テレビシリーズは知らず、新劇場版になってから初めてこの世界観に接して、「序」も「破」も鑑賞したものの、数年を経ての続編は復習もなければ全くの新作も同じ。

 いきなり、壮烈なバトル・シーンからスタートして、いったいどことどこが何のために戦っているのかも分からないまま、しかし、やたらと美しい画面に見とれていたら、延々と続いたバトルも終わり、ようやくタイトルが画面に現れた。

 何でも物語上では前作から14年が経過しているらしく、その間意識のなかった主人公も、何がどうなっているのか分からないようなのだ。14年の間に「サード・インパクト」と呼ばれる事象によって人類は滅亡し、その原因を作ったのが主人公であるらしい。

 それを修復するために新たに出会った少年と再びバトルの場に・・・、というタイトル後のストーリーと世界観にはすっかり魅せられてしまった。

 本編の前にスタジオジブリ制作の「巨神兵東京に現わる 劇場版」という10分ほどの短編が上映されるが、これが本編中の「サード・インパクト」とリンクしているようなのだ。この短編で破壊しつくされる東京の映像には震え上がった。
 大きな災害を象徴しているようにも思える巨神兵の虚ろな邪悪に人類はなすすべもない。

 実はこの短編の方を見たいがために劇場に足を運んだのだが、本編もなかなか良かった。


 男が6年前に一度だけバーで会った女性の面影を求めて、再び町にやって来る、その人探しに付き合わされている趣だ。

 昼間はカフェのテーブルで集う女性たちの横顔をスケッチしながら、シルビアという女性の面影を探し求めている。

 ほとんど会話らしい会話はなく、見る者と見られる者の視線の交錯がひたすら描かれる。確信を持った女性の出現で、画面は動き出し、追う者と追われる者の関係に置き換わる。ほとんどストーカー行為でもあり、追いついたところでわずかな会話が用意されているものの、不発であったことが明らかになる。

 何も起こらない映画で、最後に衝撃の結末が用意されているかも知れないと期待はしたが、結局何も起こらない。

 だが、では、退屈な映画なのかといえば、そうではない。ハンサムな主人公が町中の美女に目を留めスケッチを繰り返していく、夢のような目の至福を実感することができる。

 都市の景観、窓ガラスへの映り込みなど、重層化された映像美の中に突如ホラーテイストが立ち上り、心が泡立つ瞬間がある。


 日本では未公開ながら、良質のSF的作品。原題は「ANOTHER EARTH」で、もう一つの地球。

 空に地球が浮かんでいる何とも幻想的な光景を、毎日眺めることになる世界の物語だ。青い輝きがある夜、突然発見される。それに見とれた10代の女性ドライバーが引き起こした事故の犠牲者に対する贖罪が描かれる。

 SF的な光景を背景に置いたヒューマンドラマである。

 もう一つの地球は一種のパラレルワールドで、地上と全く同じく物事が進行している。それが「発見」を機に、微妙にずれ始めたらしいことが物語に影を落としてくる。

 新しい世界に最初のメッセンジャーを送り込む計画に一般人から広く参画を募り、ヒロインはそれに応募する。

 地球が浮かんだ美しい空の他にはSFらしい出来事は何も起こらないが、最後の最後にサプライズが用意されている。美しく、切ない見事な作品だ。