1. M&A会計の基礎~企業結合会計(取得と持分の結合の判定その3)

先日のブログで、持分プーリング法に持ち込みたくて合併比率をいじるという誘惑にかられるのではと書きましたが、その対応も実は企業結合会計は、ちゃんと打ってあります。

議決権比率が等しくても次の判定基準があるからです。

判定基準3:議決権比率以外の一定の支配関係を示す事実がないこと

これは何かといいますと、議決権比率で見れば等しいかもしれないけど、実態で見れば一方が他方を支配しているといったケースがないようにカバーする要件です。

企業結合会計基準では、具体的には次のようなものをあげています(一部意訳)

1、新会社の役員構成を見るとどっちかの役員だった人が過半数を占めている。

要は、新会社の運営が過半とった会社に握られているんだったらそりゃ買収(取得)じゃないかということですね。

これって実態面を判断するうえで重要だと思いますが、本来的に考えれば役員は適材適所であるべきで、どっちの会社出身者だって問題を残すとまずいんじゃないかとも思ったりします。タスキ掛け人事の弊害ってのもありますからね。

2、重要な財産及び営業方針決定を支配する契約等によって、一方の会社の株主が他方より有利な立場にある。

議決権では等しいけど、実質的な影響力が等しくないというケースですね。

3、企業結合日後2年以内にいずれかの会社の事業の大部分を処分する予定がある。

統合後に一方だけが大リストラされるケースですね。

4、対価として交付する株式の交換比率が株式の時価に基づいて算定した比率と一定以上乖離し、多額のプレミアムが生じているケース

これがポイントですね。先の合併比率いじって持分プーリングに持ち込む誘惑に対応する規定です。

では、合併比率が株価に基づく比率と違えば常にアウトなのかというとそういうわけでもなく、あくまで「多額のプレミアム」が生じているケースに限定です。

「多額の」判定基準は適用指針で数値化されるのかと思っていたのですが、それは見送られました。

根拠なく合併比率をいじっているのはダメだけど、合理的な算定根拠に基づいて、当事者間で十分交渉して決定したものであれば、いいとのスタンスのようです。

「じゃあ、当事者間で握ってしまえば?」

という疑問もあるかと思いますが、

「このご時勢、そんなことしたら、リスク大でっせ!」

と、言いたい。

いちごショックや、PENTAX攻防戦を例に挙げるまでもなく、最近はM&Aに対する株主の目が厳しくなっており、根拠のないプレミアムなんてつけようものなら、善管注意義務違反として訴えられる可能性まで出てくる時代になっています。

それに、会計監査も厳しくなっています。持分プーリング法というのは、イレギュラー処理なので、チェックする目も厳しく、合理性がなければ認めないでしょう。(もしかして、本部審理事項?)つまり、持分プーリング法でやるつもりが、会計監査でひっくり返されるリスクがあるわけです。

一昔前ならいざしらず、株主総会と会計監査というチェック機能が本来的機能を回復してきた今日、不適切な方法で持分プーリング法に持ち込むのは無理があると思います(過剰期待?)。

とまあ、長々と書きましたが、これらの要件を満たしてようやく持分プーリング法が認められるわけです。

ざっとググッた限りでは、企業結合会計基準以降の持分プーリング法の適用事例って、先日紹介したホームセンター以外では、東海パルプ・特殊製紙の統合くらいでした。これだけM&Aが活発になってきたのに、持分プーリング法適用事例が2件程度ということは、それだけ要件を満たす案件が少なく、かつチェック機能が有効に機能しているのだと思います(と信じたい)