都心の銀座では、今年3月にシネパトス、5月に銀座テアトルシネマが閉館となる。渋谷にほど近い三軒茶屋でも60年の歴史があるレトロな映画館が間もなく幕を閉じようとしている。三軒茶屋中央劇場だ。

 ロードショー公開後の作品を週替わり2本立てで上映する2番館であるが、いわゆるミニシアター系のセレクションで貴重な存在の劇場であった。

 最後の上映作品は邦画+洋画の取り合わせで「天地明察」と「ハンガーゲーム」の2本立てである。どちらも未見だったし、珍しく上映期間が2週間だったので劇場に行くと閉館のお知らせが掲出されていた。

 スクリーンが比較的大きく、天井が高い。最盛期は2階客席も使用されていたと思われる。スクリーン脇、左右には次週上映、近日上映掲示板がポスターも無く寂しく立っている。当然ながら予告がなく本編スタートとなる。

 入場時に解説チラシを渡され、それを10枚貯めると1回無料で鑑賞できるというシステムになっていた。それが、まさにちょうど10枚溜まって、いつ行こうかと思っていた矢先の閉館情報であった。

 最後の鑑賞がただというのもちょっと申し訳ないな、と思いつつの大満足2本立て鑑賞となった。2月15日まで。


 2044年の現在に30年後2074年の自分がやって来て、さて、どうなる?のお話。

 タイムトラベル要素の、良く出来たSF映画。劇場予告もテレビスポットも見ているので、本筋に関しては理解の上で鑑賞に望んだが隠し味が効いている。

 かつてブライアン・デ・パルマ監督がよく描いていた特殊な能力の持ち主が本作でも重要なパートを占めるのだが、それに関しては全く知らされていないので、期待以上の収穫といえる。

 未来の自分と現在の自分が同時に存在して影響を及ぼしあう、タイムマシンもののタブーとされている領域がテーマになっている。

 そのため主役のジョセフ・ゴードン・レヴィットはもう一人の主役ブルース・ウィリスに似せてメイクしており、今までと微妙に違った精悍さが前面に出た顔立ちになっているが、こっちの顔もなかなか良い。
 
 今年最初の見て良かった映画。

 ストリート・チルドレンの旅を描いたロードムービーだが、行先も目的も分からない。中盤でそれが明らかになり、その前とその後で構成されている。

 過酷な現実の中でも、子供たちは自分の世界を持っており、生きていくための処世の術を身に付けている。
 まず食べなくては生きていけないが、全編を通して彼らがどう食べているかが克明に描かれている。だからリアルなドキュメンタリータッチかというと画面を支配するのはむしろ詩情であり、カメラの「映像力」がそこにはある。

 「ダイハード」シリーズやTVシリーズ「24」のヒーローたちは、いつどこで腹を満たしているのか・・・と聞くのも野暮だが、大いなる疑問である。

 旅の途上でかかわりを持つ大人たちが、点描的に印象を残してラストに向かう。

 子供たちの処遇が託された警察署で彼らの運命が決まる。この時、署内に不思議な赤い服の少女が現われる。これがストーリーにどうかかわって来るのか、変に期待してしまうのはハリウッド作劇に毒されているからだろうか?

 また明日があるさ、と単純には割り切れない切なさの余韻を残す。

 同じストリート・チルドレンを描いていても、ブラジル映画「ビショット(1988公開)」とは対極の作品だ。