気配(Numeri日記より) | ヌメラーのヌメラーによるヌメラーの為のNumeri日記

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※私が書いてるのではありませんので悪しからず(^^)/

「やっぱりさ、女性器は外せないですよ」

それはすごい気配だった。誰もが驚いた。全米が震撼した。

クソ暑い会議室の中、経費削減だかなんだか知らないけど、クーラーの設定温度30℃ってなんだよ、それ暖房じゃねえか、と悪態もつきたくなるほど蒸し暑い会議中に事件は起こった。

ウチの職場は特に会議が多い職場で、酷い時になると週に8本くらい会議がありやがり、そのどれもが興味ない人の結婚式くらいに長い、長く感じでどうしようもない。退屈で退屈でどうしようもない無為な時間が流れる、それが会議だ。

会議は踊るってのはまさにその通りで、冷静に考えると別に大したことを話し合ってるわけじゃない。特に問題点が解決するわけでもない。話が堂々巡りすることだって多々あるし、それどころか次回の会議の日程を決めるための会議、なんていう一休さんのトンチみたいな大激論が酌み交わされることもある。ホント、会議だけはどうしようもない。

そんな気持ちになっていたのは僕だけじゃなかったようで、社内全体で会議を減らそうというムーブメントが巻き起こった。さすがに何時間も何時間もという会議を何本もやってられない、主に若手の間でこのムーブメントは巻き起こった。

そうなると、会議を減らすための会議、なんちゅう訳の分からない事になってまた会議が増えるのだけど、これも会議を減らすための辛抱、と根気強く会議大好き老害連中を説得した。

結果、社内LANを利用した独自の会議システムが提案され、大切な会議は今までどおり会議室で行われるものの、その他のくだらない会議はパソコンを使ってオンラインで行われることになったのだ。老害連中は文字だけでは伝わらない何かがある、と反対したが、それらを必死で押し切った形だ。

で、このオンライン会議システム。実際にテストで使ってみて分かったのだけど、これが掲示板とチャットのシステムを利用したような感じで非常に使いやすい。ある会議テーマに従って自分の意見を書き込み、それに伴って誰かが素早くレスポンスをつける。実際に顔をつき合わせていると顔の怖さや声の大きさで意見をごり押しさせられることもあるのだけど、オンラインなら文字だけだ。変な凄みに負けることはない。

こうして、年配の人たちはオンライン会議システムの導入に乗り気ではなかったものの、会議の多さにウンザリしていた若手から中堅にかけては大賛成した。しかし、オンラインならではの問題点もいくらか見受けられた。

1つは、意見が堂々巡りしすぎること。会議などでは時間的制約もいくらかはある。さすがに24時間不眠不休で議論が紛糾することはない。ある程度長引いたら妥当なところで決着をつけることができる。しかしながら、オンライン上ではその制約がない。誰かが誰かの意見にレスポンスをつけると、それに対して誰かがレスポンスを、またそれに対して、と実際の会議以上に議論のラビリンスに陥りやすい。

そしてもう一点。言葉が過ぎすぎてしまうという点も問題だった。会議で顔を突き合わしていると言えないようなことでも、それが画面上の活字であると言えてしまう。もちろん、言葉ではない文字である行き違いってのも当然あって、そんな意図はなくても悪意に受け止められることもある。誰だって文字だけの議論では歯止めが利かなくなってしまい、悪意が悪意を生み出してしまう事だって当然ある。

一つ目の問題については、議論が堂々巡りしないよう、なるべく他者の意見には触れず、自分の意見のみを書き込むようにガイドラインを制定しよう、ということで纏まった。実際、これで歯止めは効かないだろうけど、意見が堂々巡りすることを悪とはせず、実際の会議と違って時間的制約は少ないのだから、それで良しとする動きによる結果だった。

二つ目の問題点が難しかった。暴走する言葉の暴力をルールどうこうで制約するのは不可能。なにせ、そういった人は暴走しちゃってるんだからルールがあっても関係ない。これはもうどうしようもないので、本当に各個人の良識に任せ、そしてシステム的には禁止ワードで制約しようという考えでまとまった。問題になるなら最初から弾いちゃおうという考え。

こうして、オンライン会議システムの導入に関わった若手が中心に集められ、禁止ワードを決める会議が開かれることになった。もちろん、オンラインではなく実際に集まっての会議だ。また会議かよ。

