ワキワキマイフレンド(Numeri日記) | ヌメラーのヌメラーによるヌメラーの為のNumeri日記

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おもにNumeriでお気に入りのブログ転載します。Numeri知らない人はゼヒ読んでヌメラーになりましょう。
※私が書いてるのではありませんので悪しからず(^^)/

郷ひろみのサインが怖い。

世の中には色々な人がいるもので、性的嗜好など個人間の好みが色濃く反映される分野においてはそれこそ多種多様な「好み」が存在する。女性のつむじを見るだけで異様に興奮する男性や、女性の鼻毛に興奮する男性、自ら女装して町を練り歩くことに性的興奮を覚える男性など色とりどりの装いだ。

僕の同僚に山本君という人がいる。彼はハンサムで仕事もできるし、なんか爽やかだし、いい匂いがするし、金の匂いをプンプンさせているという大変なカーニバル状態。女子社員なんかにも大人気でなんか子宮がドキドキするとか訳の分からないことを言って大興奮するぐらいのナイスガイなんです。そんな彼と会社のトイレで一緒になったんです。

小便器で隣り合いながら、「最近どうよ」「ああ、なんか上手くいかない、残業ばっかだよ」とか用を足しながら会話していたんです。僕は笑顔で会話しつつもイケメン死ね、僕よりイケメン全員死ね、イケメンにだけ感染する出血熱が大流行しろ、とか考えていたんですけど、そうするとね、なんか見ちゃうじゃないですか、チロッと隣りの山本君の大砲はいかがなものかって感じで覗き見るじゃないですか。それこそパトリオット級のすごいものが装備されていたら、イケメンで仕事もできてパトリオットかよって凹むのは目に見えてるんですが、それでも気になって見るじゃないですか。

するとね、山本君、ツルッツルッなの、本来なら密林かジャングルかamazon.co.jpかってほどに茂ってるであろう場所が見事にツルッツルなの。陰毛全くナッシング。中学の時に陰毛が全く生えてないことを苦に自殺をしかねない勢いだった田村君という子男がいて、その彼が思いつめちゃって、ハゲ親父の育毛剤だかなんだか、サクセスみたいなのを陰部に噴霧して、「焼け死ぬ」と悶絶してた時に見たような、そんなツルッツルの陰部が意気揚々と存在しとるんですよ。

僕はそれを見て思いましたね、ああ、山本君は陰部を剃ったりするのに異常な快感を覚えるんだ、おそらく女性にそういった無垢な陰部を魅せつけて恥ずかしい気持ちになるのもプレイの一環ですし、こうやって同僚にそれとなく見せ付けるのもプレイの一環なんだと、だって山本君、こっちみてニヤリと笑っていたもの。

あんな完全無欠ナイスガイの山本君がツルツルチンコを好むなんて、ほんと人ってのは分からないもので、嗜好ってのはトリッキーで分からないもの、本当に「好み」っていうのは人それぞれなんだなあと思ったのです。

それと同様にして「恐怖」という分野でも人によって様々な傾向が存在します。皆が共通して怖れるもの以外にも、その人だけが特別怖れるもの、他の人にとっては何てことない物なのに、その人だけは異様に恐怖する、そんな事象があるのだ。

例えば尖ったものを異様に怖がる先端恐怖症、例えば狭い場所を異様に怖がる閉所恐怖症、ちょっとメジャーな高所恐怖症、対人恐怖症なんてのもあるくらいだ。恐怖という分野においても趣味や嗜好のように激しい個人間格差があることは容易に想像できる。

かくいう僕も、普通の人ならなんてことないのに異様に恐怖を感じるものがあって、先端恐怖症の人が先が尖った物を恐怖に感じるようにとにかく恐ろしい、それが郷ひろみのサインだ。あえていうならば郷ひろみサイン恐怖症だ。

