こんにちは、M&A会計士の澤村です。
コメントをいただいたので、念のため申しあげておきますが、私がいいたいのはあくまで、
いい加減なバリュエーションだったから逮捕
というのだったら、大変遺憾だということであって、もし田中氏が当該事件のスキーム全体像を知っていたうえで、それに加担したというのであれば、それを擁護するつもりは毛頭ありません。もし、そうだったとしたら、市場の番人たる公認会計士としてあるまじき行為であって、許されるものではないと思います。
ただ、現在報道されている限りにおいては、何を持って逮捕容疑としているのかがいま一つよくわからないですし、そもそもスキーム全体を知っていたかどうかなんてのは、私にはわかりません。
○●○●○●○●○●
で、昨日の続き
DDとバリュエーションの関係について
です。
最近新聞では、DDというと資産査定みたいに書かれているのですが、一個一個の資産がいくらだみたいに個別の評価をやっているわけではありません。一部誤解があるようなので、念のため申しあげておきますが、
DDとバリュエーションは別個のものです。
そして現在、ある程度の規模の案件となると、DDとバリュエーションは別のチームでやるのが通常です。
DD対象範囲については、クライアントのニーズに応じて決まるものなので、BSだけを見る場合や、PLを見ても実績だけといったケースもあります。DDで事業計画まで見に行く場合もありますが、
常にDDで事業計画の検討を行っているわけではありません
じゃあ、バリュエーションチームが事業計画を見るのかというと、昨日書いたとおり、クライアントのニーズに応じた対応をするので、
ただの計算機と化すバリューションもあります。
もちろん明らかに不合理(ロジックミス、計算謝りなど)な計画であれば、その修正を依頼することはありますが、見通しが楽観すぎるからといって、バリュエーターで勝手に修正するものではありません。
実現可能性がないと思われるような事業計画であれば、その旨をクライアントに伝え、修正を要請するというのが、バリュエーターのあるべき姿だとは思いますが、修正をするかどうかは経営判断の問題です。
事業計画は経営陣のコミットメントであって、責任を負わないものが事業計画を作っても、それはなんら意味をなさない
からです。
また、一部に、DCFは、評価者が将来収益を予想して、それを基に評価をするものとの誤解がありますが
バリュエーターは、予想屋ではないし、ましてや占い師でもありません
アナリストが将来収益を予想してDCFを行い、それを基にレーティングをつけるということはありますが、M&AにおけるDCFとレーティングにおけるDCFは意味合いが異なってきます。
また、コンサルティング会社が事業計画の作成支援を行うということもありますが、これはあくまで、作成支援であって、コンサルティング会社は支援はしますが、事業計画自体を作るわけではありません。
そうなってくるとM&Aのバリュエーションのもとになる事業計画はいい加減なものとなるのでは、と不安に思われるかもしれませんが
通常、
売り手は高く、買い手は低く評価したい
という方向で交渉が進むので、楽観的すぎる事業計画だと買い手は買ってくれないし、保守的すぎる事業計画だと売り手が売ってくれないってことになって、
結果的に交渉によって合理的な価格になっちゃうわけです。
で、今回の事件の何がまずいかというと、買い手も売り手もグルになっていたという異例のケースであって、通常ありえないわけです。