こんにちは、M&A会計士の澤村です
今日は、先日の商事法務に載っていた最高裁で出たとある株式評価を巡る判決について
事件の詳細は商事法務とか見てもらったらいいのですが、乱暴にまとめると、
・子会社株式を持っている少数株主から、当該子会社株式を買うにあたって、
・外部の専門家からの評価書を得たのだけど
・実際の買取価格が、その評価書の示すレンジより高い値段だった
という事案でして、その高い値段になった背景としては、
・その少数株主は事業上の重要な取引先で
・その株を持ってもらうに際しては、こちらからお願いしていたので
買い取りに際して、その少数株主で譲渡損がでるような価格だと、取引関係に影響が出るので
・少数株主の取得原価で買い取ったが、その取得原価は、第三者の評価レンジを上回るものだった
というやつです。
高裁で、そうした価格で買い取った取締役に責任ありとの判決が出たのですが、最高裁では、経営判断の範囲内であり、問題なしとの結論になりました。
で、私、個人的な感想としては、
妥当な判断じゃなイカ![]()
と思うわけでして
株式評価の専門家がこう書いちゃうと身も蓋もないのだけど、専門家が算定した価格に絶対従わないといけないかというと、そうとは限らないよねっていう判決として重要な判決だと思います。
じゃあ、専門家による評価に意味がないのかというとそういうわけじゃなくて、専門家の見方なども参考にしつつ、十分な検討を重ねたうえでの経営判断であることが重要なのだと思います。要は、十分な検討を行ったかの判断材料の一つとして専門家の評価も参考にしたかというのがあるのであって、専門家の評価にしたがうことが、十分な検討をしたことを意味するわけじゃないということです。
ちょっとここからは、判決の趣旨からはずれてしまう議論になるのだけれど、そもそも論として、絶対的に正しい評価なんてものはなくて、あくまで、こうした視点で見ると、こんな価格になりますよという性質のものであって、たとえば、コストアプローチ、インカムアプローチ、マーケットアプローチによる評価結果がバラバラになるのもよくあることだし、各アプローチごとの評価をレンジで出していたとしても、それはあくまである程度の目安なんですよね。たとえば、DCFで割引率を±1%のレンジで出すのと、±0.5%のレンジで出すのと、どちらが正しいかといわれても、答えがあるわけじゃないんですね。
さらにずれた議論をすると、評価結果はピンポイントで出すべきか、レンジで出すべきかという議論もあって、ピンポイント派の論拠として、「レンジで出してしまうと、取締役の意思決定の範囲を拘束してしまって、スムーズな意思決定の妨げになる」という意見がありまして、それはそれでなるほどなと思うわけですが、かといって、全然違う視点の評価であるコストアプローチとインカムアプローチの算定結果を平均することに意味はあるのか?というのが、レンジ派の反論でありまして、今回のようにレンジから外れてもOKの判決が出ると心強いなとも思ったりするわけです。
もっとも、今回の判決は、取引先との今後の関係との比較衡量という観点があるわけで、会社全体のビジネスにおけるディール自体のサイズの問題もあるでしょうから、なんでもかんでもレンジ内から外れてOKと言っているわけではないのですし、私自身もあり得ない価格での取引を肯定するものでもありません。全体的な比較衡量の問題とするならば、従わないことによる影響も程度定量化するというのも大事なんじゃないかなあとも思います。難しいけどw
しかし、こうした問題、専門家としては判例の積み重ねが欲しいと思う反面、訴訟が多いのも嫌だなと思う今日この頃でゲソ。