『アクアスラッシュ』は、カナダ発のスラッシャーホラー映画で、舞台はとある水上公園。


高校生たちの卒業パーティーが賑やかに開かれる中、ウォータースライダーを使った前代未聞の惨劇が巻き起こります。


主人公ジョシュと彼のバンド仲間たちは、水着美女に囲まれ、酒とドラッグとケンカ、恋愛に明け暮れながら卒業パーティーを大はしゃぎで過ごします。


ところが、公園には過去に「人が死んだ」との噂があり、不穏な空気が漂っています。


そこへ、何者かがウォータースライダーに巨大な刃物を仕込み、楽しいはずのレースイベントが突然地獄絵図へと変わるのです。



感想

本作の序盤は、典型的なB級青春映画のノリ。


登場するのは、いつ卒業できたのか不思議なほど奔放でだらしない若者たち。


パーティーはお酒とドラッグ、ハメを外す行為が飛び交い、ビキニ姿の美女が画面を賑わせるなど、ホラーに入る前に充分に「ゆるい」雰囲気を堪能できます。


バンド演奏があったり、元カノとの再会があったりと恋愛沙汰も満載。とにかく全員、自由奔放というか、良く言えば人生楽しんでる、悪く言えば典型的なおバカキャラだらけです。


ここは完全に肩の力を抜いて、B級ホラーのお約束を楽しむのが正解です。


映画が本領を発揮するのは、終盤20分に突入してから。数組に分かれたウォータースライダーレースが始まり、ここでスラッシャー映画ならではの過激な惨劇が爆発します。


ウォータースライダーに仕込まれた“刃物”が、滑ってくる若者たちを容赦なく切り刻む──このアイデア一本勝負の潔さは、むしろ清々しいほど。


血しぶきがプールを真っ赤に染め上げていくビジュアルと、パニックに陥る人々のカオス感。


グロ描写はなかなかのもので、耐性がない人には注意が必要ですが、「どこまでやるんだ!?」と思わず目を離せなくなる疾走感、緊迫感がこの映画最大の見どころです。「バカだな〜」と呆れつつも、つい引き込まれます。


その一方で、ストーリーには妙に複雑な人間関係や買収劇、大人たちの陰謀めいた背景なども用意されています。


しかし、これらの伏線はあまり丁寧には回収されず、登場人物もやたらと多く、複雑な割には「全部はどうでもよくなってくる」という独特の味わいがあります。


B級作品特有の雑さ、アバウトさも魅力の一部と考えるなら、ツッコミどころ満載の展開も含めて楽しんでしまったほうが勝ちだと思います。


この映画の監督は、決して潤沢な予算を持っているわけではないですが、限られたリソースの中で発想を詰め込んだ「アイデア勝負」を仕掛けてきます。


スライダー殺人というワンアイディアを、とことん潔く、ほかにはない形に仕立てて見せきる手腕は、B級映画の監督ならでは。


尺が短い(約70分)にもかかわらず、観客をしっかり引き込むサービス精神とテンポの良さは大したものです。


『アクアスラッシュ』は「水着美女」「グロホラー」「バカ騒ぎ」、そんな要素にピンと来る人なら迷わず観て損はない1本。


ウォータースライダーでバラバラになるショック映像を真顔で撮る作り手のセンスに思わず笑ってしまうし、血まみれのプールを見て「くだらなすぎて最高」と膝を打ちたくなります。


ストーリーや人物の掘り下げには一切期待せず、とにかく「くだらないアイディアを本気でやりきった映画」だと思って見るのが吉。


こんなバカ映画に出くわせてよかったな、という心地よい脱力感も含めて、B級ホラー好きなら一度覗いてみてください。


本作、良くも悪くも人を選ぶタイプの作品です。


でも、ウォータースライダーの入口を見るたびに思い出し笑いが止まらなくなる、そんな唯一無二の“記憶に残る”ホラーでした。


2025年8月現在

プライムビデオ、U-NEXT、Rakuten TV、TSUTAYAディスカスにて配信中