「やはり、他者を貶めるような発言は禁止した方がいいのではないか」

「テスト使用でpatoさんが連呼していた「キチガイ」も禁止にした方がいい」

「いやあれはキチガイのように使いやすい!とかVeryの意味でですね、僕だって悪気があったわけじゃ」

「とにかくキチガイは禁止だな」

「それならばアホとかバカとかも当然禁止でしょう」

「まてまて、バカはいいけどアホは禁止にできないんじゃないか」

「たしかに。アホ○○○○○とかそれを含まれた発言できなくなる(業務上使う専門用語です)」

「まって!それだったらキチガイだって「君と君との心の行キチガイ」とか発言できなくなる!」

「もうpatoさん黙ってて」

とまあ、主に他者を侮辱する言葉について禁止ワードにするか否か激しく討論しておったのです。すると突然ですよ。

「やっぱりさ、女性器は外せないですよ」

物静かで気配のない、いつもいるんだかいないんだか分からないようなK君が言うんですよ。それはそれは物凄い気迫というか気配というか、女性器の名称だけは禁止ワード入りさせてもらう、ととんでもない禍々しきオーラを身に纏っておったのです。

いやね、何をそんな女性器に一生懸命になってるか知らんのですけど、仕事上の会議システムですよ、議論がヒートしてバカとかアホとかキチガイとか使う人はいるかもしれないですけど、さすがにマンコを連呼する人はいないと思うのが普通じゃないですか。というか、マンコはダメでチンコはいいのか。

「とにかく女性器は禁止ワードにさせていただきます」

なんでそんなに一生懸命なのか知らないですけど、とにかく頑なにマンコだけは禁止ワード入りさせたい様子。本当にその気配は物凄くて、普段は忍びの末裔かと思うほどに気配がなくて、ちょっと半透明かと思うほどなのに、マンコにまつわるこの気配のありようはどうだ。

まさか彼は自分で気配をコントロールできるというのか。普段はとにかく気配を消してここ一番で最高の気配を出す。なんと効果的なことか!と感嘆したのです。

僕は自分の気配をコントロールするのが苦手で、例えば、上司が誰かに面倒な仕事を押し付けてやろう、と企んでる気配がした時にですね、見つからないように必死で気配を押し殺すんですが、物凄い勢いで見つかっちゃうんですよね。

逆にこう、声とか出して存在を主張するんじゃなくて、気配だけで存在に気付いて欲しい時、自分の中で小宇宙を燃焼させるイメージで気配を出してみるんですが、一向に気付いてもらえない。

あれは1ヶ月くらい前のことだったでしょうか。

保険勧誘のクソババアがあまりにしつこく、このままでは末代まで祟られる気配が濃厚だったので、保険勧誘の総本山である保険会社まで出向いてですね、ちょっと手続きをしていたんです。

なぜか田舎の保険会社って1階が謎のスペースで2階が仕切りも何もないただっぴろいオフィスになってる気がするんですが、そのオフィスに通されて隅のほうに簡易的に作られた応接ルームみたいなところで書類を書いていたんです。

摺りガラス付きの仕切り板みたいなので囲まれたスペースで、周りからは姿が見えないんでしょうが、声とか何かは筒抜け状態、そこで書類を書いていたんですけど、担当のオバちゃんは何か用事があるらしくどっか行っちゃったんですよね。

昼間の保険会社って人がいないもんで、仕切り板の隙間から覗いてみると周りに誰もいない様子。随分向こうの方に偉そうな人が座ってたんですけど、とにかくこの周辺には誰もいなかったんです。

おいおい、随分無用心だな。僕が物盗りとかだったらどうするんだ。そうでなくてもここでオナニーとかおっぱじめるかもしれんぞ、と思いながら大人しく書類に記入していたんですけど、何やらドヤドヤと人が入ってきたんですよ。

どうも保険のオバちゃんが集団で帰ってきたみたいで、1匹でもやかましいのに集団でギャーギャーと、ちょっとした地方の祭みたいな勢いで騒いでるんですわ。

僕がいるスペースの近くに陣取って話してるみたいだけど、どうも仕切り板の向こうにいる僕の存在には気付いていない様子。なんだか好き勝手に喋り始めたんですよね。

「○○さんのところはそろそろ離婚するらしい」

「△△さんのところは子供がグレて大変らしい」

「××さんとこはいつ行っても変な臭いがする」

たぶん客の悪口を言ってるんでしょうけど、それが妙にリアルで生々しい。まずい、こんなこと聞きたくない、頼む、僕の存在に気付いてくれ、僕の気配に気付いてくれ、と、うおーって感じで気配を出してみるのですが、オバちゃん達は止まらない。もう、ノンストップオバちゃんですよ。

