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Awareness

「気づき」がすべて。

Be here now.

「今、ここに」を日々是実践。

ゆるり弧を描くように竹箒を動かしていた手を止めて、そのまま、
「はい、はい」
と返事を返すと、住持は、緩慢な動作で二人のいる方に振り向いた。小柄で老齢の住持は、行儀よく佇んでいる二人に眼をやると、彼らに対して、
「これはよく来んなさった。」
と、よく通る声で優しく語りかけてきた。
二人にはそれで十分だった。ここに来る間の、501段の階段は、その一段一段が、上るごとに心に重くのしかかってきたのだった。それが、住持の一声で、途端に軽くなったのだ。

「こないだ電話したものですけど。」
やまちゃんは、それでも、おずおずと切り出した。
「はい、はい。覚えておりますとも。ちょっとお待ちくださいな。もう少しで掃き終わりますけんな。」
と、佐伯が、
「あの、僕たちにも手伝わせて下さい。」
と言うと、住持は、にこりと笑みを返すと、
「あそこにありますけん。」
と、掃除道具の入っている倉庫の方を指差した。
佐伯がそちらの方に走っていくと、意表をつかれたやまちゃんも、遅れて佐伯の後を追った。二人はしばらく倉庫の中でがさごそやっていたが、各自お気に入りの掃除用具を見つけると、自分たちの持ち場を探しに走り回った。