秒速5センチメートル(Numeri日記より) | ヌメラーのヌメラーによるヌメラーの為のNumeri日記

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おもにNumeriでお気に入りのブログ転載します。Numeri知らない人はゼヒ読んでヌメラーになりましょう。
※私が書いてるのではありませんので悪しからず(^^)/

「ねえ、秒速5センチメートルだって、知ってる?」

「桜の花びらが落ちるスピード」

東京や静岡などに桜の開花宣言が出され、めっきり春らしく、そして温かくなった昨今、ピンク色に彩られた日本人独特な感傷的な気持ちに浸る機会が多くなるかと思います。

常日頃から思うことなのですが、桜というものは、その美しさ、雄大さ、豪快さ、数日で散ってしまう儚さも確かに素晴らしいのですが、その咲き誇る時期が反則に近いんだと思う。誰しもが感傷的にならざるを得ない説得力を持つ大きな要因になっている。

桜の時期といえば、言うなれば卒業入学シーズン、社会人になっても転勤や新入社員の登場などで何かと出会いと別れが多いシーズンだ。この時期ってのはやはり特別で心の奥底に影響を与えやすい。そんな時期に咲き誇る桜だからこそ何か特別な感情と共に記憶に刻まれる。

例えばこうだ。田舎の大学で女子大生としてキャンパスライフを楽しんでいた芳江は、同じ大学に通う高志とサークルを通じて知り合う。他に何の娯楽もない大学、2人が惹かれあうのに時間はいらなかった。

「実は、入学してすぐ芳江のこと気になってたんだ」

「またまたあ」

「いや、ホントだって。大学の入り口のところに桜の木があるだろ。舞い散る桜の花びらの下に芳江がいた。それからずっと好きだった」

「私も……高志のこと……ずっと好きだったよ……」

でまあ、田舎町ですし、お互いに大学近くのアパートで一人暮らしですよ。やることっていったらおセックスくらいしかないですわな。もう朝から晩までおセックスおセックス。そうこうしているうちに高志が留年してしまうんですね。セックスに夢中になるあまり留年とかかっこわりい、とか高志の自虐ギャグも冴え渡ります。

それから数年、桜の花が咲き、芳江は卒業を迎えます。一流企業に内定を貰い、正に門出といった表現が適切なほど誇らしい卒業を迎えた芳江、反面、留年グセがついた高志はまだ2年生でした。最近ではめっきり大学にも行かなくなり、夜ごと歓楽街に繰り出すか、止められた仕送りを補填するためにアルバイトに精を出す毎日。

「いいよな、いいよな、エリート様は」

それが高志が芳江に対する時の口癖でした。その言葉を聞くたび芳江は悲しい気持ちになり、自分は高志のためにならない女だったんだろうかと涙する。それでも芳江は頑張って

「ねえねえ、聞いてよ、高志。今日、ゲシュタポ教授の授業でさ」

と話を振るものの、高志の返答は冷淡なものだった。もう2人の関係は冷え切っていて、ただ惰性で同じアパートに暮らすだけでした。

卒業式。同期の友達は艶やかな衣装に身を包んでいます。晴れ着だったり袴姿だったり、けれども、どうしても気乗りしない芳江はいつもの服装のままでした。奇しくもそれは入学時に着ていた、普段着ではあるけど少しかしこまったワンピース。

「きっと高志は来ないんだろうな……」

桜の木の下で佇む芳江、そこには信じられない光景が。なんと、そこにはスーツ姿の高志が花束を持って立っていたのだ。

「卒業おめでとう、芳江」

「高志、どうして……?」

「おれ、自分が不甲斐ないのを全部芳江のせいにしてた。芳江のせいで進級できなくてってずっと恨んでいた。でも、それは間違いなんだよな。不甲斐ないのは全部自分の責任。桜を眺めていたらそう思ったんだ」

