
ある日の事務所
新人社員が机に突っ伏していた。
机の上には、
預金通帳
納品書の山
売上集計表
が散乱している。
「うわあああああ!!」
新人が叫ぶ。
「売上が合わないぃぃぃ!!」
そこへ現れる――
黒スーツにサングラス。
謎の会計猫。
会計猫
「フッ…また迷える子羊か」
新人
「誰!?」
会計猫
「私は会計猫。
決算期になると現れる伝説の猫だ」
新人
「いや猫が伝説とかどうでもいいんですけど!」
会計猫
「売上が合わんのであろう?」
新人
「そうなんです!」
「通帳見ながら売上作ったのに、 税理士さんから
“売上違う”
って言われて…」
会計猫は静かに通帳を開いた。
会計猫
「ほう…通帳売上方式か」
新人
「ダメなんですか!?」
会計猫
「ダメとは言わん。
だが危険だ」
新人
「なんで!?」
会計猫はホワイトボードに書いた。
売上 ≠ 入金
新人
「えっ」
会計猫
「法人ではな…
“お金が入った日”
ではなく、
“仕事が終わった日”
を重視するのだ」
新人
「えぇぇぇ!?」
会計猫
「例えばだ」
3月28日
商品納品。
客: 「ありがとう!来月払います!」
4月5日
請求書発送。
4月30日
入金。
新人
「4月売上ですね!」
会計猫
「違う」
新人
「またぁ!?」
会計猫
「3月売上だ」
新人
「なんでぇぇぇ!?」
会計猫
「商品を渡したからだ」
新人
「でも金ないですよ!?」
会計猫
「だが客はもう商品を使える」
新人
「た、確かに…」
会計猫
「つまり取引は完了している」
会計猫はさらに書いた。
納品 → 売上
入金 → 回収
新人
「じゃあ通帳って何見るんです?」
会計猫
「“いつ回収したか”だ」
新人
「請求書は?」
会計猫
「“いくら請求したか”」
新人
「納品書は?」
会計猫
「“いつ売上だったか”」
新人、固まる。
新人
「つまり…」
会計猫がニヤリ。
納品書
→ いつ売上?
請求書
→ いくら?
通帳
→ いつ入金?
新人
「うわぁぁぁ!! 全部役割違う!!」
会計猫
「ようやく気づいたか」
その瞬間。
ドサァッ!!
大量の納品書が机に落ちた。
新人
「ぎゃああああ!!」
会計猫
「さあ始めるぞ」
新人
「何を!?」
会計猫
「売上探偵だ」
新人
「嫌な響き!!」
会計猫
「まず通帳を見る」
新人
「はい…」
会計猫
「期中に入金あり」
新人
「あり!」
会計猫
「納品書あり」
新人
「あり!」
会計猫
「なら預金売上!」
新人
「おお!」
会計猫
「次」
新人
「まだあるの!?」
会計猫
「納品書の日付は期中」
新人
「はい…」
会計猫
「だが入金は翌期」
新人
「ありますね…」
会計猫
「なら掛売上!!」
新人
「うわぁぁぁ!! 売掛金だぁぁ!!」
会計猫はさらに資料を広げた。
会計猫
「そして最悪の時間が始まる」
新人
「嫌な予感しかしない」
会計猫
「売上集計表と納品書の突合だ」
新人
「ウワーーーー!!」
会計猫
「納品書ある」
新人
「はい…」
会計猫
「だが売上集計表にない」
新人
「えっ」
会計猫
「つまり――」
売上漏れ!!
新人
「ギャアアアア!!」
会計猫
「足せ」
新人
「はい…」
会計猫
「また納品書」
新人
「まだあるの!?」
会計猫
「また集計表にない」
新人
「終わらないぃぃ!!」
数時間後――
新人
「で、できた…」
会計猫
「売上は合ったか?」
新人
「はい…」
会計猫
「よくやった」
新人
「でも何でこんな大変なんです?」
会計猫は静かに言った。
会計猫
「税務署は、
“本当はいつ売上だったのか”
を見るからだ」
新人
「なるほど…」
会計猫
「だから」
通帳だけではダメ。
納品書だけでもダメ。
請求書だけでもダメ。
全部つなげて、
本当の売上を探す。
新人
「売上って、 探偵みたいですね…」
会計猫
「その通り」
会計猫はサングラスを光らせた。
「決算とは――
売上という名の真実を探す戦いなのだ」
その瞬間。
机の奥から新たな段ボール。
そこには書かれていた。
「未整理 納品書 3年分」
新人
「イヤアアアアアア!!」
― 完 ―