最狂親父列伝~拳銃編~(Numeri日記) | ヌメラーのヌメラーによるヌメラーの為のNumeri日記

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※私が書いてるのではありませんので悪しからず(^^)/

子供の頃、モデルガンが爆発的ブームになりました。

なんといっても僕らは男の子ですから、そういった拳銃だとかのハードボイルドな世界にたまらない浪漫を感じていました。拳銃は男の誇りだっていう勢いで、みんなこぞってモデルガンを購入し、近所の公園でバシバシと拳銃ごっこをしたものです。

まあ、このモデルガンというのが、所詮はクソガキが遊びに使うもの、なかなかチープな作りになっておりまして、本格派のオタクお兄さんなどが所有するマニアな逸品とは違い、とても子供騙しなものだったような気がします。

本物の拳銃のように重厚な雰囲気もなく、手に取ってみてもビックリ軽い。プラスチック丸出しのモデルガンは、引き金を引くとパシュトパシュと情け無い音を出してBB弾を飛ばす、そんなものでした。

そんなチャチなモデルガンでも、やっぱり僕ら男の子にとっては浪漫あるもので、皆がこぞってモデルガンを所持し、バシバシと打ち合っていました。男の子なら誰もが一度は通るモデルガン、きっとそんなものなのかもしれません。

友人達がこぞってモデルガンで遊んでいたのですが、もちろん僕の家は貧乏でしたので、僕だけモデルガンを買ってもらえる筈もなく、ただただ呆然と友人達の華麗なガンシューティングを眺めているだけでした。

ゴロゴロと転げまわって空き缶にシューティングする友人

2チームに分かれて戦争ごっこに興じる友人

撃たれて死ぬ真似まで年季の入っている友人

そんな魅惑の拳銃ごっこをいつも眺めていたような気がします。友人達の手に輝く黒光りするモデルガン、それがどうしても欲しくて、いや、どうしても拳銃ごっこに参加したくて、ただただ指を咥えて見ている日々が続きました。

けれども、「家が貧乏だから仕方ない」で引き下がる僕ではありません。例えどんな状況にあろうとも、例えどんなにも曲がった形であろうとも、僕は絶対に欲しいものを手に入れます。そんな子供でした。

ですから、割り箸と輪ゴムを組み合わせてモデルガンを作成し、拳銃ごっこに参加してやろうとも思ったのですが、さすがにそれは心の底から惨めになりそうなので止めておきました。

で、どうしたかといいますと、あれなんですよね。すごくスタンダードな手法で申し訳ないんですけど、お金を貯めて買うことを決意したんですよね。お婆ちゃんや爺ちゃんに貰う小遣いを貯めたりですね、洗濯機の底に沈んでいる小銭を漁ったりですね、弟の貯金箱からちょっとづつパクッたりですね、とにかく血の滲む様な苦労をしてお金を貯めたんです。全てはモデルガンのため、拳銃ごっこのため。

やっとこさお金が貯まった僕は、その金を握り締めてプラモ屋に猛ダッシュですよ。それこそもう、道端にいる乳母車をひいた老婆とか蹴り殺す勢いで猛然とダッシュしたんです。

小僧が握り締めるなけなしの貯金では、一番安いモデルガンの組み立てモデルを買うのが精一杯でした。他の友人達はそこそこ値の張るモデルガンを、それも既に完成済みで組み立てる必要の無い既製品を購入していました。できれば組み立てとか面倒なので、僕もソレが欲しかったのですが、無い袖は振れません。意気消沈しながら一番安い組み立てモデルを購入したのを今でも覚えてます。

さっそく家に帰って組み立てます。

子供騙しのモデルガンとはいえ、そこはやはりちゃんとBB弾が飛ぶもの、それなりに構造は複雑でした。オマケに一番チープなモデルだったのが原因なのか、それとも元々そういうものなのか知りませんが、説明書がひどく不親切でした。

それでまあ、僕も子供ですから、上手く組み立てられずに四苦八苦してたのですよ。もう、ハッキリ言って完成しないんじゃないか、そう思えるほどモデルガンの組み立ては難解でした。

「お!?何作ってるんだ?」

そこにウチのキチガイ親父登場ですよ。圧倒的迫力で、少し酒臭い匂いをさせつつ猛然と僕のモデルガン作りの場に踏み入ってきたのです。

「お!?プラモ作ってるんか!ワシにやらせてみんかい。こいうの得意なんだわ」

そう言って酒に酔った親父は、道端の小石を蹴り飛ばすかのように僕を押しのけると、猛然とモデルガンを作り始めたのでした。

ハッキリ言うと、ウチの親父はこういった工作物を作るのが大の苦手です。それこそ、アンタ、建設業とか営んでるんだろ、それって技術を売りにしてるんだろ、それなのにそんんあ不器用でいいのかよ。と問い詰めたくなるほど下手糞でした。