「高志……私のほうこそ、ごめんね」

「謝るなよ、芳江はなにも悪くない」

少し強めの風が吹き、散るには早すぎる桜の花びらが何枚か2人に降り注ぐ。

「あの日、芳江を始めてみた日みたいに戻れるかな。この花びらみたいにユックリでいい、少しづつ少しづつ失った時間を取り戻せるかな」

「わたし、ずっと高志のこと待ってるから」

桃色に彩られた桜の木は、まるで相合傘のように2人を覆っていた。

ていうね、まあ、遠距離恋愛になって3ヶ月ぐらいで高志はパチスロにハマってまた留年、飲み屋で知り合った女とくっつくんですけど、芳江も芳江で入社した大企業のやり手の先輩社員と同棲し始めるんですけど、そいつがとんでもないDV男だったっていう結末を迎えるんですけど、それはまた別の話。とにかく、こういった思い出と重なりやすい時期に存在する桜、そこには否応無しに印象付けられる力が存在するのです。

みなさんも親しい人と別れた記憶がありませんか。別れとはなんともあっけないものだろうと心を痛め、それでも気にしていない素振りで日常生活を営まなければならなかった経験はありませんか。その傍らには冬を抜けて温かくなりつつあった気候と、桜の木がありませんでしたか。

逆に、大切な人や、自分の人生において脇役ではないキーマンと出会った時、その傍らには桜の木がありませんでしたか。その時の風景を思い返すと桜の木があったりしませんでしたか。人と人との出会いと別れを司る桜の木、だからこそこんなにも愛されてるんだと思います。

かくいう僕にもありました。満開に咲き乱れた桜の花びらを見る度に思い出す、胸がキュッと締め付けられてどうしようもない思いに駆られるセピア色で桃色の思い出が。

あれは僕が小学校の時でした。ウチの小学校はイチョウの木と桜の木が自慢の小学校で、その植物群に沢山の野鳥が集まってくるのどかな学校でした。春には校庭に満開の桜が咲き誇り、秋にはイチョウの木から落ちた異臭を放つ銀杏を投げあう銀杏大戦争などが楽しめたものです。

何年生だったか忘れましたけど、4月になって学年が上がり、なんか担任の先生もヒステリックなババアから普通のババアに変わってワクワクドキドキ、これから始まる新学年に期待を膨らませていました。窓際の席だった僕はボンヤリと校庭を眺め、その綺麗な桜の木々を眺めながら何か別の世界にトリップしていました。

「転入生を…」

担任の声がどこか遠くに聞こえつつ、転入生という言葉に敏感に反応、もうすでにニューカマーは登場していて黒板に名前書かれて自己紹介していました。転入生といえばなぜかロクなのが来ないってのがウチの学校の伝統でして、盗みグセのある岩田君とかとんでもない人々を輩出してきた経緯があるので、またとんでもないヤツが来たんだぜ、と今まさに紹介されている転入生を見ると、そこには可憐な女の子が立っていました。

スカートをはいたその子は途方もなく魅力的でした。田舎の小学校でしたので、女の子なんてほとんどジャージとかでしたし、ゴリラみたいな怪力勝る女子が多い中で、どこか都会的で洗練されたイメージを受ける女の子でした。

「はじめまして、○○さくらといいます。よろしくおねがいします」

サクラちゃんか。なんてカワイイ女子だろうか。窓の外に見える桜の木のように艶やかで可憐だ。僕はこの刹那、一瞬で恋に落ちてしまったのです。

しかしまあ、ガキどもなんてどうしようもないもので、ちょっとカワイイ娘っ子がいると皆好きになっちゃうもので、クラスの男子のほとんどがサクラちゃんのことが好きだっていう異常な状態になっちゃいましてね、彼女に親切にして好意をアピールする男子、逆に意地悪するくらいしか愛情表現できない男子と様々、それに嫉妬するゴリラみたいな女子たち、と異常な状態で1年間が過ぎていったのです。

もちろん、ありえないくらい奥手でトゥーシャイシャイボーイだった僕はサクラちゃんと会話することもなく、それどころか近寄ることも出来ず、まんじりともしない想いを抱えて1年間を過したのでした。

