こんにちは。
今年も、補正予算で「
ものづくり補助金」があるようで、楽しみな反面、
少々身構えている
金型・部品加工業専門コンサルティングの
代表コンサルタント、村上です。
久しぶりの記事となる今回は、
5Sについてです。
しかし、一品料理品の生産管理にこだわる当コンサルタントが、
どこにでもある、まさに教科書に書いてあるような、ありきたりの
5Sについての話はいたしません。
というわけで、切削加工とそのコストダウン、そして
そこに関係する5Sについての話をしたいと思います。
下記がそのコンテンツになります。
①まず目的を明確にする。
お客さんに見せる、コスト削減をする、時間ロスを削減するなど、
目的によって、目指すゴールは変わります。
②何から始めるのか。
5Sのうち、2Sからはじめます。これは教科書どおりです。
③目指すゴールとは。
これはそれぞれ異なります。
お客さんに見せる場合、コスト削減をする場合、時間ロスを削減する場合、
などによって異なります。
④2Sを維持する方法とは。
これらのコンテンツになります。
それでは、順に見ていきます。
①そもそも目的を明確にする。
そもそも5Sを何のためにやるのか、その目的によって
目指すゴールは変わってきます。
まず、その目的は何のためにやるのかを明確にします。
例えば、その目的は、
・自社を訪問されるお客さんに見せるために行う
・購入品ロスが多く、そのコスト削減をするために行う
・工具やツール、治具を探すことが多いため、時間ロスを削減するために行う
などがあります。
②何から始めるのか。
これは、一般的な教科書どおりで構いません。すなわち、
5Sの順序どおりです。
1.整理
2.整頓
3.清潔
4.清掃
5.しつけ
特に1と2からはじめると良いです。
1.の整理は、要らないものを捨て、要るものだけにすることです。
2.の整頓は、必要なものが必要なときにすぐに取り出せる状態にすることです。
多くの企業様を見ていると、どうも1.の整理が難しいようです。
なぜでしょうか。理由は私も技術者だったのでわかります。やはり
ここ一番重宝した工具や一生懸命作った治具は捨てられないものです。
しかもひょっとして半年後、一年後、いつ出番がくるかわかりません。
その時また苦労して治具をつくるわけにはいきません。
こういった物については、すぐに捨てる必要はありません。ただし、
メインとなる作業場所の近くにある必要もありません。
5Sを効果的にするためには、何らかのメリットが必要です。したがって、
いつでも使うような本当に近くに欲しいものだけ、近くに配置し、
一年に一回しか出番がないようなものは、
移動時間のロスはさほど大きなダメージにならないため遠くにおいて構いません。
2.の整頓は、実益を考えると良いです。前述したように
目的が外れた場合、例えば、中小企業が大手企業タイプの5Sを行ったりすると、
私も過去に経験がありますが、実益が犠牲になります。
中小企業には合わないのです。
私が経験あるのは、大手企業OBの方によって、
機械加工現場に「お客さんに見せるために行う5S」が導入された場合です。
すべての工具やツール、治具が棚に入れられ、外から
工具の在庫・使用状況・種類などがさっぱり見えなくなり、
欠品・余剰在庫、さらに探す時間ロスが多発しました。
同様のケースは、知り合いの研磨屋さんでもありました。見栄え重視の
5S導入で、品数間違えと誤品出荷が多発するようになってしまったそうです。
中小企業の日常業務の最優先は、
何と言っても利益確保に向けた取り組みのはずです。これと両立した
5Sでなくては、経営の足を引っ張るだけです。
では、どうすれば良いかは、後述します。
③目指すゴールとは。
これは、①で書いたように、目的によって異なります。
例えば、次のようになります。
・お客さんに見せる。
やはり見栄え優先になります。優先すべきは、
物が少なく雑然としていない方が綺麗に見えます。
それと切削工具は先端が鋭利になっているため、安全に配慮した
整理を行うことになり、基本的には棚や引き出しの中に納める2Sが中心になります。
・コスト削減をする。
この目的の場合、優先すべきは、ムダな購入品を買わないということになります。
したがい、特に購入頻度の高いものから、なるべく「見える化」を行います。
例えば、金型メーカーにおいて仕上げ用ボールエンドミルの仕様頻度が高い場合、
その在庫状況が普段の動線から見えるようにして、まだ使えるのに
新品ばかり買ってしまい、在庫がゴロゴロする状況を改善する方法などを取り入れます。
・時間ロスを削減する。
この目的の場合、優先すべきは、一日の移動量を最小にできる整頓になります。
つまり、最もよく使う道具を最も近くに配置し、使わない物ほど遠くに置きます。
しかし、どうしても物の収まりの良さだけで配置を決めている例をよく見かけます。
「この角度バイスは一年に一回くらいしか使わない」といった道具が
場所のスペースの問題だけで普段の作業スペースのすぐ近くに置いて
あったりします。これは要注意ですね。
④2Sの状態を維持する方法とは。
最後に、あるべき姿を実現した後、どのようにその状態を維持するか、を
紹介します。
これは5Sのうちの5番目の「しつけ」にあたります。まずは
ルールを「設定」することです。ただし、このルールは無理のないように
決めないとすぐに形骸化します。要注意です。
ポイントはいかに日常業務に落とし込むかです。これが大手企業の5Sと
違うところです。私も天下りOBの方が導入した5Sの経験がありますが、
その大手式5Sのポイントは、
・新たにルールを作ることが功績となっている。
・増えたルールについての掲示書類づくりが新たな仕事となって増える。
・当番制の新しい管理が増え、その管理が新たな仕事となって増える。
などです。
会社によっては、これらの仕事が、本業の納期よりも優先になる
場合もあるので危険です。
中小企業の5Sのポイントはやはり、
・余計な書類や管理を増やさない。
・日常業務と兼ねた管理を行う。
などになります。
私が過去にやったのは、最もよく使うボールエンドミルを
棚の引き出しから出してしまい、ダブルビン法をアレンジして、
必要在庫分だけ立てておき、しかもそれを普段の動線横に置き、
筆入れのような置き場所に立てて「見える化」しました。
そうすると、誰でもいつでも欠品や摩耗などに気づくことができ、
足りない場合もすぐに発注できるようになりました。
これならわざわざ棚の中を担当者が時間を割いて見に行く必要も、
発注し忘れもなくなり、しかも突発的に必要な工具が足りなくなる
ということがありません。
中小企業は、とにかく人員が限られています。管理のための仕事なのか、
儲けるための仕事なのか、ここを間違うとすぐに経営に響いてきます。
利益貢献に効果のある5Sを導入して、その利益を
がんばってくれた従業員の皆様に還元できるような
仕組みがつくれるといいですね。
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士、元・金型技術者)
愛知県刈谷市高松町5丁目 TEL 0566-21-2054