印紙税の基本
Q1 印紙税って何?
A 一定の契約書や領収書などを作ったときにかかる税金です。
ただし、
「契約書を作ったら全部印紙」
ではありません。
印紙税法で決められた課税文書に該当した場合に印紙税がかかります。
Q2 課税文書かどうかは、どうやって判断する?
A 3つを確認します。
① 印紙税法で決められた20種類の文書に該当する
② その文書が、契約などの事実を証明する目的で作られている
③ 非課税文書ではない
この3つです。
Q3 「契約書」という名前なら印紙が必要?
A いいえ。
ここが印紙税の超重要ポイントです。
文書の名前ではなく、中身で判断します。
例えば、
「業務委託契約書」
「覚書」
「注文書」
「申込書」
「念書」
という名前だけでは、印紙税を判断できません。
実際に何を約束している文書なのかを確認します。
第1号・第2号・第7号・第17号を押さえる
Q4 実務では何号文書を覚えればいい?
A まず、第1号・第2号・第7号・第17号を重点的に覚えると実務で使いやすいです。
第1号文書
不動産の譲渡などの契約書
土地の賃貸借契約書
金銭消費貸借契約書など
第2号文書
請負契約書
第7号文書
継続的取引の基本となる契約書
第17号文書
金銭・有価証券の受取書
いわゆる領収書などです。
第1号文書
Q5 会社が銀行からお金を借りる契約書は何号?
A 第1号文書です。
例えば、
「会社が銀行から1億円を借りる金銭消費貸借契約証書」
なら第1号文書。
第1号文書は、記載金額によって印紙税額が変わります。
Q6 1億円の金銭消費貸借契約書なら?
A 6万円です。
第1号文書で、
5,000万円超1億円以下
の場合は、
6万円
です。
Q7 同じ1億円でも手形なら?
A 第3号文書になります。
約束手形・為替手形は第3号文書です。
1億円の場合、
2万円
です。
ただし、
「印紙が安いから手形にする」
という話ではありません。
そもそも、その文書が本当に第3号文書に該当するのかを確認する必要があります。
第2号文書
Q8 請負契約書は何号?
A 第2号文書です。
例えば、
建築工事
土木工事
修理工事
製作
加工
広告などの請負
などです。
Q9 請負契約書は金額によって印紙が変わる?
A はい。
例えば現在の第2号文書では、
500万円超1,000万円以下
→ 1万円
1,000万円超5,000万円以下
→ 2万円
5,000万円超1億円以下
→ 6万円
となります。
だから、
「請負契約書だから全部○円」ではありません。
契約金額を確認します。
第7号文書
Q10 第7号文書って何?
A 継続的な取引をするための基本ルールを決める契約書です。
例えば、
売買取引基本契約書
代理店契約書
特約店契約書
継続的な業務委託の基本契約書
銀行取引約定書
などがあります。
Q11 第7号文書はいくら?
A 原則1通4,000円です。
ここが第2号文書との大きな違いです。
第2号文書は契約金額によって変わります。
第7号文書は原則、
1通4,000円
です。
Q12 「業務委託契約書」と書いてあったら4,000円?
A それだけでは決められません。
ここは非常に重要です。
「業務委託契約書」
という名前でも、
その内容が何なのかを確認します。
例えば、
継続的な取引の基本条件を定める契約
なのか、
具体的な仕事の完成を請け負う契約
なのかで、印紙税の判定が変わることがあります。
したがって、
業務委託=第7号=4,000円
と丸暗記するのは危険です。
第17号文書
Q13 領収書は何号?
A 第17号文書です。
正式には、
金銭または有価証券の受取書
です。
「領収書」という名前だけではありません。
例えば、
「代済」
「相済」
「了」
などの記載によって、金銭を受け取ったことを証明する文書になる場合もあります。
Q14 領収書なら全部200円?
A 違います。
売上代金の受取書の場合、
5万円未満なら非課税
です。
つまり、
49,999円
→ 非課税
50,000円
→ 200円
です。
ここは非常に間違えやすい。
「5万円以下」ではなく「5万円未満」
です。
Q15 100万円の領収書なら?
A 400円です。
現在の第17号文書では、
50,000円以上100万円以下
→ 200円
100万円超200万円以下
→ 400円
です。
Q16 500万円の領収書なら?
A 1,000円です。
第17号文書では、
300万円超500万円以下
→ 1,000円
です。
Q17 1,000万円の領収書なら?
A 2,000円です。
1,000万円超2,000万円以下になると、
4,000円
です。
つまり、領収書も金額によって変わります。
売上代金以外の受取
Q18 領収書に「売上代金」と「それ以外」が一緒に書いてあったら?
A まず、それぞれの金額を区分できるか確認します。
例えば、
売上代金
40,000円
その他の受取
20,000円
と明確に分けて書いてある場合。
印紙税の税額を決めるときの記載金額は、原則として売上代金の40,000円を使います。
しかし、
「5万円未満の受取書かどうか」
を判定するときは、
40,000円+20,000円
=60,000円
で判定します。
したがって、
5万円未満の非課税にはなりません。
消費税と印紙税
Q19 契約書に消費税が書いてある場合、消費税も印紙税の対象?
