遺伝子というバトンを繋ぎ合った仲間としての親子 | ひらめさんのブログ

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メランコリー親和型鬱病者で理屈好きな私の思うところを綴ります。

放送大学「進化心理学('23)」(テレビ授業科目案内) (youtube.com)

昨年の私の収穫のひとつに放送大学の「進化心理学」があった。心の在り方にマジョリティとの齟齬をしばしば感じてきた私には、それが遺伝子によるものだとする仮説に、自己肯定感を与えてくれる気がしたからである。

 

ファミリーヒストリー 草刈正雄~初めて知る米兵の父97歳伯母が語る真実とは - NHKプラス

この「ファミリーヒストリー」という番組も、遺伝子の繋がりを垣間見ることの出来るものかもしれない。但し、プライバシーや個人の名誉にも関わるものも含むので、ネガティブな面については語りにくいところはあるだろう。その意味での不十分さによって特に観てきた訳ではなかった。

 

忘れられてしまうだろう人たち 何故”あいのこ”は差別語になったのか | ひらめさんのブログ (ameblo.jp)

だが、以前このブログで混血孤児というものを取り上げたことがあり、草刈正雄氏がそうであったことは知っていた。そこで年末に再放送されたものを観ることにしたのである。

 

正雄氏本人の”あいのこ”性も今日では被差別対象となる感覚が分からなくなってきているが、日本を焦土と化した敵国人の血が混ざっているということを意識しなければならないだろう。そして番組では語りにくかったであろう母スエ子さんの心中を想像してみたいのである。

 

正雄氏は米兵との婚外子であり、そのスペルさえ定かでないロバート・トーラという父親の消息を探ることも大変だったようだ。何故なら、既に他界しているスエ子さんの知っている事実さえ、自らの決断を鈍らせまいとしたのか、息子に語ることをしなかったからである。

 

あいのこの多くは米兵相手の街娼(パンパン)を母とするものだったが、スエ子さんは当時の女性の花型の職業であるバスの車掌だったのだ。スエ子さんが街娼たちを差別することはなかっただろうが、アイデンティティとしては全く違うのである。だが、属性から見られれば同一視されてしまったことだろう。

 

”人ひとりしか渡れないような小橋で自分に道を譲ってくれた”という馴れ初めなどは恋愛ドラマのワンシーンのようだ。酒と欲に目の眩んだ街娼たちの経験とは違う大切な思い出なのだ。彼、ロバートさんは心通じ合うもののある大切な人なのだ。しかし、どんな事情からなのか彼はアメリカに帰国したまま帰らなかったのである。

 

そして”彼は朝鮮戦争で亡くなった”とする物語を作ってひとりで正雄氏を育てる決心をするのだ。自分の思い出と息子に流れる血を幸あるものとするべくしてである。それが成就したことは誰もが知ることだろう。

 

一方これも憶測に過ぎないかもしれないが、父ロバートさんの心中も想像してみたい。彼の家系は軍人が多く、南北戦争では南軍側にあったということは番組でも語られていた。日本人にはなかなか肯定しにくいものだが、奴隷制度を是としていた側である。

 

そんなコミュニティの中で、ロバートさんは少し前まで敵国の有色人種と恋愛関係を持ったことの意味を考えてしまったのではないだろうか。私には”ふさぎ込んでいた”という彼の脳裏にあったものはこんなものだっただろうと思えるのである。

 

それにしても、正雄氏と若かりしロバート氏はよく似ている。もちろん飛び切りのハンサムではあるのだが、優しさ、誠実さのようなニュアンスが似ていると感じるのだ。正雄氏の様子もそれが嬉しく、どこか誇らしげにも感じられた。何故なら、それは大事な遺伝子を受け継いでいる証拠のようなものだと思うからである。

 

蛇足ながら、私には5歳で別れたまま22年半会わないままになっている子供がいる。彼の名前で検索すると画像を含めいくつかヒットする。サービス精神が旺盛なこと、イラストのキャラクターのニュアンス、そして彼の近影にやはり嬉しくなってくるのだ。

 

親バカというのは単に自慢出来ると言うだけじゃなく、遺伝子がしっかりと受け継がれていっている満足感・安堵感のことなのかもしれない。