日本語教師は、多文化に触れるとても楽しいお仕事ですが、日本人として考えさせられることもたくさんあります。
先日、留学生のアルバイトの面接に立ち会い、アルバイトが決まったと書きましたが、
アルバイトに応募しようとして断られた外国人のケースについてお話ししたいと思います。
これは10年以上の前のことです。
日本語教室に参加されていたブラジル人のMさんは、留学生の夫と二人でアルバイト募集が掲示されているスーパーへ、アルバイトの募集について聞きに行ったそうです。
スーパーに到着すると、誰に聞いてよいのかわからず、たまたま商品を並べていた定員さんに尋ねたそうです。
その方はすぐにバックヤードのドアの奥に入り、誰かを呼びに行ったそうです。
その後、店長さんのような方が、彼ら二人のところにやって来て、顔を見てすぐに、「アルバイトの募集はもう終わりました。」と言ったそうです。
私もそのスーパ―では、アルバイト募集の掲示を見ていたので、募集していることは知っていました。
仕事内容も総菜の製造や、弁当のパック詰めやレジ等色々な業務の募集が掲載されていました。
朝から夕方までの間の4時間のパートの仕事でしたので、彼らが訪ねて行ったその時に、急に全ての募集が終わるはずがないと思いました。
しかし、私はその場にいなかったので、本当のところはわかりません。
Mさんの夫は、日本語をかなり流暢に話しますし、Sさんも日常会話は問題ありません。
Mさんは外国人だから断られたのだろうと泣きながら私に電話をしてきました。
そのスーパーでは、アジアからの留学生がたくさんアルバイトをしていましたので、外国人なら誰でも雇ってもらえると思い、聞きに行ったそうです。
そのときアルバイトをした留学生は、中国や韓国等のアジアからなので、話さなければ外国人だとはわかりませんが、二人は目鼻立ちがはっきりしていて、背も高く、すぐに外国人だとわかります。
それで、差別されたのではないかと、泣いていました。
来日して差別されたのは、その時が初めてだったので、とてもショックだったそうです。
日本人が海外で「アジア人だから」という理由で差別されたという話をよく聞きますが、それと同様のようなケースのような気もしました。
彼女の憔悴している姿を見ていると、何としてでも彼女のアルバイトを探さなければと、友人たちに声をかけ、アルバイト先を探しました。
幸いにも、友人の一人が倉庫内での作業の仕事をしていて、その勤め先ではパート職員を募集していることがわかりました。
すぐにその会社の責任者に連絡をしてもらいました。
その友人のお蔭で、面接をすることが決まりました。
面接に合格するにはためには、どうしたらよいかと、その友人と色々考え、友人の仕事の内容とその仕事で使う日本語を教えてもらい、面接の日までに覚えてもらうことにしました。
面接の日には私も同席しました。Mさんの努力の結果、店長さんの質問にすぐに答えられましたので、
面接の最後に、「今日のお昼から仕事をしてください」とすぐに合格の返事をもらいました。
その留学生の奥さんは日本で、初めて、アルバイトができるようになったと、とても喜んでいました。
自宅に戻ると、国のお母さんに電話で報告していました。
私が住んでいる地方では、現在では少しづつ外国人の数は増加していますが、10年以上前は、アジア人以外の外国人をあまり見かけませんでした。
雇用する側も、突然来られたアジア以外の外国人を見て、驚き、どのように対応してよいのかわからなかったのかもしれません。留学生側も事前に電話をして行った方がよかったのではとも思いました。
よくわかりませんが、ブラジルでは問題なかったのかもしれませんが....
しかし、顔を見ただけで、話しもせずに、すぐに断るスーパー側の姿勢に、少し悲しくなりました。
二人ともとても責任感があり、思いやりのある、素敵な方です。
せめて彼らと少しでも日本語で話し、彼らの日本語運用能力や人となりを見て欲しかったと思いました。
現在は二人とも他県で就職し、お子さんと生き生きとした生活をしているようです。