、少々戸惑ってしまうのですが、なんていうか、彼らのために仕事を頑張らなきゃいけないな、そんな感じでモチベーションが上がってくるんです。
明らかに外的要因なんですけど、例えば、彼ら慕ってくれる新人たちが本当に入社してきて、色々と仕事を覚えるうちに色々とバレてくるじゃないですか。僕が仕事中に快楽天を熟読してるとか、栗拾いツアーに誘われない、とかそういった実態が如実に露わになってくるじゃないですか。
そうなってくると、彼らも何でこんなカスを慕っていたのだろうって感じになってくるじゃないですか。運良く気付かないにしても、どうせ周りの同僚が「お前ら慕ってるみたいだけど、あいつカスだよ」みたいなことを何も知らない無垢な新人たち入れ知恵するに決まってます。
すおなってくると、さすがの僕も怒り心頭、余計なことを言った同僚どもをデカい棍棒持って美しすぎるカードゲーム、ケルベロスみたいなノリでぶん殴ることも辞さない感じで怒るんですけど、新人たちに「あの人仕事できないカス」って刷り込まれることは変わらないんですよね。
そうなってくるとね、彼らも心に傷を負うと思うんです。毎日オナニーしてるからって傷つかないわけじゃあありませんから、慕っていた先輩が仕事しないゴミだったって傷ついちゃうと思うんです。関係ない輩が傷つこうが何しようが知りませんけど、一度は僕のことを慕ってくれた彼らが傷つくのは少々耐え難いものがあります。
そうなってくると、少しでも彼らのキラキラな思いに応えるべく、僕も仕事ができるとまではいかないまでも、人に後ろ指さされることがないくらいは頑張らないといけないな、よし、明日から頑張ろう、って感じにモチベーションをあげたんです。
それからはまあ、ちょっと仕事を頑張って過ごしてきましてね、それこそ人様にとやかく言われることがないレベルくらいまでは頑張れたんじゃないかって自負していて、あとは彼らが入社してくるのを待つのみ、みたいな状態になったんです。
そんなある日、何やら物々しい雰囲気と共に数人のテレビクルーみたいなしゃらくさい奴らが僕の職場にやってきたんです。テレビクルーみたいなっていうか本当にテレビクルーというか映像関係の仕事に携わる人だったみたいで、カメラとか出してきて何やら撮影が始まる様子。
僕の同僚が何やら破廉恥な事件でも巻き起こして、僕から「いつかやると思いました、ええ」みたいなコメントを取りに来たのかと思いましてね、それだったら顔にモザイクかけて音声も変えてもらわないと、とか思ってたんですけど、どうやらそうではない様子。
新人が入社した時、実際に配属される前にどっかの山奥みたいな場所で研修があって、そこで集団生活とかオリエンテーションとか訳分からないことやらされちゃって、大部屋で寝るなんて毎日オナニーする人はどうするんだって行事があるんですけど、どうもそこで先輩からのメッセージって感じでビデオレターを流すみたいなんですね。どうやらそれの撮影に来たみたいなんです。
なにもビデオレターじゃなくても僕が研修の場所まで行って喋るから、とか思うんですけど、どうやらビデオとして形に残すことが大切な様子。で、内定時に世話した先輩が収録するのが慣例になっているらしく、受ける受けない以前の問題で僕が撮影することになったみたいなんです。それにしても、事前に言っといて欲しい。
よくわからないのですけど、本棚をバックにして喋ってくださいとか言われて、その本棚の中に本を沢山入れましょう、知的に見えますんで、とか僕ら素人には分からない部分に色々とこだわりがあるみたいで、結構面倒くさい準備を経て、ついに本番、となりました。
準備の間、ずっと何を喋ろうかって考えていたんですけど、僕が研修を受けた時のことを思い出してみると、下手に気取ったことや上手いこと言おうとしてだだ滑りしている先輩の映像ってのは、夜の飲み会の酒の肴くらいにしかならなかった記憶しかありませんでした。さすがにそれは嫌なので、なんとか新人たちにもバカにされず、それでいて心に残るような言葉を残したい。短い時間でずっとそんなことを考えていました。
で、下手に飾るより本音を言ったほうが心に響くんじゃないかって考えましてね、ここまでずっと述べてきたモチベーションの話、外的要因と内的要因のモチベーションって感じで論を展開してみたんです。
「モチベーションを維持する、それが仕事をする上で大切なんです」
みたいなことを、すごいドヤ顔で言ってて、それを収録されました。後々考えてみると、そんなこと言われなくても分かってるわって感じの話のオンパレードなんですが、それでも、あまり変なことは言わなかったので彼ら新人が慕っている先輩という理想像を壊すことはなかったと思います。