そんな折、途方もないニュースが舞い込んできました。もう2月も終わりに近付き、この学年も終わり近付いたその時に、担任のババアから衝撃のニュースが告げられたのです。

「3月下旬に桜満開運動会が開催されます」

ウチの学校は、父兄たちで構成される子供会のトップあたりに運動会キチガイがいたみたいで、なぜか学校主催の運動会と子供会主催の運動会、と年2回の運動会が当たり前でした。普通は5月ごろに「こいのぼり運動会」と題して5月の連休に開催されていたのだけど、それが雨で中止、予備日も雨で中止と呪われているとしか思えない不運続きで開催できないでいた。

その代替案として、気候も温暖になり、それでもってまだ現学年である3月下旬に開催しよう、それならば学校も春休みで開催しやすい、3月下旬に「こいのぼり運動会」はまずいだろう、「桜満開運動会にしよう」と相成ったわけでした。春休みに運動会とか頭おかしい。

さて、運動会当日。桜の花がチラホラ咲いているとはいえ、まだまだ肌寒い中で運動会をさせられる児童たち。全然満開じゃないですからね、どこが「桜満開運動会」だ。しかし、父兄の方はといいますと一緒にお花見もできてこりゃええわい、といった趣で大変賑わっていました。春一番というんでしょうか、強風が吹き荒れる中での開催で、テントなどが紙くずのように吹っ飛ばされていましたが、それでも滞りなく徒競争、リレー、綱引きなどが消化されていきました。

子供会主催運動会の大きな特徴といえば、学校主催とは違い、父兄たち保護者が一緒に参加する競技が多かったのです。どの競技にもうざったいくらい保護者が絡んできてですね、親子の絆、みたいなのをしきりにアピールしてくるんです。

そんな中、うちはクソ貧乏だったので親父は休みなく働いてましたし、母親は体が弱くてそれどころじゃないって状況でして、運動会に両親がやってきたことなかったんですね。今でこそ、ハンディカムのCMとかで子煩悩なお父さんとかが運動会を撮影したりしてますけど、そういうのって現実味がないくらい運動会と両親が繋がらないんです。

昼休憩になると、どこの地域の運動会でもそうだと思いますが、やってきた保護者とシートでもひいて一緒にお弁当を食べる楽しい時間があると思います。「お父さん、僕1着だったよ!」「偉いぞ!」「あなたにて運動神経がいいのよ」「がはははは」みたいな心温まる会話が展開されるのですが、これがもう、両親が来ない児童にとっては途方もない苦痛で仕方がない。

あちこっちで家族団らんが展開されている中で、一人ポツンとシートに座ってですね、たまに担任の先生なんかと一緒に弁当を食べるんですよ。見ると一クラスに数人くらいそういった子がいましてね、悲しきランチが展開される孤独の旅、横見るとウチの弟がいて、毛むくじゃらの体育教師みたいなのとひっそりと弁当食ってて孤児みたいになってた。

でまあ、今年も担任と昼飯食うのか、微妙に気使って嫌なんだよなーって思いつつ用意されたシートに向かうと、そこにはサクラちゃんの姿が。

「ウチは両親とも仕事で忙しいから……」

とかいって寂しそうに弁当を食べてました。ホントね、これは興奮したよ。大興奮だよ。盆と正月が一緒にやってきて、ついでに見たこともない浮浪者風のオッサンが「叔父だよ、元気してたかい」ってやってきてウチの親父に追い払われてたみたいなもんですよ。あのオッサンはそうやって他人の家に上がりこんでは飯食ったりしてるみたい。

そんなことはどうでもいいとして、恋をしていたサクラちゃんとシートの上でお弁当ですよ。もう喋ったことすらほとんどないのにいきなり一緒にランチとかランクアップにも程がある。まあ、担任のババアがいて2人っきりってわけにはいかなかったんですけど、「2人の邪魔するな、心臓発作で死ね」とか思ってたら、本当に父兄に呼ばれたみたいでイソイソとどこかに消え、マジで2人っきりになってしまったのです。

