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Awareness

「気づき」がすべて。

Be here now.

「今、ここに」を日々是実践。

高平は吉崎からそう褒められても、反面で、内心ある疑問を抱いていた。
「でもそんなことが果たして起こりうるかしら。10年以上も湖の底に沈んでいるものが、突然浮かんでくるなんて。たとえそんなことが起こりうるとしても、今回の場合もそうだったと言い切れるのかしら。…」

彼女たちの調査は、のっけから、図書館の所長という助け舟が現れてくれたためもあって、県立図書館まで足を運ぶまでもなく、資料で分かる範囲では、ほぼ終了した。しかし、高平は、資料収集という自分たちの目的の遂行を通じて、何かもどかしい感じを内心宿すことになった。それは、取れそうに見えるが自身では決して取れないことが分かりきっているものを取ろうとするときに感じるもどかしさだった。

父の死と湖底のオルゴール

何の関係もないような両者の間に、高平は、ある符合をつけられそうでつけられないもどかしさを感じていたのだった。真の悲しみは悲しみを受けた者にしか分からないもの。高平が自分の悲しみを友人であっても打ち明けようとしないのは、単に立ち直りが早い彼女の楽観的性質がそうさせているわけではなかった。真の悲しみを知っている者にしかわからない孤独を、幼い頃からいやというほど彼女は体験してきたのだ。しかし、父の死はこれまでのどの悲しみより大きいものだった。だから、彼女は、その悲しみを大切にしておきたかった。それがどんな種類の同情であれ、数日数ヶ月もすれば消え去ってしまうような同情で、その悲しみを癒すことは、彼女にとって自分の中の愛する父親への侮蔑に近い行動だったのだ。孤独を愛し、悲しみとともに生きていくことは、彼女を強くたくましく、そうして哀れみ深い人間に成長させていった。

高平は、この調査でだいたいの概要がつかめた今、一人で、新池に行くことを決意していた。そして、父が落ちたと思われる場所と、中3生たちがオルゴールを置いた中間点が一致するはずだという自分の推論が正しいかどうかを確かめたいと思った。

吉崎の家で調査結果をまとめ、しばらく談笑した後、夕食もという吉崎の強いすすめを丁重に断った高平は、吉崎の家を後にして、自分の帰りを待つ母のいる自宅へと急いだ。