もう郷ひろみのサインが怖くて怖くて仕方がない。泣きたくなる。これはなにも誇張だとかブラフとかそういったレベルのお話ではなく、本当に怖いのだから仕方がない。

有名な落語の噺の一つに「まんじゅう怖い」というものがある。怖いものはないという若者が「まんじゅう怖い」と言い出し、あいつを怖がらせてやろうと周りの仲間が金を出しあって饅頭を買ってくる。若者は「旨すぎて怖い」と言いながら饅頭をペロリと食べてしまうというお話だ。怖い怖いといいつつそれを望むブラフでもない。郷ひろみのサインが欲しくて怖いって言ってるなら立派な精神病だ。あと、全然関係ないけど、この「まんじゅう怖い」にならって大学生の時に同級生の女の子に「おっぱい怖い」って言ったら工事現場においてあるコーンで殴られた。

とにかく、なぜ僕は郷ひろみのサインが怖いのか。これをよくよく考えてみると、どうやら幼少期の体験が少なからず影響しているのではないかと思い至った。

子供の頃、ウチの近所には誰もが怖れる廃屋があった。鬱蒼とした木々に囲まれ今にも朽ち果てそうな木造二階建て。全ての窓は頑丈に雨戸が閉めてあったが、それすらも朽ち果てており、その先には全てを飲み込むかのような闇が広がっていた。

もちろん、何も娯楽がない田舎町にそんなものがあると話題になるもので、いつしかその廃屋は「幽霊屋敷」だとか「一家心中があった屋敷」だとか「一家惨殺の館」などと真偽不明な噂話が飛び交うようになっていた。

そんなワンダーなスポットが近所にあると、当然ながら子供たちの間では話題騒然で、街の外れにあった怪しげなラブホテル、ホテル白鳥と並んで2大ワクワクスポットだった。いや、ワクワクを通り越してワキワキくらいだった。

「おい、幽霊屋敷いこうぜ!」

近所の公園でサッカーボールを使った野球、それもキックベースとかじゃなくて本気でサッカーボールを投げて金属バットで打つという頭が沸いてるとしか思えないスポーツをやっていると、ガキ大将的立ち位置の友人が提案した。

「やべえよ、あんな怖いとこいけないよ」

そうやって弱音を吐くことは仲間内での負けを意味する。アイツは弱虫だぜみたいなことになって一気にメンツを失い、ことあるごとにバカにされて発言権を失う。最終的にはジュース買いに行かされるパシリとかになって次第に疎遠になり、いつの間にかあまり一緒に遊ばなくなって、気付いたら仲間達はみんなブスのヤンキーとかと付き合ってるのに自分だけ1人、みんなどんどん童貞とか捨てていっちゃって、久しぶりに会ったら「なに、お前まだ童貞なの?」とか言われちゃって「守ってんだよ!」と苦しい言い訳、で、いつの間にか同窓会にも呼ばれないという事態になることは目に見えています。クソッ!

とにかく、ガキ大将以外の全員が本当は怖いし行きたくないんだけど弱虫と思われたくないから言い出せない、みたいな感じで渋々と廃屋探検に乗り出すことになった。真夏の暑い中、自転車を駆けて問題の廃屋を目指す。照りつける太陽が眩しくセミの声がうるさかった。

廃屋に到着すると廃屋を取り囲む雑草たちは夏の日差しを受けて青々と茂っていた。まるで怪奇な建物を覆い隠すかのごとく、僕らの背丈ほどありそうな名も知らない雑草が天に向かって伸びていた。

自転車を降りて一歩踏み出す。夏真っ盛りだというのにこの周囲だけ少し薄暗く、温度すらも下がったように感じた。

「よし、いくぞ」

ガキ大将が血気盛んに歩き出す。僕らはその後ろをついて歩いた。雑草を掻き分け、青臭い草の匂いに囲まれながら歩くとものの数分で廃屋に到着した。

「これが噂の幽霊屋敷・・・」

いつも噂していた廃屋だったけどこんなにも間近で見るのは初めてだった。おそらくガキ大将も他の友人もそうだったのだろう、廃屋の持つ禍々しき迫力に圧倒され、しばし沈黙することしかできなかった。

「と、とにかくいくぞ」

ここまで来て怖いからやめよう、なんて言いだすことは仲間内での敗北を意味する。できることならブルってるところなど見せたくない。全員が同じ気持ちだった。心の中で逃げ出したいと切望しながらも友人に弱ってるところを見られたくないという想いだけがなんとかその場に留まらせていた。

