スピルバーグ監督の話題作「リンカーン」をようやく鑑賞することが出来ました。上院で可決された奴隷制度廃止の修正法案を下院で可決するために、数の勝負の駆け引きがどう進められたかを描く真面目な映画ではありますが、面白いかと問われると、これまでのスピルバーグ映画とは違う、としか言いようがありません。
 ヒューマンなエピソードをちりばめて、各登場人物の個性がくっきりと浮かび上がるという場面がありませんでした。長男役の若手実力派ジョセフ・ゴードン・レヴィットも見せ場なしでお気の毒でした。法案成立の後に、背後関係など説明もないまま大統領暗殺事件が唐突に付け加わって幕、となります。
 個人的評価にはともかく、いろんな賞をたくさん受賞した作品です。アカデミー賞では12部門ノミネートされ主演男優賞と美術賞を受賞しました。
 リンカーンのまだ幼い末息子が、売りに出ている奴隷のチラシを面白がって見ていますが、それをおかしいと思わなかった時代の怖さがあります。


 遺産相続したヒロインを狙って次々に襲いかかる怪事件、果たして犯人は・・・のミステリーの陰で、やがて驚愕の真実が明らかになる。そしてラストに訪れる感動・・・という運びが想定されたストーリー。

 これ面白い、と太鼓判を押すには、前半のミステリーがグイグイと観客の心を引っ張っていかなくてはならない。これはいわばミスリードでそのミステリーに心を奪われていたら、本筋はむしろそれに隠された真実の部分にあったという驚きであっと言わせる仕掛けに、観客は心躍らせるのだ。

 しかし、そのミステリーパートが弱い。演出の問題か演技の問題か、ヘタウマなのか本当にヘタなのか分からない役者がそろって推理も走査も淡々、この人が犯人でした、とあっさり決まってしまう。

 さて次は・・・で、ここからの後半はむしろヒロインのピアノにかけた情熱がどう結実していくかに焦点があり、ラストの演奏会シーンは見事で素直に感動できた。が、これで前半の不満を帳消しにできるかどうか?

 原作は第8回の「このミステリーがすごい!」大賞に輝いた作品だそうだ。原作者の感想が聞きたい。


 パーティ会場となった豪邸から参加者が誰も出られなくなってしまう、ルイス・ブニュエル監督の「皆殺しの天使」のような趣向かと思ったら全く違った。

 同学年の全員が同じ団地から通っている。その107名の同期生が卒業後だんだん団地から離れ、「そして誰もいなくなった」という物語。最後の一人が濱田岳演じる主人公である。

 彼は小学生の時に一生を団地の中で暮らすと決心する。そのファンタジーのような世界を描いた話かと思ったら、途中でその理由が明らかになり、この部分はテレビの取材映像を使ってドキュメンタリー調にできており、これがシリアスな心のトラウマの問題であることが分かってくる。

 やがて、それから解き放たれるための試練の時が主人公にも訪れ、ここはアクション・ヒーロー風の味付けで、最後には大きな親の愛が溢れてエンディングの旅立ちへといたる。

 物語の面白さが詰まった、お得度の高い傑作だと思う。中村義洋・監督作品