決算数字を良くする切削加工のコストダウン

決算数字を良くする切削加工のコストダウン

技術系の経営コンサルタントだからこそ出来る、金型や機械加工メーカー様へのサプリメント!
切削加工のコストダウンや時間短縮などのサイトは山ほどありますが、元・切削加工技術者の中小企業診断士がお送りする、切削のコストダウンと決算数字の関係を紹介していきます。

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こんにちは。

ものづくり補助金の公募が何とか終ったかと思ったら、

次はサポイン申請のご依頼をいただき、

ものづくり補助金の実績報告と合わせ、

首が回らなくなっているものの、

日々やりがいを感じて生きている、

金型・部品加工業専門コンサルティングの代表、村上です。


本日は、雑誌に掲載していただいたので、そのご案内です。


もしよろしければ、見てみてください。

BigLife21 2015年5月号です。

中小製造業に役立つ記事になっております。

よろしくお願いいたします。


金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士、元・金型技術者)
愛知県刈谷市高松町5丁目 TEL 0566-21-2054

今回の記事の結論
デキる技術者は、いくつかの選択肢の中から選んで決めている。

記事のポイント
デキる技術者は、Q(品質)D(納期)の最適解で判断している。
※ここでの論点では、C(コスト)とD(納期)は同義と考えて良い。

皆さま、ご無沙汰しております。

最近の私は、経営改善に加え、
金型メーカーや部品加工メーカーなどで
技術指導をさせていただいておりまして。

ただし、私のような現役を退いている者が
指導させていただくのは、
主に初心者や若手の方々が対象となります。

そのなかで私が最近強く思うところは、
初心者の方とベテランさんの「考え方」の違いです。

特に図面を見てから・・・
・ どう材料取りをするのか
・ どんな順番で削っていくのか
など、
それぞれ考え方や視点が異なっていて、
とても面白く感じています。

やはり、ベテランさんが考えているのは
一つの削り方にすぐに飛びつくのではなく、
いくつかの選択肢を考えていることが多いようです。

その選択肢の中から、QとDのバランスを考え、
判断をくだす、といった流れのようです。

それだけ「引き出し」が多いということでしょうか。

また、その「判断」の基準には、
過去に起こったトラブルへのリスクも、
もちろん考慮されていると思います。

例えば、下の図のような形状を切削するとします。

切削コストダウンブログで取り上げるサンプル形状

外周部を切削する場合、いろんな工程が
考えられると思います。

① 表と裏に分け、
2回の段取りで切削する方法。

② 幅寸法は材料購入時に先に出してしまい、
両側のR部をバイスから横に順に
はみ出させながら、それぞれ削る方法。

③ 真ん中のストレート部をコマで挟んで、
両側のR部を一段りで切削できるようにする方法。

④ ワイヤーカットで加工する方法。

⑤ 捨てタップの許可をもらい、下から
引っ張ってクランプし、一段りで全周切削する方法。

さて、思いつくだけでもこれらの方法があり、
まだまだ人によってはいろいろ方法が出ると
思いますが、①~⑤において
それぞれ異なることがあります

それは、加工品質工数が異なることです。

通常、両者はトレードオフ(二律背反)の関係にあります。

品質を上げようとすると手間と工数が増える。

早くやって工数を下げようとすると品質が犠牲になる、
といった具合です。

例えば、上記①の方法を取った場合、
ほとんど事前準備をすることなく、いきなり
加工に入ることができますが、

よほど手をかけて細工をしない限り、
表と裏の繋ぎ目に段差が出ることでしょう。

逆に、繋ぎ目が出ないように上記②の方法を取ると、
R部とストレート部の境に段差は出ると思います。

上記③の方法なら、
段取り換えと基準取りは1回で済みますが、
並行度とクランプ強度が犠牲になるでしょう。

上記④のワイヤーカットは手堅い方法ですが、
切削よりも大幅にコストがかかってしまいます。