しかし、そんな中にあって生粋の怖がりで夜一人でトイレに行けなくて、あまりに怖いもんだから誰かについてきて欲しくて、親父や母さんを起こそうとしたんだけど起きなくて、弟も起きなくてで仕方なく半分ボケた爺さんについてきてもらって、ボケてた爺さんは僕がウンコしている間に深夜徘徊っていうんですか、フラフラと外に出ちゃって軽トラに轢かれかけて大変な騒ぎになったっていう経験があるほど怖がりな僕ですよ、僕だけは思いっきり「怖い」という気持ちが勝ってしまい、もうなんでこんな場所にいるんだか分からなくなっちゃいましてね、それどころか腹が立ってきて

「人の家に勝手に入るのはよくない!」

と、よくよく考えたらすごく当たり前のことを言って怒り出してました。まあ、怒りにかまけて事実を有耶無耶にし、自分が弱虫であることをなかったことにしようという浅ましい考えでした。

「なにいってんの。あんな幽霊屋敷に人が住んでるわけないだろ」

しかし、僕らはあまりに幼すぎた。この日本においては全ての場所、全ての建造物に所有者や権利者が存在する。誰のものでもない場所なんて存在しなく、例え幽霊屋敷であっても廃屋であっても必ずや所有者が存在するのだ。しかし、僕らにそれは理解できなかった。幽霊屋敷なんだから勝手に入っていいだろう、そんなガキ大将の提案により選択の余地なく足を踏み入れることになった。

まず、幽霊屋敷の周囲をグルリと回る。さすが幽霊屋敷と呼ばれるだけあってその貫禄は十分。なんか裏手のほうにアヒルのオマルが朽ち果てた格好で捨ててあり、普段の僕らなら「オマル!オマル!」とクラスの尾丸君を古代の人々が生贄を捧げる儀式みたいにもてはやしたりするのだけど、そんな余裕すらなかった。アヒルのオマルのオーラすら禍々しく、まるで魔界の鳥のような悪辣な表情にすら見えた。

「やっぱやばいって、やめようよ」

もう弱虫だって思われてもいい、早く家に帰りたい、僕はそんな一心で集団の一番後ろを歩きながら何度も呟いていた。しかし、こうなってしまった少年集団ってのは恐ろしい、いくら僕がやめようと言っても耳を貸さなかった。

「あそこから入れるぞ」

一つだけ朽ち果てた雨戸が外れている部分があり、そこから易々と幽霊屋敷内部に入れそうだった。その先には深い闇が広がっており、間違いなくホラー映画などでは入ってはいけないという警告っぽいBGMが流れるレベル、もう我慢ならないってレベルで怖かった。

「俺は入らないから」

とは言ったものの、他の面々はズカズカと土足で上がっていく。そうするとこの怪しげな場所に自分ひとりだけが残されてしまうという事実だけが浮き彫りになり、そんなの耐えられない!と仕方なく友人の後に続くことにした。

中に入ると、まずヒンヤリとした湿った空気を感じた。多分廊下みたいな場所なんだろうけど床板かが腐っていて所々穴が開いていた。

「もうやめようよー、帰ろうよー」

僕は1人だけ弱虫全快で意見するのだけど、皆は床を踏み外さないように注意して先に進んでいく。しばらくすると、廊下の正面に障子張りの襖が姿を見せた。障子張りといっても、その障子は全てがベリベリに破れており、まるで家庭内暴力をする荒んだ息子が破った、みたいな状態になっていた。

「マジヤバイって、何か出たら責任取れないって!」

この時の僕は何をどう責任取るつもりだったのか定かではない、それだけ家に帰りたかった。一刻も早くこの場所から離れたかった。

「いいか、開けるぞ!」

そんなのお構い無しにガキ大将が襖を開ける。どうやらその先は居間みたいな場所になっているらしく、朽ち果てた机の上に物が散乱し、さらには床にも散乱、その全てが前の住人の生活感が感じられる物だった。

