Vinland Saga
2.奴隷編
抜け殻になったトルフィンがケティル農場で奴隷として働く間、「兄弟」エイナルと出会って再び生気を取り戻していく物語で単行本8~14巻がこれにあたる。
ヴァイキング編からトルフィンを見ていた読者は、奴隷となったトルフィンを見てがっかりしてしまったに違いない。
トルフィンが「ならず者の一員」から「日本のサラリーマン」に、ありがたくない進化を遂げてしまっていたのだ。
まさに「奴隷」そのもの。
立場が上である「客人」(ならず者)に対しては、彼らがどんなに不条理でも、まさに日本のサラリーマンの鑑ともいうべき慇懃な態度をとり、無茶な仕事でも黙々と、延々と、仕事をこなし続ける。
本来ならばここで、周囲からも、あるいは読者からも完全に見捨てられそうなところである。
しかし幸村誠さんがそれで終わらすはずがない。
その期待のみを糧にして8巻から14巻を読み進めた。
結果、トルフィンはとうとう「トールズの子」になった。
武力で理想を追求するクヌート1世に対し、「俺は、逃げる」と言い放ったのだ。
なるほど「逃げる」か。
日常あまり意識されることはないが、客観的に言って人類は核兵器による絶滅の淵に立っている。
世の中には「世界なんかなくなってしまえばいい」と本気で思っている人がたくさんいる。
彼らがそう思うに至った理由には同情すべきものもあるのかもしれないが、問題は、彼らの手に核ミサイルのボタンが渡ってしまえば、まさに究極の暴力によって、人類は破滅するということだ。
我々はそこから「逃げ」なければならない。
その逃亡先は「核の廃絶」か「宇宙」ぐらいしか、思いつかないけれど。
以上