A 一定の条件を満たせば、消費税額等を除いて判定できます。
対象になるのは、
第1号文書
第2号文書
第17号文書
です。
Q20 例えば請負契約1,100万円なら?
次のように書いてあったとします。
請負金額 1,100万円
うち消費税額等 100万円
この場合、
1,100万円-100万円
=1,000万円
を記載金額として判定できます。
したがって第2号文書なら、
1,000万円 → 印紙税1万円
です。
Q21 「1,100万円(税込)」としか書いてなかったら?
A 消費税額等が明確ではないため、1,100万円で判定します。
ここが重要。
「1,100万円(税込)」
だけ
→ 1,100万円
「1,100万円、うち消費税100万円」
→ 1,000万円
この違いです。
Q22 「消費税10%を含む」と書けば消費税を除ける?
A それだけではダメです。
「消費税10%を含む」
だけでは、具体的な消費税額等が明らかとはいえません。
したがって、記載金額は税込金額で判定します。
Q23 免税事業者が「消費税100万円」と書けば、その100万円を除ける?
A 除けません。
消費税の免税事業者には、その取引について課されるべき消費税額等がありません。
そのため、区分して「消費税100万円」と書いていても、その金額を印紙税の記載金額から除くことはできません。
電子契約
Q24 電子契約なら印紙税はかからない?
A 電子データそのものは、印紙税の課税対象となる「文書」ではありません。
そのため、電子契約の電磁的記録そのものについては印紙税はかかりません。
Q25 じゃあ紙の契約書を作らず、電子契約だけにすれば?
A 電子データだけで契約を成立させる場合、その電子データ自体には印紙税はかかりません。
ただし、
電子契約をしたうえで、
別途、紙の契約書を作成した
のであれば、
その紙の契約書について印紙税を判定します。
コピー・写し
Q26 契約書のコピーなら印紙はいらない?
A 単なるコピーなら課税されない場合があります。
しかし、
「写し」と書いてあるから絶対に印紙不要
ではありません。
Q27 なぜ?
A その写し自体が、契約成立を証明する目的で作られている場合があるからです。
例えば、
契約当事者の署名・押印が入っている
などの場合、
「写し」と書いてあっても課税文書になることがあります。
Q28 契約書を2部作ったら印紙は1枚?
A 必ず1枚ではありません。
それぞれが契約成立を証明するために作成された文書なら、
それぞれについて印紙税を判定します。
つまり、
「原本1部+コピー1部だから印紙1枚」
とは限りません。
注文書・申込書
Q29 注文書なら印紙はいらない?
A 通常は課税対象にならないものがあります。
しかし、
注文書という名前だけでは判断できません。
契約成立を証明する目的で作られている場合、
課税文書になることがあります。
Q30 申込書も同じ?
A 同じです。
単なる申込みの事実を証明するための申込書なら、通常は課税対象ではありません。
しかし、
その申込書によって契約が成立する仕組みになっていたり、
契約当事者双方の署名・押印があるなど、
契約成立を証明する文書になっている場合は、課税文書になることがあります。
覚書・変更契約
Q31 覚書なら印紙はいらない?
A いいえ。
「覚書」という名前では判断しません。
例えば、
元の請負契約
500万円
↓
覚書で
700万円に変更
とした場合、
契約内容を変更する文書として印紙税を検討します。
Q32 契約期間だけ変更する覚書なら?
A これも内容を確認します。
変更した事項が印紙税法上の「重要な事項」に当たるかどうかなどを確認します。
だから、
「覚書=印紙なし」
ではありません。
印紙の貼り方
Q33 印紙を貼れば終わり?
A いいえ。消印まで必要です。
収入印紙を貼ったら、
印紙と文書にまたがるように、印章または署名で消印します。
これを忘れない。
Q34 印紙を貼らなかったらどうなる?
A 原則、本来納める印紙税の3倍の過怠税がかかります。
例えば、
本来の印紙税
1万円
貼らなかった
↓
過怠税
3万円
となるのが原則です。
Q35 自分で貼り忘れに気づいて申し出たら?
A 一定の条件を満たせば、過怠税が1.1倍に軽減されます。
ただし、
税務調査によって過怠税が決定されることを予知した後の申出では、この軽減は受けられません。
Q36 印紙は貼ったけど消印を忘れたら?
A 消印されていない印紙の額面相当額の過怠税がかかります。
例えば、
1万円の印紙を貼った
↓
消印していない
↓
1万円の過怠税
となります。
間違って高い印紙を貼った
Q37 間違って高い印紙を貼ったらどうする?