なんかワザとらしく音出すとか、声出すとかで気付いてもらうのは簡単なんですけど、それだといかにも聞いてましたよって感じじゃないですか、できればそれは避けて気配で気付いてい欲しい。もう必死だったんですけど全然気付いてくれない。

そのうち旦那との夜の営みとか主人のアレ、メンスがどうこうみたいなオバちゃんたちの女の部分を感じる非常にデンジャラスな会話になってきたからさあ大変。ゲハゲハと大変盛り上がってる様子なんですけど、できればそういうのは勘弁願いたい。もう気付いてくれ、と気配を燃焼させるのだけどやっぱりだめ。

「この間、痴漢に遭った」

とかそのうちの一人、下山さんっていう人が言い出したので、ちょっと気になって、そんな美熟女が保険のオバちゃんやってんのか!と仕切り板の隙間から見てみたら、サイババみたいなのが「もう最悪よー」とか言ってるし、気配どころか怒りすら燃やす始末。

「あら下山さん、太極拳やってるでしょ、痴漢倒しちゃえばよかったのよ!」

とか別のババアが言い出して、なんだよ太極拳って、と僕も心中穏やかではない。

終いには全員で下山さんに太極拳を教えてもらおう、みたいな流れになっちゃって、サイババ下山さんを筆頭に5人くらいのオバハンが太極拳やってんの。その異様な光景がいちいち仕切り板の隙間から見えるから始末が悪い。

ホエーッて感じで、出来の悪い洋物アニメみたいにオバハン連中が舞ってて、僕もその光景を見ながら「こ・・この動きはトキ・・・!」とか言えたら随分楽だったのでしょうけど、必死に笑いを堪え、気配を燃焼させることしかできませんでした。

結局、気配だけでは気付いてもらえず、担当のオバハンが帰ってきて始めて僕の存在が認知されたのですが、気付いたオバさん連中は、何気なく鼻くそほじってたら物凄くデカいのが取れた時みたいな顔して驚いておられました。もう気まずいったらありゃしない。

結局ね、K君のように普段は気配を押し殺してあらゆる物をかわす、でここ一番って時に気配を最大限に燃焼させて自分の存在を知らしめる、それこそが最も賢い生き方だと思うわけなんです。

「では、マンコは禁止ワードと言うことで」

もう気配を出しすぎてリミットブレイクしちゃってるK君は、いつのまにか女性器とか濁らせた言い方ではなくマンコとか言っちゃって、確かにキチガイなんですけど、その気配には有無を言わせない説得力があるんです。

じゃあチンコはどうすんだよ、マンコだって色々な言い方があるじゃないか、そもそもいい歳した大人たちが会議でマンコとか言ってるのは相当にシュールだ、などの数々の疑問が沸き起こるんですけど、そんなの物ともしない説得力が彼の気配にはあるんですよね。

ああ、文字だけのオンライン会議システムじゃ伝わらないことって、こういう気配なのか。そりゃあ文字だけでは熱い気配も伝わらない。そこに人の心がない中で会議を続けなきゃいけないわけか。そう考えるとオンライン会議システムも良し悪しだなあ、などと考えを改める僕がいたのでした。

「なんにせよ、マンコは禁止で」

それにしてもK君、マンコに執着するのはもう分かった。禁止ワードにしたいのも分かった。君の気迫も、その存在感のありすぎる気配も分かった。その気になれば僕がアスキーアートでマンコマークを書いて発言しよう。でもな、女子社員がお茶を持って入ってきたのにマンコ連呼はいただけない。彼女、顔を真っ赤にしてるじゃないか。ホワイトボードにデカデカと書かれた「マンコ」にショックを受けてるじゃないか。

マンコマンコと、まるで自分の娘の名前かと思うほどに連呼するK君と、その横で真っ赤になってうつむいている女子社員を見つつ、彼のように熱い気配も大切だけど、もっと大切なのは気配りだよなあ、と思うのでした。

ウチの職場のオンライン会議システムは、チンコは発言できるけどマンコは発言できません。