映画『孔雀王』は、1988年に日本と香港の合作として公開されたアクション・ファンタジー作品で、荻野真による人気漫画を原作としています。
物語はチベットの遺跡発掘現場から始まり、妖女・羅我と長年封印されていたアシュラ(グロリア・イップ)が甦ることから、世界を揺るがす壮大な戦いが幕を開けます。
高野山の退魔師・孔雀(三上博史)は、師匠・慈空(緒形拳)より地獄門の復活を阻止するよう命じられ、東京から香港、チベットへと激しい戦いに身を投じます。
孔雀の元には祈祷依頼にやってきた冴子(安田成美)、地獄門を追って日本に来た僧侶コンチェ(ユン・ピョウ)など、多彩なキャラクターが集結し、悪を封じ込めようと奔走します。
戦いの最中、アシュラが地獄門の鍵として覚醒し、世界は闇に包まれる危機を迎えます。
孔雀とコンチェは自身の出生の秘密を知り、それぞれが運命や葛藤に向き合いながら、邪悪な魔族の陰謀に立ち向かいます。
九篭城(九龍城)やラマ寺院での法力バトル、恐竜が暴れ出す東京の奇怪な場面など、香港映画の特撮と日本の退魔アクションが融合した独特の世界観が魅力です。
映画『孔雀王』を久しぶりに観てみると、改めて80年代ならではの雰囲気や特撮のよさが際立っているなと感じます。
冒頭、チベットの遺跡からアシュラが復活するシーンでは、異国情緒たっぷりのロケーションや神秘的な音楽が物語への没入感を高めてくれるんですよね。
香港ロケの空気感もかなり本格的で、日本映画と香港映画ががっつり組んだ時代の熱気を感じます。
孔雀は、いかにも“退魔師”という役柄でありながら、現代的な軽さもちらっと見せていて、意外と親しみやすいキャラクター。
祈祷依頼を受けに来た冴子との軽妙なやりとりや、タクシー運転手と値段交渉するシーンなんかは、予想以上にコミカルで、「香港や日本でごちゃまぜに生まれる空気感ってこういう感じなんだな」と面白かったです。
冴子が妖怪の存在を全く信じていなかったり、途中で巻き込まれてしまうあたり、物語のテンポも良く、繰り返し観ても飽きないパートが多い気がします。
戦闘シーンや法力バトルは今見るとかなりレトロですが、九字護身法を唱える場面やダイナミックな特撮アクションは、「昔の東映ヒーローもの」っぽい魅力があって素直にワクワクできます。
東京のデパートで恐竜展の恐竜が暴れ出すパートも“何でもあり”感がすごくて、ジャンルの枠を外して楽しめる作品だなと思いました。
九篭城(九龍城)でのバトルもスケール感があって、80年代の香港映画のカオスなパワーと日本の退魔アクションがしっかり融合しているように見えました。
ただ、全体の物語展開は結構駆け足なので、初見だと「何が起きてるの?」と思う人もいるかもしれません。
キャラクター紹介や出生の秘密もミステリー要素たっぷりで、双子設定の重さや「悪魔の子として生まれた苦悩」など、意外と深いテーマにも触れています。
今観ると、特殊効果やロケ地の使い方、音響、衣装のチープさも含めて「80年代映画の味」そのもの。
妙な熱気やコミカルさに満ちたアクション、そして予想以上にドラマチックな展開がクセになって、何度観ても新鮮さがあります。
この『孔雀王』は「和製退魔アクション×香港映画」の珍しいコラボが生み出したごった煮エンタメ。懐かしい映像美とポップな展開、コミカルな人間関係、そして異国ロケの熱量がギュッと詰まっていて、当時の特撮ファンや漫画原作好きにはぜひおすすめしたい一作です。
今でも色褪せないパワーと、ちょっと不思議な明るさと闇が共存する空気感、観るたびに80年代へタイムスリップできる作品です。