今思うと、おそらく前の住人が何も持ち出す余裕もなくこの、家を逃げ出した夜逃げ同然の状態を思い浮かべる、特に怖くも何ともないのだけど、当時の僕らは違った。その残された生活感が、この現場で一家惨殺があったという噂話とリンクしてしまい、もう恐怖でどうにかなりそうだった。

「もう無理だって、やばいって、きっとここで人が殺されたんだよ」

ビビりまくっている僕がそう言うと、仲間達の表情が強張った。

「とにかく周囲を探せ、死体とかあるかもしれない」

ガキ大将がそう提案する。んなもん出てくるわけないのだけど、至って真剣な僕らはビビりながらも必死で散乱している毛布だとかを捜索する。戸棚を空けたりとかタンスを開けたり押入れを開けたりと、やってることは中国人窃盗団みたいなもんだ。

「もうやめようよ、これって泥棒だよ、帰ろうよ」

すごう乗り気じゃない僕は至極真っ当なことを言いながらあちこちを漁る仲間達を見守っていた。ふと視線をやると、押入れの隅にあるダンボール箱が目に止まった。

もう年月が経過しすぎて風化しかかっているダンボール箱が散乱しているゴミゴミとした物体の中にあって燦然と輝いているように見えた。なんであんなに気になったのか分からない、とにかく、あのダンボールの中身を見なくてはならない、そんな義務感を感じた。

ビクビクしながらもユックリと近付いてみる。ダンボールにはマジックで「たいせつなもの」と手書きされていた。何が大切なんだろう、不思議に思った僕はダンボールを手に取ろうとする。風化してベロベロになった隙間からはダンボールの中身がちょっとだけ見えるようになっていて、何か写真の切れはしのような、おそらく何か人物が写ってる写真のような肌色の何かが見えた。いよいよ箱を開けてみようとダンボールに手をかけた瞬間だった。

「ギャーーーーー!」

ガキ大将が大声で叫ぶ。それも尋常じゃないレベルの悲鳴だ。それを合図に僕らは蜂の子を散らすように逃げ出した。今短距離走のタイムを測定したらとんでもないタイムが出るんじゃなかろうかって勢いで、転げるようにして廃屋を飛び出した。

もう廃屋が見えなくなるくらいのところまで全速力で逃げ、息を切らせながらガキ大将に尋ねる。

「何か見たの?」

「手が、手だけが宙に浮いていた」

ガキ大将は顔面蒼白だ。やはり禍々しき何かが出たのだろうか、手だけが宙に浮いてるなんて信じられない怪奇現象だ。僕らは恐怖に震えるのだけど、他の友人の証言ですぐにそれは勘違いだったと分かる。

「ああ、もしかして手袋が干してあったやつじゃない?俺もアレ見て一瞬驚いたけど・・・」

それを受けてガキ大将も

「そういえば母ちゃんが便所掃除に使う時につけてるやつみたいだった」

という始末。結局、内心かなりビビッていたガキ大将が見間違えて悲鳴を上げたんだろうという結末に落ち着いた。それに怒ったのは僕だった。

「冗談じゃない、手袋の見間違え如きで悲鳴上げやがって、このクソ弱虫が!おかげで逃げ出してきちゃったじゃないか!幽霊なんているわけないだろ、もう一回戻るぞ!」

僕には確信があった。逃げ出す前、僕が手にしていたダンボール、少しだけ中身が見えたダンボール、あの一部だけ見えた肌の色に「大切なもの」と書かれた注意書き、そして押入れに隠す周到さ、全てを総合するとあの中身はエロ写真に違いないと確信したのだ。エロ写真、エロ本、そんな類のインタレスティングな物品があのダンボールに入っているに違いない。そう確信していた僕は一刻も早くあの屋敷に戻りたくて仕方なかった。

「早く戻ろうぜ!」

少年時代の僕らにとって、エロ本やエロ写真の類は何よりの宝物だった。親兄弟より大切で掛け替えのない物だった。それだけに早く戻りたくて仕方がなかったのだけど、すっかりブルってしまったガキ大将をはじめとする友人たちは