上記⑤の方法は、外周部は最もきれいに
仕上がりますが、
治具をつくる手間と捨てタップの許可が要ります。

このように、切削工程にはさまざまな方法があり、
手掛ける人のアイデア次第で
多くの方法が出てくると思いますが、

その中から何でも好きな方法を選んで良い
というわけではなく、

品質コスト、どちらを優先するかで工程を
判断しなくてはいけません。

特に新人育成の際には、
この「優先順位」の考え方こそ、
最も教えなければいけないことになります。

いろんな会社さまをお伺いさせていただくと、
「方法論」や「加工手順」は
しっかり教えてらっしゃいますが、

この「判断基準」がうまく伝えられていない
ケースを多く見受けます。

多くの新人教育のうえで、
この「判断基準」とその考え方
醸成されていないため、
応用力が伸びなくなっていると考えられます。

ぜひ工具や切削工程の選定などにおいて、
① いくつか選択肢をたてること
② 判断基準を考える・鍛えること
これらをぜひ指導してあげてください。


金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士、元・金型技術者)
愛知県刈谷市高松町5丁目 TEL 0566-21-2054

こんにちは。

今年も、補正予算で「ものづくり補助金」があるようで、楽しみな反面、
少々身構えている金型・部品加工業専門コンサルティング
代表コンサルタント、村上です。

久しぶりの記事となる今回は、5Sについてです。

しかし、一品料理品の生産管理にこだわる当コンサルタントが、
どこにでもある、まさに教科書に書いてあるような、ありきたりの
5Sについての話はいたしません。

というわけで、切削加工とそのコストダウン、そして
そこに関係する5Sについての話をしたいと思います。

下記がそのコンテンツになります。

①まず目的を明確にする。
お客さんに見せる、コスト削減をする、時間ロスを削減するなど、
目的によって、目指すゴールは変わります。

②何から始めるのか。
5Sのうち、2Sからはじめます。これは教科書どおりです。

③目指すゴールとは。
これはそれぞれ異なります。
お客さんに見せる場合、コスト削減をする場合、時間ロスを削減する場合、
などによって異なります。

④2Sを維持する方法とは。

これらのコンテンツになります。
それでは、順に見ていきます。


①そもそも目的を明確にする。

そもそも5Sを何のためにやるのか、その目的によって
目指すゴールは変わってきます。
まず、その目的は何のためにやるのかを明確にします。

例えば、その目的は、
・自社を訪問されるお客さんに見せるために行う
・購入品ロスが多く、そのコスト削減をするために行う
・工具やツール、治具を探すことが多いため、時間ロスを削減するために行う
などがあります。

②何から始めるのか。

これは、一般的な教科書どおりで構いません。すなわち、
5Sの順序どおりです。

1.整理
2.整頓
3.清潔
4.清掃
5.しつけ

特に1と2からはじめると良いです。
1.の整理は、要らないものを捨て、要るものだけにすることです。
2.の整頓は、必要なものが必要なときにすぐに取り出せる状態にすることです。

多くの企業様を見ていると、どうも1.の整理が難しいようです。

なぜでしょうか。理由は私も技術者だったのでわかります。やはり
ここ一番重宝した工具や一生懸命作った治具は捨てられないものです。

しかもひょっとして半年後、一年後、いつ出番がくるかわかりません。
その時また苦労して治具をつくるわけにはいきません。

こういった物については、すぐに捨てる必要はありません。ただし、
メインとなる作業場所の近くにある必要もありません。

5Sを効果的にするためには、何らかのメリットが必要です。したがって、
いつでも使うような本当に近くに欲しいものだけ、近くに配置し、
一年に一回しか出番がないようなものは、
移動時間のロスはさほど大きなダメージにならないため遠くにおいて構いません。

2.の整頓は、実益を考えると良いです。前述したように
目的が外れた場合、例えば、中小企業が大手企業タイプの5Sを行ったりすると、
私も過去に経験がありますが、実益が犠牲になります。
中小企業には合わないのです。

