お嬢様はおてんば(Numeri日記より) | ヌメラーのヌメラーによるヌメラーの為のNumeri日記

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※私が書いてるのではありませんので悪しからず(^^)/

お嬢様ってのは、それはそれは気品があって優雅でエレガンスでユリの花のようで、そこにいるだけでその空間を彩るような絶対的な存在なんだ。

僕は生まれも育ちも貧しく、見まごう事なき貧民街出身で、もちろんアイスのフタなんてこれでもかってくらい、20代後半欲求不満のOLが飼ってるそれ専用の犬のごとく舐めまくる貧しさなのだけど、それでもやはりお嬢様ってのはたいしたものだと思う。

多分、どんな時でも「ごめんあそばせ」とか言うだろうし、チョビヒゲの執事なんかを連れてるだろう、でもってビーフストロガノフなんか食べちゃうだろうし、バスローブもネグリジェだって着るかもしれない。硬貨どころか紙幣も見たことなくて、全てお父様のカード、というか自分ではあまり買い物をしなくて、もちろん、恋敵とか永遠のライバルとはテニスかフェンシングで決着をつけるだろう。で、召使いに自分の陰毛とか剃らせてると思う。そうであって欲しい。

幼い頃からバッタを捕って暮らし、いかにデカいバッタを捕まえたかがステータスになる、カマキリなんか捕まえたらヒーローだった貧相なヒエラルキー社会で暮らしてきた僕にとって、その高貴な存在が信じられないし、そうである努力に感謝さえ覚える。とにかくお嬢様には感謝する。

そりゃね、誰だって飯食うときはアグラかいてご飯に味噌汁ぶっかけたほうが美味いですよ。ブホッとか機関銃みたいな屁を出して、風呂はいってる時にオシッコしたくなったらココでしちゃうか、みたいな方が楽ですよ。でもね、お嬢様はそれをしない。あえてそこはグッと我慢して、歯軋りする悔しさで耐え忍んで高貴な振る舞いをしてるのだと思う。

そう、お嬢様はお嬢様であることが最大の義務で、お嬢様が頑張ってくれているからこそ、僕ら下賎な民は自由に下品さを謳歌できるし、誰に気兼ねすることもなくお風呂でオシッコできる。考えても御覧なさい、みんながみんなお風呂でオシッコなんかした日にゃ、日本国が終わりますよ。お嬢様がいるからこそ日本人は一定の気品を保ってるように見えるし、なんとか僕ら下賎な民も存在することができるのです。

僕のような下々の者には身近に感じることができないお嬢様。それでもどこか遠くには確実に存在してくれていて僕らを照らしてくれる光り輝く存在。それが何故だか頼もしいし、僕まで誇らし気持ちにさせてくれるから不思議なものです。

けれどもね、そんな遠くて頼もしい、まるで太陽のような存在のお嬢様がですね、なんと僕の身近にいたんですよ。マジでビックリして腰が抜けるかと思ったんですけど、ホント、あまりに近くにいたんです。今日はそんなお話です。

最近、職場の個室にテレビを導入しましてね、そりゃプラズマだとかハイビジョンだとか仰々しいものではなく、単純にゴミ捨て場に捨ててあったのを拾って帰って繋いでみたら映っちゃった!みたいな物なんですけど、それのおかげで普段は見ないテレビを見つつ仕事なんてことをやってるんですよね。

そうするとね、来るんですよ。

何が来るかって職場の女の子なんですけど、なんか「ドラマ見させてください!」とか言って弁当箱持参で僕の部屋まで来やがるんですよ。

この女の子が、微妙にパンチパーマ風のチリチリした髪型で、ほのかに大仏に似ていて仏教の香りがする子で、おまけに本気で仏壇みたいな臭いがするもんですから、心の中でヒッソリとブッチャーって呼んでるんですけど、こいつがイチイチひどい。

なんか、辺見えみりが過去にタイムスリップするドラマが見たいらしく、高校球児が食べるみたいな銀の弁当箱開けてですね、僕の机に座ってゲハゲハとドラマ見とるんですよ。なぜか仕事中なのにキャミソールって言うんですか、肌着みたいなあられもない格好でブッチャーが佇む姿は地獄絵図そのものですよ。マジ、タイムスリップとかどうでもいい。

で、なにがそんなに面白いのか知らないんですけど、ドラマ見ながら大笑いして飯粒まで飛ばす始末。そんな下品さも迷惑ですが、存在するだけで仕事してないけど仕事にならないやらオナニーできないやらで大変な騒ぎなんですよね。

で、ちょうどその日も昼の1時を超えましてね、そろそろ昼ドラが始まる、またブッチャーがやってくると怯えてたんですけど、いつものようにドアがノックされると何か様子が違う。なんか多いなって思いながらドアを開けると、一人増えててブッチャーともう一人の女の子が訪ねてきてるんですよ。