「いや、やめようよ、もうあそこには戻りたくない」

と弱音を吐く始末。どうしようもないもやしっ子どもだ。

「いいよ、じゃあ俺1人でいってくるわ」

と屋敷に向かって行こうとすると、頼むからやめてくれと必死の形相で止められた。

その日はそれで終わり、手袋を幽霊と見間違えたガキ大将の弱虫伝説だけが後世に語り継がれることとなったのだけど、僕の頭の中はあのダンボールに入ったエロ写真のことばかりだった。今のように子供だって簡単にエロ画像や何かをインターネットで見られるなんて時代じゃなかったし、もうあのダンボールだけが最後のエロ玉手箱だった。絶対に行って入手してやる。僕の決意は相当のものだった。

しかしながら、それから数日すると、どうやら保護者会か何かで「子供たちが廃屋に近付いて危険」という話が持ち上がり、子供たちが近付かないよう暇な老人が見張っていよう、ということになった。何度か1人で廃屋に向かうものの、老人に見つかって追い返される、そんな状態がしばらく続いた後、僕は決意した。

「夜に行こう」

見張りの老人達の夜は早い。周囲が暗くなれば見張りなんて誰もいなかった。夜になったらこっそり家を抜け出し廃屋に侵入、そこでエロ写真を回収する、もちろん1人で任務遂行する、そんな計画を立てたのだ。

いよいよ実行の日。親父が酒を飲んで寝静まるのを待つ。あらかじめ物置から持ってきておいた懐中電灯を手に二階の窓から屋根伝いに家を抜け出し、夜の街をヒタヒタと歩きながら廃屋に向かった。見張りもおらず、満月に照らされた雑草を掻き分けて廃屋に到達した。

夜に見る廃屋は昼間の7倍くらい不気味で恐ろしく、本気で何か出てもおかしくない貫禄を身に纏っていた。しかし、そんな恐怖もエロ写真の前には霞んでしまう。裸の女性がアッハーンとなっている写真が待っているはずだ、僕は身震いする気持ちを抑えて朽ち果てた雨戸のところから廃屋内に侵入した。

ギィ・・・

一歩、また一歩と歩くたびに朽ち果てた板が軋む音がする。真っ暗な闇の中を手探りで歩く。普通の精神状態なら恐怖でどうにかなりそうだったけど、なぜかエロ写真のことを思うとギンギンに勃起していた。廊下を進み、襖の近くまで来た時、僕は異変に気がついた。

人の話し声がする。

数人の人間が楽しそうに語らっている声が聞こえるのだ。それでも聞こえないフリをして先に進むと、破れた障子の所に到達する、すると、その破れた穴から光が漏れているではないか。

「やばい、本気で幽霊だ!引き返さないとマズイ!」

恐怖でオシッコちびりそうだったのだけど、「幽霊」と「エロ写真」を真剣に頭の中で天秤にかけた時、僅差でエロ本が勝った。慎重に慎重に、声の主に気付かれないように進んでいき、障子の隙間から中を覗き込んだ。そして僕は、そこでとんでもない光景を目撃することになる。

そこには不良達がいた。幽霊だったほうがまだマシだったんじゃないかと思える奇抜な髪型にファッションをしたお兄さん達が4人ほど廃屋の居間に陣取り、ビニール袋を口に当ててシンナーを吸っていた。

「あわわわわわ」

とんでもないものを見てしまった。もう現代で言うチーマーどころの騒ぎじゃないワルです、チーメストですよ。チーメスト。チーム、チーマー、チーメスト、もう最上級、最上級のワル。そのワルがシンナー吸ってるんですよ。

普通なら一目散に逃げ出して何も見なかったことにしてしまうんですが、この時はどうしようもないくらい腹が立ちましてね。そこにエロ写真があるということは幼い僕にとって聖域、サンクチュアリなわけです。その聖なる場所でシンナーを吸うお兄さん達が許せなかった。僕の聖なる場所を汚されたような気にすらなった。

「お兄さん、僕と一緒に遊んでよ、ウフフフ」

身を隠し、お兄さん達に聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で何度も話しかける。さあ、驚いたのはお兄さん達ですよ。深夜に廃屋でシンナー吸ってたら子供の声が聞こえてくるんですから。

