今日は、母の日のプレゼントに最適の「大阪おいしいショコラティエ特集!」の予定だったんですが、またまた山口先生の「ビジネス法務の部屋」 で本ブログを取り上げていただいたので、再びバリュエーションネタです。

先日のブログでDCF>時価純資産なら時価純資産採用しなくてもいいけど、その逆(DCF<時価純資産)だと微妙な問題があると書きましたが、その補足を少々。

まず時価純資産=清算価値という前提で説明します。

基本的に通常、M&Aの価値算定(バリュエーション)を行う場合、その会社が継続することを前提として評価を行います。事業を継続することによって得られる将来収益に着目してM&Aを行うのですから、その会社の時価純資産がいくらであるかというのは基本的に買い手にとっては関係のない話です。

DCF<時価純資産の状況で、売り手が時価純資産の価格で買ってくれというならば、買い手としては、だったら、売り手側で事業を辞めて清算したらいいじゃないかと主張することになるわけす。だって、買い手としては時価純資産で買ってはペイしないわけなんですから、基本的にそんな投資をしちゃあ、取締役の善感注意義務違反が問われる可能性があるわけです。もっとも、時価純資産で買収して、すぐに清算すれば損失は発生しないかもしれません。でも日本のM&Aでは「買収後、従業員の雇用は守ってね」と売り手側が主張することが多いわけで、「清算価値で買え、でも清算はするな」なんて主張は自己矛盾しているわけですね。

で、ブレークするか、それとも双方ある程度譲歩して、買い手にとってシナジーがあるから、みたいな理由で、当初のDCF<買収額<時価純資産みたいな価格で決着するわけです。

この買収額<時価純資産というのは結構ある話でして、これが「負ののれん」の発生要因となっているわけです。

通常のM&Aならこれで済む話なのですが、MBOで問題となるのは、経営陣側が買収額<時価純資産で取引を決めるということは、株主にとって価値の最大化を計っていない可能性があるのでないかという点です。

つまり、経営陣が株主にとっての価値の最大化を考慮するのが善感注意義務だとするならば、


買収額<時価純資産でMBOを実行するのではなく、会社を清算すべきではないか


ということになるわけですね。







と、ここまで書いておきながら、当初においた時価純資産=清算価値という前提に実は問題があったりします。



通常のM&Aでは、清算価値というと単に含み益に税効果を考えて計算しましょうという意味で計算するのですが、実際会社を清算するとなるとM&Aで計算する時価純資産が残ると言うことはまずないわけです。

たとえば帳簿で100億円の在庫があったとして、事業継続なら110億円で売却できるかもしれませんが、清算する場合はバッタ屋に二束三文で買い叩かれるということもよくあるわけです。また、従業員の退職金も自己都合退職を前提としたPBO計算ではなく、会社都合での割り増しも考慮した要支給額の計算となり、負債が増大することになります。

再生目的のM&Aでは、破産の可能性も考えて、在庫は簿価の70%掛けで評価、みたいな形でこれらを考慮するのですが、通常の事業継続を前提としたM&Aでそこまで考慮したバリュエーションはあまり見たことがありません。

もし時価純資産を厳密な清算価値で計算すれば、DCF<時価純資産となるケースはあまりないのではないでしょうか?