続きです。


この事件で、論点となる部分をいくつか考えてみると


①田中氏は、大阪第一企画の価値がないことを知っていてバリュエーションを行ったのか?(故意か?)


②故意はなくとも、事業計画の実現可能性を検討しなかったのは過失か?


③デューディリジェンスを実施しないバリュエーションは問題か?


④DCF一本のバリュエーションは問題か?


⑤故意か過失があったとしても、バリュエーション契約の当事者であるicf以外の第三者に対して責任を負うのか?


⑥たとえ、いい加減なバリュエーションレポートをだったとしても、それが当時の証取法上の偽計として刑事罰の対象となるのか?


⑦当該取引は、粉飾にあたるのか?(偽計と粉飾の違い)



といった感じでしょうか?


①については、当事者でないのでわかりません。


過大評価だとしても8億円程度のディールですので、報酬も多くて数千万円の実入りしかないので、ちょーさんがブログで擁護されているように、彼にとっては、タカが知れた金額のようにも思えます。一方、港陽監査法人はこのディール以外にも同社のバリュエーションを複数やっているそうなので、トータルで見るとバカにならないようにも思えます。


ただ、


自分としては実現可能性はないけれど、買い手がその計画に基づいたバリューを出すというのだから、買い手が思うバリューとして価値を計算してあげる(ちょーさんの言葉を借りるならただの「そろばん」になる)という業務もあるわけであって、


ただの計算代行としてのバリュエーターは、それだけで逮捕されてしまうのか?


というのは、大問題なわけです。


バリュエーションにもいろいろな業務スタンスがあるわけであって、


会計監査と違って、一般に認められた評価業務基準なんてものはないわけです


しかも、バリュエーションレポートは基本的に、取締役の意思決定の参考資料であって、株主の意思決定資料じゃないんですよ。

そりゃ、確かに開示資料ではバリュエーション結果が書かれていますが、最終的な取引価格はM&A当事者間で決めるものであって、バリュエーターが決めるわけではない。


したがって、どんなスタンスでのレポートを要求するかは、取締役の善管注意義務の問題であって、業務を受ける側は依頼内容によって、業務範囲を確定するわけです。


だから、当然のことながら事業計画の実現可能性の検討を行わないバリュエーションや、DD自体も実施しないバリュエーションというのも、依頼者がそれでいいというのなら、評価者としてはそれ以上の業務の提供のしようがないわけです。


そもそもバリュエーションは、取締役のために実施する業務であって、フェアネスオピニオンを出すのでは無ければ、会計監査のように対外的にその価格が適正であるとの意見を表明する業務でもなんでもないわけです

フェアネスオピニオンだったとしても、その意見表明にあたっては、事業計画の実現可能性を検討したわけではないとディスクレームを入れるのが通常)


というわけで、②や③を実施していなかったとしても、それ自体に非があるわけではない。


第一、最近のDDレポートは・・・って言い出すと長くなるので、続きは明日。