「ほら、アンタも見たいんでしょ」

とかブッチャーに言わされてるみたいな感じなんですけど、そのついてきた子も

「よかったらお邪魔してもよろしいですか」

とか言うんですよ。その瞬間、思いましたね。この子はブッチャーと違って上品な子だと。

「辺見えみりみせろよー」とか出来の悪い早口言葉みたいなこと言って来たブッチャーとは言葉遣いから違いますし、その格好も極めて気品溢れる夏の装い。ブッチャーは半裸みたいな服装で腋毛ボウボウなんじゃねえのって感じなんですけど、彼女は暑いのに長袖のサニーレタスみたいなシャツ着てるんですよ。

で、ブッチャーはドカ弁食いながら乳幼児の頭部くらいなら入るんじゃないかって大口開けて笑ってるんですけど、彼女はおちょぼ口で野菜がいっぱい挟まったパンとか食ってるんですよ。

思いましたね、彼女はお嬢様なんじゃないかと。立ち居振る舞いからしてブッチャーはこちら側の人間でしょうが、明らかに彼女は向こう側。何か高貴な気品を感じるんです。

で、ドラマが終わったあとに話してみたんですけど、やはりいいとこのお嬢様みたいで、家にお手伝いさんがいるみたいなことや、スイスによく行くみたいな話をサラリと言うんですよ。その横でブッチャーは爪楊枝でシーハシーハーしてた。

なんでそんなお嬢様がウチみたいな下賎な魔窟に、とか思うんですけど、単純にお屋敷から通える距離だったということと、社会勉強って言うんですかね、お嬢様といえども社会と繋がる方がいいみたいなフィーリングで働いてるみたいなんですよ。どうもお給料とかとんと興味ないみたいで、いくら給料貰ってるのか把握してないみたいなニュアンスのことを言ってました。ブッチャーなんて4月頃に給料が500円下がったって大騒ぎしてた。500円だよ、500円、なんだか泣けてくるわ。

で、お嬢様が働きに出てるってことでお父様は大変心配らしく、このお父様も会社などを経営していて決して暇じゃないはずなのに、なんか定時の5時になると会社前に高級車乗り付けて迎えに来るみたいです。お父様が忙しい時はお手伝いさんだったか運転手が迎えに来るそうです。ブッチャーなんて大雨の日にママチャリで帰って側溝に落ちたらしいよ。

それでまあ、遠くて頼もしい存在であったお嬢様がなんで僕の仕事場で辺見えみりの昼ドラを見てるんだ!と衝撃を覚えちゃいましてね、興味深くてもう根掘り葉掘り、いかにお嬢様かみたいな話を延々としまくりました。ブッチャーは飯食ったら眠くなったらしくグゴーとか寝てました。

でまあ、お嬢様のセレブ話に全て、「すげー、それっていくらぐらいかかるのかな」みたいな返答しかしない僕も明らかに下賎なのですけど、なんだかんだであっという間に夕方に。ここにいる全ての人間が仕事というものをどこか遠くに置き忘れているんですけど、なんか定時の5時が近くなっちゃったんですよね。

そりゃね、僕は下賎と言えども気配りが出来る男ですから、彼女は定時にお迎えが来るかぐや姫だって先ほど聞きましたから、

「もうすぐ5時だけど、帰る支度とかしなくて大丈夫なの?」

とか、僕が女だったらおいおい、抱かれてもいいぞって思うくらいジェントルマンに切り出したんです。そしたら、

「今日は大丈夫です、ただちょっと不安で・・・」

とか彼女が言うではありませんか。何のことだか良くわからないんですけど、色々と聞いてみるとどうやら今日はお嬢様大冒険の日だった様子。

彼女は仕事を始めてから、送迎付きで通勤していたんですけど、何を思い立ったか今日は自分で車を運転してきたらしいんです。お気に入りの車に乗って、免許を取ってから始めての一人運転。ドキドキしながら通勤してきたらしいんです。だから、定時に帰らなくても大丈夫なんですけど、また帰りも運転するのが不安らしいんです。

「でもまあ、高級車って安い車より安全だよね、エアバッグとか」

一人で通勤大冒険!とか言われてもそれって結構普通のことですから、どう返答していいか分からず訳のわからない返答をしていると、ずっと寝ていたブッチャーがガバッと起き上がりましてね

「3人でご飯食べに行こう。香織の運転で!」

とか、とても下賎な民らしい、明らかに奢ってもらうの目当てですみたいな意味不明な提案をしやがるんですよ。でも、お嬢様も乗り気みたいで「いきましょう」みたいな自由を謳歌してること言いだしやがりまして、次第に3人でご飯を食べに行く流れに。

