彼は何かと電報を使うことが大好きで、電話で済むようなことも電報で送ってくることがあります。様々な情報が溢れるこのIT社会、その辺を歩いている青っぱな垂らしたようなクソガキですら携帯電話でカチャカチャとメールを送る時代なのに、それでも電報を送ってくるのです。
今時、電報なんて誰も使いません。せいぜい結婚式や葬式の時に使うくらいで、一般生活レベルではほとんど使わなくなっています。せいぜい、闇金融業者が嫌がらせでお悔やみ電報を債務者に送るくらいです。それなのにウチの親父は電報。誰が結婚したでも、誰が死んだでも、誰が債務者でもないのに電報を送ってくるのです。もう、嫌がらせとしか思えない。
ある時は、こんな電報が僕のアパートに届きました。
| ゲンキカ
チチ |
いや、電報で問いかけられても困りますがな。
何かこだわりがあるのか、それともそれしか打てないのか知りませんけど、全部カタカナで打たれても困ります。最初これ見た時何かの暗号かと思ったからな。どっかの国際的犯罪シンジケートに狙われる父が盗聴やら監視の目をかいくぐり、死ぬ思いで僕にだけ分かる暗号を送ってきたのかと思ったからな。
まあ、不景気で仕事がなく、死ぬほど暇で仕方ない親父のイタズラなんですけど、イタズラならこっそりやればいいのに、ご丁寧に差出人のところに「チチ」なんて書いてくる彼の自己顕示欲が何とも腹立たしかったりするのです。
他にも、
| レンラクセヨ
チチ |
いや、電話してくればいいじゃない。
| クロ ニゲタ
チチ |
ウチで飼ってた猫(クロ)が家出したみたいです。それを電報で伝える心理が分かりません。
| ゼイムショ キタ
チチ |
また査察が入って泣いてるんですか。
とまあ、月一くらいのペースで内容のない電報が届くんですよね。青い紙に包まれた電報が。これはもう、親父のヤツが僕に構って欲しいのか、それとも壮大な嫌がらせなのか分かりませんけど、とにかく精神構造が腐ってるとしか思えない、ウチの親父は。
そんなこんなで、新天地に引っ越してきて初めての電報が親父から届いたわけなんですが、
| チチキトク スグカエレ
チチ |
になってました。なんで危篤なはずのチチから電報が来てるんだよ、もしかしてこれは自分は奇特だっていう自己アッピールか?と思い、ポストの前でガックリとうなだれるしかありませんでした。
誰か、ナチュラルに親子の縁を切る方法とか知りませんか。