こんにちは、M&A会計士の澤村です。


「疑う」ことの難しさの続きです。


ロジカルに疑うことが大事と述べましたが、このロジカルに疑うためには、提示されたデータから疑いを抽出するだけの分析力が必要です。


監査における分析というと、増減分析とか、回転期間分析とか、比率分析といった具合の、いわゆる分析的手続を思い浮かべるかもしれませんが、こうしたテクニカルな分析は、ある程度、有効ですが万能ではありません。


分析の第一歩は、監査対象のことをよく知ることであり、一番大事なのは、監査対象が行っているビジネスモデルとその市場環境の理解だと思います。


何をどこからいくらで仕入れて、どんな付加価値をつけて、誰に、どうやって、いくらで売るのか?という基本的理解からスタートして、


販売先はどのような顧客で、どんな競合がいて、対象会社はどんな状況にあるのか?といった3C分析


PESTや、5 FORCE、SWOTといった定番のフレームワーク分析も役に立つでしょう。


また、対象会社の株価はどのような状況にあり、経営陣は株式市場からどのようなプレッシャーを受けているか?とか。対象会社にはどのようなノルマがあり、営業担当者はどのようなプレッシャーを受けているのか?

といった、対象会社の「人」に関する分析も重要だと思います。


そうやってビジネスを理解してはじめて


「この会社の顧客ターゲットからして、このような相手からこんな金額の売上が上がるのはおかしい」


だとか、


「この会社が属する市場の環境からして、これだけ売上が増加するのはおかしい」


といった「ロジカルな疑い」を持つことができるわけです。



「ロジカルな疑い」を持つだけの「綿密な分析力」。これも、監査によって身に付くスキルだと思います。