私が経験あるのは、大手企業OBの方によって、
機械加工現場に「お客さんに見せるために行う5S」が導入された場合です。

すべての工具やツール、治具が棚に入れられ、外から
工具の在庫・使用状況・種類などがさっぱり見えなくなり、
欠品・余剰在庫、さらに探す時間ロスが多発しました。

同様のケースは、知り合いの研磨屋さんでもありました。見栄え重視の
5S導入で、品数間違えと誤品出荷が多発するようになってしまったそうです。

中小企業の日常業務の最優先は、
何と言っても利益確保に向けた取り組みのはずです。これと両立した
5Sでなくては、経営の足を引っ張るだけです。
では、どうすれば良いかは、後述します。

③目指すゴールとは。

これは、①で書いたように、目的によって異なります。
例えば、次のようになります。

・お客さんに見せる。
やはり見栄え優先になります。優先すべきは、
物が少なく雑然としていない方が綺麗に見えます。

それと切削工具は先端が鋭利になっているため、安全に配慮した
整理を行うことになり、基本的には棚や引き出しの中に納める2Sが中心になります。

・コスト削減をする。
この目的の場合、優先すべきは、ムダな購入品を買わないということになります。
したがい、特に購入頻度の高いものから、なるべく「見える化」を行います。

例えば、金型メーカーにおいて仕上げ用ボールエンドミルの仕様頻度が高い場合、
その在庫状況が普段の動線から見えるようにして、まだ使えるのに
新品ばかり買ってしまい、在庫がゴロゴロする状況を改善する方法などを取り入れます。

・時間ロスを削減する。
この目的の場合、優先すべきは、一日の移動量を最小にできる整頓になります。
つまり、最もよく使う道具を最も近くに配置し、使わない物ほど遠くに置きます。

しかし、どうしても物の収まりの良さだけで配置を決めている例をよく見かけます。
「この角度バイスは一年に一回くらいしか使わない」といった道具が
場所のスペースの問題だけで普段の作業スペースのすぐ近くに置いて
あったりします。これは要注意ですね。

④2Sの状態を維持する方法とは。

最後に、あるべき姿を実現した後、どのようにその状態を維持するか、を
紹介します。

これは5Sのうちの5番目の「しつけ」にあたります。まずは
ルールを「設定」することです。ただし、このルールは無理のないように
決めないとすぐに形骸化します。要注意です。

ポイントはいかに日常業務に落とし込むかです。これが大手企業の5Sと
違うところです。私も天下りOBの方が導入した5Sの経験がありますが、
その大手式5Sのポイントは、
・新たにルールを作ることが功績となっている。
・増えたルールについての掲示書類づくりが新たな仕事となって増える。
・当番制の新しい管理が増え、その管理が新たな仕事となって増える。
などです。

会社によっては、これらの仕事が、本業の納期よりも優先になる
場合もあるので危険です。

中小企業の5Sのポイントはやはり、
・余計な書類や管理を増やさない。
・日常業務と兼ねた管理を行う。
などになります。

私が過去にやったのは、最もよく使うボールエンドミルを
棚の引き出しから出してしまい、ダブルビン法をアレンジして、
必要在庫分だけ立てておき、しかもそれを普段の動線横に置き、
筆入れのような置き場所に立てて「見える化」しました。

そうすると、誰でもいつでも欠品や摩耗などに気づくことができ、
足りない場合もすぐに発注できるようになりました。

これならわざわざ棚の中を担当者が時間を割いて見に行く必要も、
発注し忘れもなくなり、しかも突発的に必要な工具が足りなくなる
ということがありません。

中小企業は、とにかく人員が限られています。管理のための仕事なのか、
儲けるための仕事なのか、ここを間違うとすぐに経営に響いてきます。

利益貢献に効果のある5Sを導入して、その利益を
がんばってくれた従業員の皆様に還元できるような
仕組みがつくれるといいですね。

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士、元・金型技術者)
愛知県刈谷市高松町5丁目 TEL 0566-21-2054