そんなこんなで、またしばらく月日が経過し、ついに4月になって研修を終えた新人たちが職場にやって来たんですね。カワイイ後輩たちがやってくるってんで僕も朝からモチベーションとテンションが高くてですね、ついに、その新人たちが僕のところに挨拶に来たんです。
「待ってたぜ!研修どうだった?」
みたいな感じで、まるで親戚のオッサンが甥とかに話しかけるみたいにざっくばらんな感じで気さくに話しかけたんですけど
「ええ、まあ……」
みたいな感じで歯切れが悪い。なんか、僕と目を合わせないようにしているっぽい。さすがの僕も動揺しちゃいましてね、前はあんなに打ち解けた僕らなのに、もう今は別れた後の恋人がウチに置いてった椎名林檎のアルバムどうする?いいよ、あげるよ。そっか。とか会話してるみたいな状態になってるんです。
「どうした、仕事が始まることへの不安か?」
みたいに僕も理解ある気さくなお兄さんスタンスでいくんですけど、やはり彼らは歯切れが悪い。というか、ヤクルトの監督みたいな顔した新人は、込み上げる笑いを押し殺しているようにすら見える。一体彼らに何が起こったのか。
「まあ、じゃあ飲みに行こうか!」
これが僕の最終兵器だったんですけど、以前に会った時、彼らがあまりに「奢ってくださいよー」とか言うもんですから、「じゃあ研修終わったら飲みに行こうや」「やったー!」みたいな会話があったものですから、歯切れの悪い彼らも飲みに連れていけばあの日、あの時の彼らに戻ってくるれるはず、そのためには多少の出費も致し方ない、奢ってやりますか!と決意しての言葉でした。しかしながら、
「いや、今日はちょっと○○さんと約束がありまして……」
なんと、別の先輩、つまり僕の同僚なんですが、そいつと飲みに行くというじゃないですか。もうこれには動揺とかそんあレベルじゃなくてですね、落胆ですよ。落胆。
結局、あのかわいかった新人たちはもうどこにもいない。挨拶もそこそこに帰って行っちゃったわけなんですが、なんでこんなにも彼たちが豹変してしまったのか。もしかして、誰かが彼らに入れ知恵したのかもしれません。あいつ、仕事しないカスだよ、あんなやつについていったらお前らもカスになるぜ!とか誰かが吹き込んだのかもしれません。状況的に彼らと飲みにく○○が怪しい。
もしそうなら、さすがに温厚な僕も怒って、長い爪のバルログみたいな武器を装備して美しすぎるカードゲームケルベロス、pato参戦!ってやりますよ。事と次第によっては本当に許さない。
でもね、歯切れの悪い彼らが、帰り際、ヤクルトの監督みたいな顔した新人が笑いをこらえつつポロッと「ビデオレター」みたいなことを口走ったのを僕は見逃しませんでした。もしかしたらビデオレターに彼らの心変わりの原因があるのかもしれない。
もう、そういった人事担当の部署に駆け込んでですね、渋る担当者を説得して、何で自分のビデオレター見せてくれないんだよ!と問い詰めてDVDを借り受けて見ましたよ。
僕は自分のことが本当に好きじゃないので、自分の姿を見るってのはかなり苦痛なのですが、映像を見ていると別にそんなにおかしいことは言っていない。強いて挙げるなら、突然撮影を言い渡されたのでヨレヨレの服を着ているくらいのもんです。でもね、ずっと見てて驚愕の事実を発見したんです。
ビデオレターの僕は、モチベーションの大切さ、モチベーションを上げることの意義、モチベーションを維持する方法、モチベーションを失ったらどうしたらいいか、みたいなことを仕事の、人生の先輩として懇切丁寧に解説してるんですけど、その、あの、なんだ。
ビデオレターの中の僕、モチベーションのことをずっとマスターベーションって言い間違えてた。
すごいドヤ顔で腕を組みながら「マスターベーションを維持する、それが仕事をする上で大切なんです」みあちなことを言ってやがる。なにが「自分なりのマスターベーション維持方法を見出して」だ。維持すんな。「人に褒められたい、そんなきもちでマスターベーションを」とか、誰も褒めてくれるわけない。
というか、さすがに僕も緊張し過ぎでテンパって間違えたんですけど、撮影してる奴とか編集してる奴、気づいてなんとかしろよ。
結局、フルでこの映像がそれこそプリケツのリクルートスーツの女子新人とかの前でも流されたんでしょうね、数えたら21回もマスターベーションって言ってた。そりゃ、その日の夜の酒の肴になるし、他の先輩に話を聞いて、あいつ頭おかしい、栗拾いツアーにこない、みたいな話になったに違いない。そりゃ新人も近づかんわ。
些細なミスでせっかくモチベーションを上げていたのに、これにはさすがの僕もモチベーション急落。仕事を怠けてさっさと家に帰って濃厚なエロ動画を6本ダウンロードし、マスターベーションをするしかない。やる気を出して仕事に頑張る世の中のモチベーションマスターにはなれなかったのだけど、マスターベーションマスターになってやる。モチベーションを上げて。