こんにちは、M&A会計士の澤村です。


前回エントリーに対して、業界関係者と思われる方2名から、コメントいただきました。


mogoさん、ymoさん ありがとうございます。<(_ _)>


他力本願じゃいけないので、


「ただの計算機だったら、開示する意味はあるのか?」


に関する、自分なりの考えを述べたいと思います。



この問題は、①第三者機関が算定することの意味と②それを対外的に開示することの意味


の二つの論点が含まれると思います。


まず①について述べたいと思います。


①については、実は、ymoさんのコメントにもあるように、取締役の善管注意義務云々の議論以前の問題として、依頼人自体が、バリュエーションができないということが結構あるという現状があります。


かつてのEVAブームや、減損会計の導入によって、以前と比べると上場会社でDCFやWACCの概念が広まってはいますが、ちゃんとしたDCFができて、かつ、社内の投資判断として有効に機能している会社というのは、上場会社でも(あくまで感覚的にですが)1割くらいじゃないでしょうか?そういう意味で、先日の原弘産が第三者期間の算定なしにDCF評価したという開示は驚きだったわけです。


公認会計士でどうかというと、先日の公認会計士試験でDCFが出たそうですが、実務としてちゃんとこなせる人というと、これも1割以下だと思います。


概念としてDCFは理解されているとは思うのですが、実際にまともなDCFをできる人は、たぶん監査部隊にはほとんどいなくて、FASチームのかつ、バリュエーションチームというかなり限定された人ということになります。


投資銀行となると、まあ、さすがにこの世界は、DCFは共通言語というか基礎知識なんで、エグゼキューションチームは、アソシエートでもできるような体制になっていますが、各社多くても数百人くらい。


ざっと見積もって、日本全体でDCFが使いこなせる人の数というのは、5000~1万人くらいというのが私の推計です。


ですから、ただの計算機だとしても、それなりの付加価値はあるわけです。



しかし、



そんなものに付加価値を求めているようじゃ、バリュエーターとしてあまりにも悲しい!(T_T)


というこだわりもあるわけなんです


が、


mogoさんご指摘のとおり、


事業計画が所与の場合、バリュエーターとしての付加価値は割引率くらいにしか見いだせないというのも事実なわけです。



昔、実現可能性の低い事業計画が出てきた時、割引率において実現可能性リスクを考慮するという方法が行われていた時期もあったのですが、これもロジカルじゃないとの批判があるわけなんですね。結局、そんなの鉛筆舐め舐めじゃないかっていう問題なわけです。


あと、時価純資産と、DCFと、類似会社比準の結果を加重平均して、調整するという方法も、かつては、あったのですが、これも、加重平均割合の理屈が付かないわけです。


ある意味、評価者の判断≒評価者の恣意性という可能性があり、悩ましい問題なわけです。


というわけで、最近のトレンドとしては、事業計画等の諸条件は所与のものとして、プロとして計算したうえで、


DCFでいくら、EBITDAでいくら、時価純資産でいくら


という結果だけ示して、


あとは、取締役が判断してくださいね。


というレポートが出来上がるわけです。