「なんかさあ、春休みに運動会とか頭おかしいよね」

何を喋っていいのか分からず、そんな会話を展開したのを覚えています。するとサクラちゃんはフッと寂しい表情に変わり、こう言いました。

「私は嬉しいけどな」

僕はその意味が分からず、サクラちゃんがかわいすぎて目線すら合わせられないのでシート脇に佇む桜の花を眺めていました。

「そっか、pato君は休んでたから知らないのね、実は私ね、新学年からは千葉に転校することになったの」

たぶん、春休み前の登校最終日なんだろうけど、僕は飼ってた猫が車に轢かれて死んだという理由でショックを受けて学校を休んでいたのです。どうもその時にサクラちゃんの転校が発表されたらしい。なんで人が休んでる時にそんな重大な話をするかな。

「そう、なんだ……」

どうしていいのか分からなかった。それ以上にショックだった。サクラちゃんがどこかにいってしまう。その事実を受け止められないでいた。

「だからね、こうやって最後に運動会ができてよかった。ちょっと寒いけどね」

重苦しい沈黙がシートを包む。周りの喧騒が恨めしかった。もちろん、何も出来ない自分に腹が立ってどうしようもなかった。初めて交わした会話がそんな内容だなんてそりゃないよ。その空気を察したのか察しなかったのか、サクラちゃんは切り出した。

「私は親の都合で転校は慣れてるから。それよりpato君のお父さんお母さんはどうしてこないの?」

パニック状態の僕は、それでもなんとかサクラちゃんと会話を交わす。

「親父は仕事が忙しいから」

「そうなんだ。うちと一緒だね」

サクラちゃんの口ぶりから、彼女の両親はバリバリの商社マン的な感じだった。それは彼女の裕福な感じからも存分に感じ取れた。それとウチの親父が同じ?違う、大きな勘違いをしている。ウチの親父は見紛う事なきキチガイだ。

「これから午後の競技を始めます」という放送と共にやかましい音楽が流れる。それは僕とサクラちゃんが交わす最初で最後の会話、それが終わることを意味していた。

「じゃ、午後からも頑張ろうね」

その時だった。また、サクラちゃんの笑顔が眩しすぎて目を合わせられなかった僕は、フッとグラウンドの隅のほう、道路からの入り口へと目線を逸らした。その瞬間、信じがたいものが視界に飛び込んできた。

「あれは……!?」

強風がグラウンドの砂を舞い上げ、砂煙のようになっている先に薄っすらと人影が見えた。午後の競技の開始を告げるユーロビートみたいな音楽に乗って人影は颯爽と入場してきた。

「あれは……親父!」

なんと、何をトチ狂ったのか、何の気まぐれか、親父は仕事を切り上げて運動会にやってきていた。見ると思いっきり作業着姿で、ガニ股で、この世の全ての不幸を背負ったようなオーラを身に纏って入場してくる。そんな表現を全て超越して簡単にいうと「悪夢の始まり」だった。

僕の姿を見つけた親父は少し早歩きで近付いてくる。そして開口一番こう言い放った。

「おう、来てやったぞ」

来てやったもクソもない。もう来るなよ、ホント。サクラちゃんと感傷的な会話をしてたのになんでやってくるんだ。

「pato君の……お父さん?」

サクラちゃんは明らかに驚いている。ウチの親父はそんな他人の動揺を見逃さない。すぐさまサクラちゃんにロックオンし、逃がさないぜといった体勢で話しかける。

「なんだ、このかわいこちゃんは」

お前はルパンか。かわいこちゃんとか言うな。早くこの場を逃げなくては、そう思うのだけど時既に遅く、なんか親父は僕がオシッコ漏らして泣いた話とかを大変エンターテイメント性豊かな感じで話していた。皆さんも想像して欲しい、自分の大好きな子が、自分の親と話をしているだけでもドキドキ物なのに、その親がキチガイだった時の惨状を想像して欲しい。

「親子で参加、大玉転がし競技を始めます、出場希望者は親子で入場門まで集まってください」

やかましい放送が鳴り響く。このままではマズイ、公園で拾ってきたエロ本を大量に洗濯機の裏に隠してたエピソードとか暴露されてしまう、危機を感じた僕は親父を黙らせるために大玉転がしに一緒に出場しようと持ちかけた。