以前にも、夏休みの最終日、どうしても宿題が完成せずに追い詰められていた僕は、親父に工作を手伝ってもらったことがありました。

親父は何やら竹を炙りながら曲げていき、お面を作っていたのですが、それがもう言葉を失うぐらい下手、弥生時代の人の方が上手いんじゃねえ?と思うほど下手。言葉を失うくらい下手でした。

なんか、当人はドラえもんのお面を作ったらしいのですけど、見るからに貧相なお面で、ほら、ドラえもんって元気一杯でファニーなイメージじゃないですか、なのに親父の作ったドラえもんは凄く元気なかったんですよね。先物商法に騙された直後で人間不信に陥ったドラえもんみたいになってました。ありゃあドラえもんというより顔の青い人だったね。

そんな不器用な親父が僕のモデルガンを作っているのです。それも、僕が死ぬ気で貯めた金で買ったモデルガンを、それこそ僕の全身全霊を込めたモデルガンを、歴史的に工作が苦手な親父が作っているのです。

本当に不安でした。まるで心をレイプされているように不安でした。本当にモデルガンが完成するのだろうか、ちゃんとBB弾が打てるヤツが完成するのだろうか。不安で不安で、オロオロと親父の横で作業を見守っていました。

しかしながら、嫌な予感とは的中するものです。あまりに不親切な説明書のためでしょうか、あまりに親父が不器用だからでしょうか、とにかく思うように作業は進まず、接着剤で着けては剥ぎ、着けては剥ぎ、一向にモデルガンは完成しませんでした。

全く持って進展しないモデルガン製作作業。本来の短気な性格も手伝ってか、次第にイライラしはじめてくる親父。もうどうにも止まらない状況です。

横で見ていた僕も不安になってきて

「あ、その部品はソッチじゃなくてコッチに着けるんじゃ・・・・」

と申し訳なさそうに口を出したところ、

「うるせえ!黙ってろ!気が散るから向こう行ってろ!」

と一喝されてしまいました。ホント、不器用で短気な人って最悪ですよね。

そんなこんなで、僕はモデルガン製作の場から外され、その場を離れることを余儀なくされたわけです。向こうの方ではあまりに思い通りに製作が進まないためか、イライラした親父様が「ガッツン!バッキン!キエー!」とか、とてもプラモ製作とは思えないサウンドを奏でていましたが、もう気にしません。こうなってしまっては全てが手遅れなのです。

「ほれ、できたぞ」

1時間ぐらい経ってからでしょうか、得意気な、まるで何かを成し遂げたガキ大将みたいな顔をして親父がモデルガンを渡してくれました。苦労したのでしょう、手を接着剤だらけにしながら、完成したモデルガンを差し出してくれたのです。

・・・・・なにこれ?

その完成品を見た時の率直な感想でした。なんというか、明らかに箱に描かれている拳銃の絵と違うというか、異形の何かというか、そこにはモデルガンとは思えない何かが鎮座しておられました。

おまえ、コレ、明らかにどっかから持ってきた部品だろ。最初にこんな部品は入ってなかったもの。といった訳の分からない物体が無理矢理接着されていました。まるで翼を形成するかのように意味の分からない部品がガッシリと。頼もしいまでに強固に接着されていました。

おまけにガンの上部には、接着剤をこぼしちゃったのでしょうか、ベロベロになった接着剤の塊が形成されていました。

買って来たモデルガンはそれこそ西部劇だとかそういったものを連想させ、ハードボイルドで男の美学みたいなイメージだったのですが、完成したコレ(もはやモデルガンじゃない)は明らかに近未来の乗り物でした。ガンダムに出てくる乗り物みたいになってました。

「・・・・これ・・・撃てるの?」

せっかく苦労して買って来たモデルガンを異形の化け物にされてしまった僕は半泣きで問いかけるのですが、親父は、

「撃てるに決まってるだろ。それも改造してパワーアップしといたわ。さっき撃ってみたら空き缶を突き抜けたぞ」

とか、嘘か真か知りませんが、得意気に言ってました。得意気になるあまり鼻がヒクヒク鳴っててムカついた。

というか、子供達の拳銃ごっこに持たせるモデルガンなのに、そんな缶を貫通させるくらいの殺傷力にまで高めてどうするのか、明らかに危険じゃないか、下手したら喰らった友達が失明するぞ、と思うのですが、狂ってるウチの親父です。そんなことを言ってるようじゃ何も始まりません。

とにかく、異形の化け物とはいえ、当初の目的どおりモデルガンを手にすることができました。もう、嬉しくて嬉しくて、さっそくその異形のナニにBB弾を詰め込むと、そのままの勢いで大車輪の如く遊びに行ったのです。

いつも拳銃ごっこをやっている空き地。いつもの仲間が楽しそうに拳銃ごっこに興じています。いつもなら指を咥えて見ているのですが、今日の僕は違います。なにせモデルガンを持ってるのですから。

「今日は俺もモデルガンもって来たよ、ほら!」

嬉しそうに仲間に異形の化け物を見せると、明らかに仲間達は「うわ、なんだこれ。これでもモデルガンかよ」という顔をするのですが、根が優しいのでしょうね、それ以上は誰も何も言いませんでした。

