自転車は車道を、というのは都会の話で、当地のメイン道路では車道と歩道が分かれて、その間には草木が植えられていたりして、はっきり区別されています。
更に歩道の中でも歩く人と自転車で行く人の道はちゃんと色分けされていて、自転車のマークもちゃんと描かれています。

ところが、何を思っているのか車道を自転車で通行する人が増え、自動車を運転する側は大変危ない経験をするようになりました。

車道を走る自転車乗りの人は、結構スピードを出す人が多いです。
だったらそれはオートバイだと思えばいいのかも知れませんが、慣れてないせいか、やはりそちらに気を取られるのです。
夜は暗いので、オートバイのようにブレーキランプが赤々と点いたりしない自転車は、どこに存在しているのか見失うことがあります。
それから、大抵の人は荷物をキャリアにぶら下げていたりするので、引っ掛けてしまいそうな錯覚に陥ります。
オートバイよりも横幅が小さいので、すっと追い越せば良いと思うかも知れませんが、オートバイより安定がないという先入観から、フラフラされたらどうしようと思うので、なかなか出来ません。

最近年のせいで、言いたくはありませんが、空間認識力や判断力、咄嗟の行動力など、若い頃と比べていろんな力がどんどん衰えて来ました。
それは仕方のないことなので、ある程度受け入れて運転するようにしています。
一つ間違えば人の命…細心の注意、それでもヒヤリとすることが、以前より増えました。
だから、例えば信号が変わりそうだと今まででしたらアクセルを踏んで間に合わせていましたが、今ではアクセルを緩めるようにしています。
そして、ゆるやかにブレーキを踏んで、数分の信号待ちを、イライラせず待つ、と、そのように心がけています。
どんくさ~…、と思うし、周りの若い人達も、「これだから、おばはんは~。」と思っていることでしょう。
例え、クラクションを鳴らされても、煽られても、です。
つい一昨日も、鳴らされ、煽られ、追い越されましたが。

土曜日の昼間は、比較的メイン道路の混雑はありません。
私は息子の習い事のお迎えに行き、メイン道路を進んでいました。
ふと左を見ると、ママチャリに乗っている70歳くらいのおじさんが、すっと車道に出て来ました。
「またか、危ないな~。」と、私は反射的に減速をしました。
このまま車道を並走されるのかな、怖~。
すると、そのおじさんはなんと、そこから私の車の前を横切り、そのまま反対側にすーっと渡って行ってしまったのです。
横断歩道でも、信号でもなく、車道を横切ったのです。

何ということでしょう。
減速をしていなければ、完全にそのおじさんを跳ね飛ばしていたでしょう。



道路に描かれた、自転車のマークが判るでしょうか。
今写っているあの方が、正しいのです。
おじさんは、赤い矢印のように移動しました。
水色は、自動車で走行中の私です。
( この時は、電車は走っていませんでした。)

「えーーーっ?」信じられない光景に、息子もびっくりしていました。
若い頃なら、窓ガラスを開けて一言、文句を叫んでいたかも知れません。
その時は、横着な年寄りが多いから、「老人の死亡事故多発」なんてことになるんだよー、なんてプリプリしながら、帰りました。

後で考えてみると、…、実はあのおじさんは、こちらをチラリとも見ませんでした。
急いだ様子もなく、私の前を横切る時も、何事もなかったように、すーっと進んでいました。
その後も車が来ているかどうか、確かめもせず、渡っていきました。
その時、対向車も来ていなかったので、おじさんは無事に向こう側まで渡ることが出来ていました。

はっ…、もしかして。

月に一度の、病院での勉強会『認知症シリーズ』で習ったばかりの症状に、とてもよく似ています。
ほんのちょっとの間の出来事だったけど。
そういえば、母が認知症になった時もあんな感じだったのではなかったかしら。

もしかして、あのおじさんは…。
だとすると、ご家族は知っているのかしら。

私は、いつかあのおじさんが、自動車に轢かれるのではないかと心配しながら、家路に着いたのです。


どうすることも出来ません…よね。