正直、ここまで悪態をついたけど、本当は嬉しかった。親父が来てくれたことが嬉しかった。やはりいつもいつも担任や知らないオッサンと競技に出るのは嫌だった。一緒に出てくれる人も親切でやってるんだろうからそういうこと言っちゃいけないんだろうけど、それでもその親切が僕の心を苦しめていた。だから、親父と競技に出られることが本当に嬉しく、照れくさくって言えないけど「ありがとう」って気持ちだった。

「大玉転がし出ようよ」

恥ずかしくもあり、それでいて嬉しくもある、そんなくすぐったい感情が入り混じった純真無垢でピュアな気持ちで親父を誘ったところ、

「うるさい、ワシはこのかわいこちゃんと参加する。女の子の方がいいもん。なんて名前?サクラちゃん?おじさんと一緒に出ようか」

とか言ってた。もう死んだらいい。

結局、親父の気概に押されたのか、サクラちゃんも出場してみたかったのか知らないけど、なぜだか恋心を抱いている女の子とキチガイ親父が一緒に大玉を転がすという訳のわからない展開に。

もうね、見るも無残だった。はっきり言って正視に耐えなかった。本当にもう顔が真っ赤になるくらい恥ずかしくて振り返りたくないくらいなのだけど、それでは日記にならないので落ち着いて振り返ってみる。

まず、スタート時から妙にハッスルしていた親父はスタート地点でなんかラジオ体操みたいな動きをしていた。その時点でサクラちゃん苦笑い。

スタートの号砲と共に力いっぱい大玉を押す親父、けれども力が強すぎて紙と張りぼてで構成されていた大玉をいとも簡単に突き破る。赤い玉から親父の下半身が生えていた。サクラちゃん青い顔。もうやめて欲しい。

気を取り直して大玉が破れた状態でスタートする。ちなみに、この時点で他のチームはゴールしていた。逆転とか関係ない。なんか放送で「頑張ってください」とかしきりに言われていた。

ほぼサクラちゃん置き去りでぐおおおおおおと玉を転がし、鬼神の如き勢いで走る親父。逆転すらないのに本気の玉転がし。しかし破れた大玉が災いしてイレギュラー、本部席にダイレクトイン。親父も一緒にダイレクトイン。すごい音がしてた。ガシャーンとか鳴って放送が中断する。行き場のないサクラちゃんがコース上で泣きそうになってた。

ボロボロの親父が玉を転がして本部席からヨロヨロと出てくる。それ、足折れてるんじゃないのって感じで右足がプラプラしてた。笑ってた観衆、一気に沈黙。右足プラプラさせながらゴールに向かう親父、サクラちゃん泣いてた。

まあ、ざっとダイジェストで振り返ったわけなのですが、一言に集約すると「この恋終わったな」って感じで、親父は骨こそは折れてませんでしたがそのまま右足を引きずって帰っちゃいました。

「すげえな、サクラちゃんの親父。ガッツあるぜ!」

それを見ていたクラスメイトが、サクラちゃんの父親だと思って必死のフォローというか、そういう感じで話しかけてましたが、それを受けてサクラちゃんが

「ウチのお父さんはあんなんじゃない!あれはpato君のお父さんだよ!」

と修羅のような形相で必死に弁明しており、それを見て、本気でこの恋終わったな、と痛感した次第であります。

それから数日、最悪の思い出を胸にサクラちゃんは旅立っていったことだと思います。桜の季節にやってきて桜の季節に去っていったサクラちゃん。あれがトラウマになってなければいいが、と今でも願うばかりです。

満開の桜を見ると多くの人が切ない出会いと別れを思い出すと思います。いうなればそれが桜の仕事なのかもしれません。僕もそうで、あの最初で最後だった桜の季節の運動会、桜満開運動会を思い出し、ほろ苦い思い出がギュッと僕の心を締め付けるのです。それは秒速5センチメートルで舞い落ちる桜の花びらのように、ユックリと、それでいて確実に心の中に鬱積しているのです。

ちなみに、足をプラプラさせて大玉を転がす親父も、秒速5センチメートルくらいでした。