こんにちは、M&A会計士の澤村です。
今回は、ちょっとマイナーネタですが、某アパレルメーカーにおける合併反対株主による株式買い取り価格決定請求についてです。
とある上場アパレル会社が、95%近く支配する連結子会社と簡易合併した際に、当該上場アパレル会社の発行済み株式の5%近くを所有する株主が株式買い取り請求をしてきて、価格がおりあわず裁判所に買い取り価格の決定申請を出したというニュースです。
正直?なニュースです。
訴えたのが消滅会社側の株主ならレックスとかカネボウ事件みたいな展開は理解できるのですが、存続会社側なんですよね。
じゃあ、合併で既存株主としての権利が希薄化するのかと思いきや、当該合併で新たに発行される株は、0.001%にすぎないんで、ハッキリ言って影響なし。
となると、相対での自己株買取に持ち込んで、みなし配当課税にして、受取配当金の益金不算入をねらったということでしょうか?
受取配当金の益金不算入というのは、法人税法上、法人が受け取った配当は、半年以上25%以上出資する会社からは全額、そうでなくても半額は税金がかからないという制度です。
自己株式の買い取りというのは、法人税法上、剰余金も含めた株主の持ち分の分配と扱われているため、資本金等に対応するものを超える部分は配当とみなされるとことになります。
そのため、法人株主の場合、保有株主を市場で売却するよりも、対象会社に買い取ってもらう方が、税務上有利な場合がありまして、組織再編における少数株主保護目的である反対株主の買取請求が、本来の制度趣旨とは違った使われ方がするのではとの懸念があったのですが、その懸念のケースなのでしょうか?
改正後の事例をググってみますと2例ほどありました。
過去の2例は、いずれも100%子会社を吸収合併するときの、存続会社株主からの請求で、いずれも買取価格は両社協議のみで決定しています。
今回は、決定請求まで起こすって、何があったんでしょうね?
ちなみに、その過去の事例のプレスで面白い表現がありました。
「今回の合併は、100%子会社の吸収合併であり、(中略)、合併による資本金の増加や新株発行はなく、純資産や業績に与える影響は軽微であります。その一方で、会社法第797条第1項において、吸収合併時に際しては、被合併会社が子会社であるかにかかわらず、その合併に反対する株主は、公正な価格で株式の買い取りを請求することが認められております(以下、略)」
会社としては、「なんで買い取らなあかんねん!」っていいたいところなんでしょうね・・・。