今日のカフェ誇大妄想もものすごい暑い空気に支配されている。

先輩後輩0909

先輩:暑いなあ。去年もこんなに暑かったっけ?

後輩:河原の木が何本か去年の洪水で流されて空き地ができたせいかな。あれ、テーブルに何広げてるの?

先輩戦利品

先輩:東京の北の丸公園の科学技術館で「博物ふぇすてぃばる」があってね。会場でこむぎちゃんとふゆさんに会ったから今日ここで戦利品を見せ合いっこすることにしたの。

ふゆ夏こむぎ夏

後輩:へえ。あ、ふゆさん、こんにちは。

ふゆ:こむぎちゃんと連れ立って出かけたんだけど、立体パズル見てたら小島さんとばったり会ってびっくり。

後輩:これが入場券か…7月22日・23日共通…ここに描いてある変なのは何?

先輩:「異常巻きアンモナイト」のニッポニテス。今年のテーマがこれでなかったら多分行ってなかったと思う。

後輩:先輩いつからそんなにアンモナイト好きだったんだ?

先輩:ニッポニテスとコンボウガキは前から気になってたの。そしたら2日連続でアンモナイトの講演があるっていうからもう行くしかないと思ってさ…ところで九段下駅から近そうだからといって「清水門」から入ると大変だぞ。遠回りでも武道館へ行く「田安門」を使うか、地下鉄東西線の「竹橋」で下車した方がいい。重厚な門はあるけど清水門からの道は整備されてないから城門も道も昔のままでバリアフリーじゃない。行って行けないことないけど。

後輩:そもそも、お城はバリアそのものだろう。

先輩:あれはちょっとした登山道だぞ。それに城門の周辺まで夏草ボーボー。虫が多いので昆虫好きの子供は喜んでたけど。

清水門の山道

こむぎ:そっちは行ったことないんだ。なんか面白そう。

先輩:一度はいいかもしれないけど、たぶん二度と通りたくなくなるぞ。

ふゆ:二日間とも暑かったね。

後輩:…でさ、どんなイベントだったの?

先輩:出展者は大学のゼミが丸ごと来てたり、プラモデルの会社だったり、ほかにも生物モチーフの服を作ってたり花やキノコのリアルな立体刺繡の人がいたり…どういう基準なんだろう。

後輩:萌え絵描く人いる?

先輩:イラスト描く人は多いけどリアル系が多くて…萌え絵は頭痛薬を擬人化してる人と、元素擬人化してる人かな。犬や猫モチーフの代わりにオオカミとかキツネとかアライグマとかの頭骨ばっかりだし。

おれ基本萌え絵はスルーなので。見てない。

抗菌薬を擬人化だったら萌え絵でも買うんだけどな。

後輩:そんな面白いイベントだったら一人で行かないでくれ。

先輩:アンモナイトと生物のイベントだと思ってて。あんなにいろいろ来てるとは知らなかったんだ。これ今回の獲物。

 

こむぎ:野鳥グッズやってる人もいっぱいいて…ごめん。ほかにもいっぱい買ったけど忘れてきちゃった。

こむぎ戦利品

ふゆ:私は幾何学と連続模様の展示が目当てで、またあと、近所の書店で入手しにくい本が買えるかな。出版社のブースもいくつかあったよ。

真ん中のは小さいウニの殻を使ったブローチ。(チラシ多くてすみません)

ふゆさん戦利品

マスター:ふゆさん!ちょっと代わってくれ。ちょっと思い出したことがあるんだ。(奥へと引っ込む)

マスター夏

ふゆ:まあ、どんな用事でしょう。こむぎちゃん、皆さん、ちょっと店のほうに戻るわね。

マスター:頼むな。

こむぎ:なんか営業妨害したみたい。小島さん、このクリアファイル、タコ?

先輩:タコブネといって自分で分泌した殻で身を守りながら海を漂いこの中に卵を産むんだそうだ。アンモナイトの勉強するんだったらもっとイカやタコの文献も買うんだったかな。

こむぎ:アンモナイトって貝じゃないの?

先輩:貝の仲間も「軟体動物」だけどイカやタコのほうに近いらしい。巻貝だと殻の奥まで身が詰まってるけどアンモナイトは奥にいくつか隔壁があってそこに空気を入れて海中に浮遊し、イカみたいにろうとから水を噴射して進む。

こむぎ:タコブネは?

先輩:タコブネに空気室あったかな?不勉強でごめん。

(マスター、何かのカプセルトイを持って登場)

ずいぶん前に当たったニッポニテスのフィギュア

マスター:ごめん、待たせたね。お客さんは?新しい注文、ある?

ふゆ:なかったけど…

マスター:じゃあもう少し暇だな。これ、国立科学博物館でガチャ回して出したやつだけど、こんなアンモナイトがいたって信じられなくてな。なんか気持ちが悪い。

先輩:ニッポニテス・ミラビリスだ。国立科学博物館なら化石があったでしょ?

マスター:あいにくあの日は恐竜しか見てなくて。小島くん、もしよかったらあげるよ。

先輩:あ、どうも。

マスター:博物ふぇすてぃばるで生物の話を盛大にやってるならぼくも行くべきだったな。

ふゆ:店はどうするの?

マスター:「あんまり暑いんで、いません」って看板出して休業。

こむぎ:大丈夫?

