映画『インビジブル』は、2000年に公開されたアメリカのSFホラー映画で、コロンビア ピクチャーズが製作を手がけました。
ストーリーは、天才的ながら傲慢な科学者セバスチャン・ケインが、政府の最高機密プロジェクトのリーダーとして、人間を透明化する研究に携わるところから始まります。
彼は動物の透明化実験と復元に成功し、さらなる名声を求めて自分自身を実験台にして人体実験に踏み切り、ついに世界初の透明人間となるのです。
しかし透明化が成功した後、今度は元に戻すことができないという新たな問題に直面します。透明人間となったセバスチャンは、次第に自身の存在や欲望がエスカレートし、徐々に暴力的な行為に傾倒していきます。
その狂気は身近な同僚たちにも向けられるようになり、研究所は一気に恐怖の舞台と化します。映画では、徐々に人間性を失い暴走していく主役の危険性や、透明人間という存在がもたらすサスペンスがリアルに描かれています。
また、人体が「皮膚→筋肉→骨格→透明人間」と消えていく独自の映像表現も当時話題となりました。
感想
『インビジブル』は、一見よくある透明人間ものと思いきや、意外とサスペンスとスリラー要素の強い、張り詰めた緊張感のある作品という印象です。
主人公のセバスチャンは、ただ頭が良いだけでなく、非常に自分勝手でクセのある人物として描かれていて、最初からどこか危うさを感じさせるキャラクターです。
自分の名声や欲望のためならリスクも顧みず突き進む姿は、最初は天才の自信にも見えますが、徐々にその方向性が狂気じみていくのが怖いところです。
透明化した自分をコントロールできず、傍若無人に振る舞い始める過程はスリルたっぷりで、観ている側も「見えない恐怖」への不安を体験することになります。
特に研究所という閉鎖的な空間のなかで、誰がどこにいるのか分からない状況や、「いつ、どこから襲われるか分からない」緊張感がよく出ていました。
キャスト陣のリアクションも説得力があって、透明人間を相手にすることの絶望感や恐怖がリアルに伝わってきます。
映像面ではCGを駆使した姿消失の描写がとても印象的で、人体が段階的に透けていくシーンは今観ても説得力があります。
一方で、サスペンスだけでなく、生々しい暴力描写や倫理的なテーマもあり、人間が「姿が見えなくなることでどれだけタガが外れるのか」という怖さを突き付けてきました。
全体として『インビジブル』は、単なる特殊効果頼みではなく、「人間の本性」に踏み込んだ作品だと感じます。犯人の正体が最初から明かされている分、サイコサスペンス的な駆け引きや、追い詰められる側の絶望感に重きを置いた作りになっているのも特徴です。
「透明人間」という題材の持つ孤独や狂気、そして人間関係のひずみまで描いていて、エンターテインメントとホラーのバランスが取れた面白い映画でした。