ちょっと待ってくださいよと。あのですね、いくら比類なきお嬢様を擁してるとは言っても、そこは彼女に奢らせるわけにはいきません、年齢的にも僕が奢るのが自然なんでしょうが、こう、その、机の影で財布を見てみたら3千円しか入ってませんでした。おいおい、いくらなんでもお嬢様に竹富食堂のから揚げ定食は食わせられない、お嬢様はカタツムリみたいなの食べるんじゃないのか、絶対に金足りねーと微妙にはにかむくらいしかありませんでした。

でまあ、なんでもお嬢様は皆の車がひしめき合う駐車場に停めるのが怖かったらしく、かなり離れた場所に駐車したみたいで車を取りに行くことになったようなので、僕とブッチャーはボケーッと門の前で佇んで待ってました。

「やべー、超楽しみだよ、高級車」

そう、僕とブッチャーの狙いはそこにありました。きっと、お嬢様は高級車に乗ってやってくるでしょう、それはそれは豪勢な高級車に乗ってみたい、その豪勢さを満喫したい、おそらく生涯に乗る車の中で最も高級な車が霊柩車であろう僕とブッチャーは心躍りました。

たぶん、高級車ってのは後部座席にミニバーみたいなのがついていて、そこにドンペリとか入ってるでしょうし、もちろんシートも全面革張り。座席の位置や角度なんか電動でウイーンと動いて、後部座席で女がフェラチオ始めようものなら、運転手に見られないようにカチッウイーンと仕切りがせり出してくるに違いありません。

「どんな車なんだろうね、外車かな」

そう言う僕とブッチャーの心の中では、高級車をビクビクしながら運転するお嬢様というビジョンが浮かび上がり、デカくでデラックスな車体に振り回される彼女の姿が結構いいかもしれない、などと思い始めていたのでした。

「ポルシェかフェラーリだと思う」

高級外車というとポルシェかフェラーリしか思いつかないブッチャーも可哀想なのですが、僕も同じようなことを考えてました。とにかく高級車に乗れるのが嬉しすぎる。

「ごめんなさい。お待たせしました」

遂にお嬢様が車に乗って登場したのですが、なんだか異様に様子がおかしい。というか、一見して何かが異常なことが分かる。というか明らかにおかしい。

「おまたせしました、さあ、乗ってください」

そう言う彼女は運転席に座って窓を開けて言ってるんですが、その位置が明らかに高い。その純白のボディに響き渡る重低音サウンド、そして車体後部には堂々たる荷台、ええ、どっからどう見ても軽トラです。

可憐なお嬢様と無骨な軽トラってのが頭の中で繋がらないんですけど、とにかく冷静に落ち着いて話を聞いてみると

「ウチにある車の中で一番運転しやすそうだったんですよ。それにこういう車ってカワイイじゃないですか」

とか言うんですよね。

「さあ、乗ってください」

とか言うんですけど、軽トラ、2人乗りですからね。コイツ、お嬢様はお嬢様だけど頭おかしいんじゃないだろうか。

とにかく、これって違反だったような気がするんですけど、助手席にブッチャーが乗って僕が荷台に乗るという異様な展開に。30歳にもなって軽トラの荷台に乗ろうとは夢にも思わなかったんですが、高級車のゆとりの後部座席を期待して「後部座席は俺な、お前は助手席座れよ」とかブッチャーに言っていた自分を殴りたい、5分前の自分を殴りたい、と思ったのでした。

で、いよいよ発進したのですが、なんか、ビクビクするお嬢様の慎重な運転を期待してたのに物凄い勢いで暴れ馬みたいな運転でした。カーブに加速して突入する軽トラなんて始めて乗りましたよ。

で、座席に座ってるブッチャーとお嬢様はいいんですけど、荷台の僕はゴロンゴロン。振り落とされそうだったので窓のところについてる鉄格子みたいなところに捕まってました。見ると、ブッチャーも怖いのか大仏みたいな顔しやがってからに助手席で念仏みたいなの唱えてました。さすがブッチャー。

お嬢様がこんな荒くれ運転、しかも軽トラだなんて、と思うのですが、きっと彼女は可憐で上品な自分に疲れていたのだと思います。下賎な民のために上品に振舞う。それに疲れてしまったのだと思います。

そして、軽トラというお嬢様の象徴とはかけ離れた馬を駆り、相貌名運転をし始めた。そうすることでお嬢様であるストレスを発散しているのだと思います。

お嬢様も大変なんだな、これくらい、僕ら下賎な民は我慢してあげないといけない、と思いつつ、あまりの怖さにオシッコがしたくなったのでこのまま荷台でしてしまおうか、と思う僕はやはり下賎なのでした。