それでまあ、念願叶って、ついに拳銃ごっこに混ざることが出来たのですが、それでもやはり心行くまで楽しむことはできませんでした。他の仲間はバシバシとBB弾を撃ってるのですが、僕は気さくに撃つことなどできなかったのです。

「改造してパワーアップしといたわ。さっき撃ってみたら空き缶を突き抜けたぞ」

親父のあの言葉がリフレインし、もしこの異形の拳銃で仲間を撃ってしまったら、下手したら友達の体を貫通して死んじゃうんじゃないだろうか。死なないまでも大怪我するんじゃないだろうか。あの親父のことだ、間違いなく途方も無いパワーアップを施しているに違いない。撃ってはいけない、撃ってはいけない。

そんなこんなでイマイチ拳銃ごっこを楽しめず、ただただ銃を片手に駆け回るだけの時間が過ぎました。

するとそこに、近所に住む中学生がやってきたのです。ちょっとばかり不良で、横暴で、それでいて暴れん坊なことで有名な中学生2人組みが。

「ここは俺達の場所だ、ガキどもはどけ」

そう言うと、彼らは僕らのモデルガンより数段上のエアガンで試し撃ちを始めました。

さすがに、いくらなんでもエアガンを所持する中学生には勝てないですし、彼らが丸腰でも絶対に勝てません。僕らはスゴスゴと中学生に言われるがままに退散をし、空き地を出ようとしました。

その時でした。

「あれ?おまえ、なんか変わった銃持ってるな」

明らかに異形の僕の銃に目をつけた中学生は、僕の手から銃を奪い取ったのです。

「ぶひゃひゃ、おい、これみろよ!なんだよこれー!ムチャクチャ下手じゃんか」

「接着剤がはみ出してるとかそんなレベルじゃねえよな!ぶひゃひゃ。っていうか銃かよ、これ」

親父が作った渾身の銃を馬鹿にする中学生。確かに僕が持ってる銃はすごく下手糞で、意味不明で、明らかに接着剤もはみ出してるとかいうレベルではなく、異形の化け物だったのだけど、馬鹿にされても仕方の無いものだったのだけど。

なんだか無性に悔しかった。すごく悔しかった。

確かに下手糞だけど、親父は下手なりに一生懸命作ってくれたし、僕のために頑張って作ってくれた。僕はそれを誇りに思うし、人の持ってるヤツとは違っててどんなに恥ずかしくても使おうって思ってた。

それをこんなクソみたいな中学生に馬鹿にされるってのが悔しかったし、何より親父自体を馬鹿にされたようで悲しかった。一生懸命プラモを作る親父の後姿が浮かんできて、何だか上手く言えないんだけど、悲しくて悔しくて、1人で泣きそうになってた。

「こんなの銃じゃねえよー」

そういって投げるようにしてモデルガンを返してきた中学生。僕はその時に思ったのです。

「こいつらなら撃ってもかまわない」

親父が改造したモデルガン。缶を貫通するほどの殺傷力を秘めたモデルガン。これで貴様らを打ち抜いて親父の力を思い知らせてやる。

空き地を出る素振りを見せ、中学生から少し距離をとると、僕に後姿を見せてエアガンに興じる中学生に向けて銃を構えました。

撃ってやる、お前らが怪我しても構わない。打ち抜いてやる。親父の力思い知れ。

渾身の力を込めて引き金を引きました。

バシュ!バキバキバキバキボキ!

物凄い音を立てて崩れ落ちる僕の手の中のモデルガン。ありえねー。

一発撃っただけでバラバラに砕け散るモデルガン。ありえねー。

弾なんか前に飛ばない。むしろ後ろに飛んでた。ありえねー。

砕けたモデルガンから排出され、地面の上を踊るように弾んでいたバネだけが妙に印象的でした。

結局、一発もマトモに弾を撃つことができずに天に召された僕のモデルガン。心行くまで遊べないし、バカにされるし、報復も出来ないし、全くいいところ無しじゃないか、などと泣きながら壊れたモデルガン片手に家に帰ると、ちょうど家に来客があったらしく、酒を飲んで上機嫌な親父の声が玄関まで漏れてきて

「ウチの息子がモデルガン作ってくれっていうかなあー、作ったんだけど難しくてなー。途中で接着剤がなくなるし。仕方ないから米粒でくっつけておいたわ、がはははははは」

とか話してました。米粒て。

あんたさー、学研の付録じゃねえんだから、いくらなんでも米粒で接着はないだろ。そりゃー、一発でバラバラになるわ。

やっぱ狂ってる、ウチの親父は狂ってる。そう思った事件でした。

ちなみに、涙ながらに事の顛末を親父に話したのですが、その時には叔父が我が家に来ていて、その人が現役の刑事だったのですけど

「そんなに悔しいなら、こんど署から本物の銃を持ってきたるわ。中学生のエアガンなんて目じゃねえぞ、なにせ本物だから」

とか、酒に酔って上機嫌で言ってました。

間違いない、ウチの叔父も狂ってる。