こんにちは、M&A会計士の澤村です。
組織再編に関する反対株主の株式買取請求において、配当可能利益制限がないということは、次のような事態を引き起こす可能性があります。
帳簿純資産は100億円で、株式時価総額は400億円(つまりPBR4倍)の会社が100%子会社の合併を検討。
対象会社株式の30%を保有する株主がある合併に反対するも、他の70%の株主が賛成し、合併が成立。
反対した株主が、株式買取請求。買取請求額は合併前の株価ベース。
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自己株式の買取総額は、400億円×30%=120億円
自己株式は、会計上純資産のマイナスとして扱う
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株式買取後の対象会社帳簿純資産=100億円―400億円×30%=△20億円。
つまり、反対株主の株式を買い取ることで、帳簿上債務超過になってしまう可能性があるということになります。
(いずれも子会社の純資産=子会社株式で、抱き合わせ株式消滅差益が発生しない前提)
帳簿上債務超過になるだけならまだしも、一気に時価総額の30%にもの資金流出が発生するとなると、会社の資金繰自体がまわらなくて、自己株買取倒産なんて、しゃれにならない事態も発生しかねないと思うのですが、いかがでしょうか?