マスター:どうせ土日は赤字になりがちだし。閉めても変わらないよ。

ふゆさんさあ、一人で楽しんでて、ずるいよ。ああっ、お城の石垣の本がある!ずるい。

ふゆ:え、数学とメカ工作のイベントだと思ってスルーしてたじゃない。

先輩:アンモナイトのほかに、『土偶を読む』の話とか、ミジンコやゴキブリの話があったよ。

マスター:ニッポニテスの奇妙な形はどうしてできたか、どれくらいわかってるの?

先輩:普通の渦巻きのアンモナイトは殻の厚みが薄くてつるっとしているもの以外は泳がないんじゃないかと言われていたそうだ。

ところが1日目の講演ではすべての渦巻きタイプのアンモナイトは泳げる、ということを検証した実験が紹介された。扁平でシャ-プなタイプは確かにスピードは出るけど向きを変えるのが下手なんだそうだ。ずんぐりタイプはスピードを出せないけど小回りが利く。

マスター:それで?

先輩:この冊子(「ニッポニテス先生の異常巻きアンモナイト教室」)にもあるけど面白い形のアンモナイトが成長過程でどうなるか気になるよね。

後輩:あ、そうか。成長していく過程がだんだん太くなってる殻に現れてるんだ。

先輩:ニッポニテスの場合回転しつつ前後方法に蛇行して成長すると殻口の方向が一定になるので姿勢が安定するのと、ミラビリスは巻きがコンパクトで泳ぎやすいだろうということなんだ。

こむぎ:へえ。でもなんでほかの異常巻きアンモナイトもそういう巻き方にならないの?なんでトロンボーンみたいな形になったりするの?それに、なんでそもそも渦巻きをやめたの?

先輩:なんでだろうなあ。とにかくコンピューターシミレーションでニッポニテスの巻き方はだいぶ再現できるようになったらしい。そうすると別の疑問がわいてこない?この冊子も、2日目の異常巻きアンモナイトの講演もだけど、泳げる能力を問題にしているけど、それでは18ページにあるニッポニテス・バッカスは何なんだ。

ニッポニテス・バッカス

後輩:泳ぎやすいとは言えないねえ。

マスター:バッカスは酒の神…

先輩:殻口(住房)は中身が入ってるから重くて下を向くよね。

ゆる巻きとはいえニッポニテス巻きで成長してるのに、成長の最後でなんで下に垂れるの?

後輩:知るか~。

先輩:アンモナイトの祖先は直角貝の仲間だと言われている。まっすぐな殻をもつ頭足類だ。

直角貝

なんで渦巻きになったかと言えば「顎のある魚に追われたのだろう」だそうだ。まっすぐな殻だと早く動けないだろうってことで…

マスター:直角貝って巨大で海底に横たわってる奴だよね。もしかしてこれも縦になって浮いてたとか?

先輩:かもしれない。異常巻きアンモナイトには「先祖返りか」と言えそうなまっすぐなものもある。

あくまでおれの考えだけど…

1.すべてのアンモナイトは海中を泳ぐか浮遊して生活している。異常巻きアンモナイトもその生息域では多分問題なくのんびり生活できる。(前提)

2.幼少期に泳ぎやすい形をしている方が、多くの個体が生き残りやすいだろう。

3.ある種のアンモナイトには移動能力より大事なことがあるのかもしれない。もしかして、繁殖期には縦に長いほうが、モテる?

プラビトセラス

後輩:モテるモテないって、古生物なのに、わかるの?

先輩:知るもんか。研究者に言ったら笑われるかもしれないし。

マスター:モテる、モテないより浮いているときの姿勢の安定が大事だとか…縦に長いと泳ぎにくい代わりに、重心が下に来て安定するだろう?

先輩:それはおれも考えたけど…餌が豊富だったのか、それとも狩りが上手になったのか。足(触手)には吸盤じゃなくフックがあったそうだ。

後輩:手はフックかあ。

先輩:アンモナイトの化石、目や内臓があるのは見つかったらしいけど肝心の触手はなかなか見つからないらしい。実際はこーんなに長かったりするかもしれないぞ。

こむぎ:そんなに長いと殻に収まらないじゃん。

先輩:カタツムリじゃないぞ。全部ひっこめることはないんじゃあ…

こむぎ:アンモナイトの腕はおいしいから即食べられちゃうのかな。

先輩・後輩:……

マスター:縦長な殻のアンモナイトが泳ぎもせずひたすら腕を伸ばして狩りをしてたら、鳥か魚にまるごと食われないか?美味なんだし。

後輩:先輩どうしたの…

先輩:あ、ちょっと思いついたことがあるので。そのうちまた…(店を出る)

こむぎ:こじまさん、どうしたのかな。

後輩:家に帰って何か作ってくるんじゃないの?

こむぎ:模擬投票ゲーム、完成するのかなあ…

 

 

※コンボウガキは博物館ではアンモナイトと同じ部屋にあったりするけど、博物ふぇすてぃばるでは誰も話題にしてなかったな。

※タコブネは殻があるのは雌だけなので未来の古生物学者が見たらメスの殻だけ見つけることになるのだろうか。

タコブネの動画は水族館のを含めていくつかありますが、いずれも捕獲された時点で弱っている…