「ストリーヴィル」の想い出
短い期間に類似のネタが続くのも何なので、旧WEB日記の記事から、ジャズを聴き始めた頃の想い出。
ちょっと長いので、読む前に一曲。
ちなみに、聴きながら読んでも、たぶん文章が入ってこない。 ( ˙▿˙ )
YouTube:
Bill Evans Trio "My Foolish Heart"
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2002-06-08
「ストリーヴィル」の想い出
北国の初夏らしい爽快な日。この季節になると、或るジャズ喫茶のことを想い出す。
20年ほど前、北大病院前通りの木造ビルの二階に、「ストリーヴィル」という名のジャズ喫茶があった。建物の脇の入り口から木の階段を駆け上がり、左に折れるとすぐにその店のドアがある。中に入ると、幾つかのソファ、そして壁際の棚に渋い金色の管楽器。通りを見下ろす側には、昔ながらの上下開きの木枠の窓があり、窓際に置かれた花の鉢に午後の穏やかな日差しが当たっていた。
店のオーナーは、ほっそりした物静かなタイプの女性だった。当時30代前半くらいだったろうか。...彼女がどういう人だったのか、私は何も知らない。コーヒーをオーダーする時以外はほとんど話を交わさなかった。客は私一人という事が多かったのだが。...常連と言うほど足繁く通ったわけでもなく、ごくたまに、暇になると自転車でそこに出かけ、休日の午後の一・二時間をそこで過ごすのだ。
初めてその店に行った頃、ジャズとSFに興味を持ち始めていた。とは言っても、ジャズの方は、ジェリー・マリガンの「ナイト・ライツ」くらいなら何とか耳がついていけるが、チャーリー・パーカーにはお手上げという程度だった。...ただ、私は、その店でジャズ演奏の音のシャワーを浴びながら、ソファに体を預けて寝るのが気に入っていた。そこでは、ピアノやドラムやサックスの音が、まるでマッサージのように気持ち良く疲れを癒してくれた。そうして一寝入りした後、冷めたコーヒーを飲み干してしまうと、オーナーが熱い昆布茶を出してくれる。昼下がりの通りの様子や窓際の花を眺めながら、昆布茶をゆっくりと飲む、孤独で幸福な時間。
しかし、その終わりは唐突だった。どんな季節だったか思い出せない。たぶん夏の終わり頃。いつものようにその店に行くと、オーナーは留守で、代わりに若い男の人がカウンターにいた。オーナーはどうしたのかと聞くと、病気だという答えが返ってきた。...
その何週間か後、また店に行った。今度は入り口のドアが閉じていて、中では何人かの人がひそひそと深刻そうに話し合っているようだった。
その後、店を訪れる余裕の無いまま日々が過ぎ、そして、別の用事でたまたまその場所を通りかかった時、「ストリーヴィル」が閉店したことを知った。いつの間にか、店のあったところがレストランに変わっていたのだ。...ただ、歩道の「ストリーヴィル」という蛍光灯スタンドだけは、しばらくの間、以前のようにそこに置かれていた。
“ストリーヴィル”というのは、ジャズ発祥の地ニューオリンズにあった歓楽街の名前であり、ボストンの有名なクラブの名前でもあり、また、レコードのレーベル名でもある。この喫茶店の名前がどのようにして名付けられたのか、とうとう聞くことができなかった。
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YouTube:
Chet Baker "Alone Together"
YouTube:
Gerry Mulligan "Night Lights"