A 一定の場合、還付を受けられます。
例えば、
本当は1,000円なのに5,000円の印紙を貼った
という場合などです。
また、
そもそも印紙税がかからない文書に間違って印紙を貼った場合も、一定の場合に還付対象になります。
実務で絶対にやってはいけない判断
Q38 「業務委託契約書だから4,000円」
A 危険です。
中身を確認します。
Q39 「覚書だから印紙なし」
A 危険です。
何を変更した覚書なのかを確認します。
Q40 「注文書だから印紙なし」
A 危険です。
契約成立を証明する文書になっていないか確認します。
Q41 「コピーだから印紙なし」
A 危険です。
そのコピー自体が契約成立を証明する目的で作られていないか確認します。
Q42 「領収書だから200円」
A 危険です。
まず、
5万円未満かどうか
を確認します。
実務での印紙税判定手順
これをそのままチェックリストにすると分かりやすいです。
STEP 1
紙の文書を作った?
↓
いいえ
→ 電子データなら、印紙税の対象となる「文書」か確認
↓
はい
→ STEP2
STEP 2
何が書いてある?
↓
契約内容・受取事実などを確認
↓
STEP 3
何号文書?
↓
第1号?
第2号?
第7号?
第17号?
その他?
↓
STEP 4
記載金額はいくら?
↓
契約金額・受取金額などを確認
↓
STEP 5
消費税額等を除ける?
↓
第1号・第2号・第17号か確認
↓
消費税額等が明確に区分されているか確認
↓
STEP 6
非課税・軽減措置はない?
↓
STEP 7
必要な印紙を貼る
↓
STEP 8
必ず消印する
最重要ポイントだけ覚える
印紙税は
「名前」ではなく「中身」
判断は
何号?
↓
いくら?
↓
特例は?
第2号
請負契約書
第7号
継続的取引の基本契約書
→ 原則4,000円
第17号
領収書など
売上代金の領収書
5万円未満
→ 非課税
5万円以上
→ 課税
電子契約
電子データそのもの
→ 印紙税なし
消費税
第1号・第2号・第17号について、
消費税額等が明確に区分されていれば、一定の場合は除外
印紙を貼ったら
消印まで
貼らなかったら
原則3倍の過怠税
かえ太とまりの実務漫才
かえ太
「契約書来ました!」
まり
「何の契約?」
かえ太
「業務委託!」
まり
「じゃあ4,000円ね。」
かえ太
「よし!貼ります!」
まり
「待って。」
かえ太
「また?」
まり
「契約書の名前だけで判断してない?」
かえ太
「……してます。」
まり
「印紙税は?」
かえ太
「名前じゃない!」
まり
「そう。」
かえ太
「中身を見る!」
まり
「正解。」
かえ太
「じゃあ領収書!」
まり
「いくら?」
かえ太
「49,999円!」
まり
「印紙は?」
かえ太
「200円!」
まり
「違う。」
かえ太
「えっ!」
まり
「5万円未満は?」
かえ太
「非課税!」
まり
「じゃあ50,000円は?」
かえ太
「……200円!」
まり
「そう。」
かえ太
「1円の壁!」
まり
「税金は境目を確認する。」
かえ太
「じゃあ1,100万円の請負契約!」
まり
「消費税はいくらって書いてある?」
かえ太
「100万円。」
まり
「明確に区分されてる?」
かえ太
「はい。」
まり
「じゃあ記載金額は?」
かえ太
「1,100万円!」
まり
「違う。」
かえ太
「え?」
まり
「消費税100万円を除ける。」
かえ太
「1,000万円!」
まり
「そう。」
かえ太
「印紙税は?」
まり
「第2号文書の1,000万円の区分。」
かえ太
「1万円!」
まり
「正解。」
印紙税の合言葉
かえ太
「名前を見る!」
まり
「違う。」
かえ太
「中身を見る!」
まり
「そう。」
かえ太
「何号?」
まり
「何号。」
かえ太
「いくら?」
まり
「いくら。」
かえ太
「特例ある?」
まり
「完璧。」
かえ太
「最後は?」
まり
「印紙を貼る。」
かえ太
「消印!」
まり
「そう。
貼って終わりじゃない。消印まで。」


根拠・参考資料
国税庁 タックスアンサー No.7100「課税文書に該当するかどうかの判断」 �
国税庁
国税庁 タックスアンサー No.7105「金銭又は有価証券の受取書、領収書」 �
国税庁
国税庁 タックスアンサー No.7118「申込書、注文書、依頼書等と表示された文書の取扱い」 �
国税庁
国税庁 タックスアンサー No.7120「契約書の写し、副本、謄本等」 �
国税庁
国税庁 タックスアンサー No.7122「文書の記載金額」 �
国税庁
国税庁 タックスアンサー No.7124「消費税額等が区分記載された契約書等の記載金額」 �
国税庁
国税庁 タックスアンサー No.7129「印紙税の納付方法」 �
国税庁
国税庁 タックスアンサー No.7130「誤って納付した印紙税の還付」 �
国税庁
国税庁 タックスアンサー No.7131「印紙税を納めなかったとき」 �
国税庁
印紙税法、印紙税法別表第一、印紙税法基本通達
実務上の運用知と法律上の取扱いは分けて考えることが重要です。上記は国税庁の現行情報を基準に整理しています。