最初は、1人の人が僕の声に気がついたみたいで、仲間に向かってシッ!と促します。そこで全員が気付いたみたいで凍り付いてました。で、1人のお兄さんが「うわーー!」と悲鳴を上げて逃げ出すと、それを合図に全員が物凄い勢いで走って逃げていきました。なんか、モヒカンみたいな頭したお兄さんはラリっていたのか逃げる時に8回くらい転んでた。

よし、これでシンナー不良たちも追い払った、深夜の廃屋の恐怖にも打ち勝った、まるで一仕事終えた充実感に包まれながら居間に入る。散乱しているゴミに注意しながら歩を進め、問題の物置に到達する。

「大切なもの」

そう書かれたダンボールはやはりそこにあった。よかった、不良どもに荒らされているかもと心配したが大丈夫なようだ。まるでビックリマンチョコを開ける時のようなワクワク感というかワキワキ感を感じながら蓋に手をかける。

ついにエロ写真を入手する時が来た。エロ写真が手に入ったらどこに隠すかが問題だ。生半可な場所じゃあすぐに親父に見つかってしまう、よし、エロ写真が手に入ったら洗濯機の裏側に隠そう、そこならそうそう見つかるまい、でもダンボールいっぱいのエロ写真を隠せるかなあ、全部は無理だからおっぱいが写ってるやつだけ持ち帰るのもありかも!などと様々な想いが交錯する中、ついにダンボールの蓋を開けた。

郷ひろみのサイン

そこには威風堂々と郷ひろみのサインが鎮座しておられた。ご丁寧にもサインの横には物凄い決め決めの表情で写る郷ひろみさんのプロマイドも添えられており、どうやらそれが箱の隙間から見えていたようだった。

確かに「大切なもの」だろう。郷ひろみさんのファンだったと推察される前の住人の方にとっては大切なものだったのだろう。でもな、さすがにこの仕打ちはあんまりだ。

エロという原動力で恐怖に打ち勝ってここまできた僕だったが、そのエロが郷ひろみのサインに置き換わった今、この真っ暗な恐怖の廃屋を1人で突き進んで家に帰らなくてはならない自分の状況に、死ぬほどの恐怖を感じ泣きだしたのだった。

この時の体験がトラウマとなり、まあ、日常生活を営んでいてそうそう郷ひろみのサインに出くわすことなどないのだけど、未だに彼のサインを見るとあの時の落胆と恐怖が思い起こされ、ついでに命からがら家に帰ったら抜け出したことがばれていて親父に殴られたことを思い出す。それだけに郷ひろみのサインが怖い郷ひろみサイン恐怖症だ。

ホント、人の好みと恐怖ってのは色々あって、その原因も様々だよなあ、などと呆然と思い出しながら小便をしていると、冒頭の山本君が話しかけてきて

「なんでツルツルかって思ってるでしょ?」

「いや、郷ひろみのこと思い出してた」

などと噛みあわないトークを展開、すると山本君が

「こうやって剃るとジョリジョリして気持ちいいんだって、陰毛って剛毛だろ、ヒゲなんて目じゃないくらいジョリジョリするんだって」

「いや、ジョリジョリしても嬉しくないし」

「いいから触ってみろって、ホラッ!」

「わー、やめろって!おまえ、小便したばっかだろ!いや、してなくたって触りたくない!」

「いいからいいから、ほれほれ!」

と、イケメンなだけじゃなく腕力まで素晴らしい山本君によって陰毛の辺りのジョリジョリを8分21秒に渡って触らされたのでした。同僚に触ってもらって気持ちよくなるとかどんなプレイだよ、ホント、好みと恐怖だけは人それぞれだぜ、そしてその原因なんて突き詰めればなんてことないんだ、と思ったのでした。男性のツルツルの陰部が怖くて怖くて仕方ない。

ちなみに、あの廃屋のその後だけど、さらに「子供の声が聞こえる」「遊んでー、遊んでーって子供が出てくる」という恐ろしい噂が追加され、地域住民の恐怖の的だったのだけど、その原因もよくよく考えたらどうしようもないことが原因なのだった。